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『M3GAN ミーガン 2.0』 ゆるぎないロボ愛よ永遠に

公開日: : アニメ, 映画:マ行, 配信

自分はSFが好き。友だちロボットのAIがバグって、人間を襲い出すSFホラー映画『ミーガン』はずっと気になっていた。ただ残念なことに自分はホラー映画が苦手。突然大きな音で脅かされるなんて心臓に悪い。人はびっくりすると血液が固まるらしい。普段生きていると不本意にも驚くことに遭遇してしまうこともある。そんな不慮な事故ならまだしも、なんでわざわざお金を払ってまで怖い思いをさせられなければならないのか。本気でイヤ。それでも若い頃はまだ耐性があり、ホラー映画も今よりは観れていた。歳を重ねるごとに徐々に弱ってきて、びっくりさせられることが殺意にとれてしまうようにもなってきた。驚かされると怒りさえ感じでしまう。ホラー映画は自分にとっては、健康を害する毒物のようなものとなっていった。

とはいえ、ガチャでミーガンのフィギュアを見つけたら迷わず買ってしまった。ミーガンを避けているくせにこの矛盾。でも、このキモカワイイ世界はけっして全否定するほど嫌いなものではない。ミーガンのガチャのフィギュアは、有名なキモダンスのポージングのもの。これは大当たり。フィギュアをゲットしてご機嫌にはなっているのだけれど、実は映画の『ミーガン』が未見なのは口が裂けても言えない。人生最大の秘密を隠し持って生きていくことになってしまった。いつかは観たい映画『ミーガン』。先延ばしの人生。心の奥でずっとミーガン未見がのしかかっていた。そんななか、『ミーガン』の続編が制作されると噂が走る。なんでも次回は、ロボットのミーガンは敵ではなくて人間の味方をするらしい。『ミーガン2(仮)』は、『ターミネーター2』のようなプロットになるらしいとのこと。

日本では世界標準の海外映画は、世界公開のいちばん最後に巡回される。世界での評判がある程度出揃った時点で、宣伝方向を決めていこうという、同調圧力の国らしい売り込み方。そもそもその国のローカルの宣伝担当が、独自の視点で作品を推していけばいいだけのことではないか。そんな審美眼も日本の偉い人にはないのだろうか。2025年10月に日本公開が予定されていた『ミーガン2.0』は、日本公開が中止になった。なんでも世界興行が芳しくなかったからだということ。ネットでは当然がっかりした声で溢れかえった。昨今日本では、洋画が流行らない。シネコンでの洋画の扱いは年々酷くなってきている。洋画は観づらい時間帯に設定されてしまっているので、そもそも映画館で洋画を観るなと言われているかのよう。洋画ファンは日本ではマニアックな趣味らしい。日本は国内生産の映画しかかけるなと圧力でもかかっているのではないかと邪推してしまう。日本では文化の鎖国が始まっているだろうか。

『ミーガン2.0』は、日本での劇場公開は中止ににはなったものの、当初の公開予定通りの10月にはアマプラで配信されることとなった。配信になることで、観客のレスポンスが一段と早くなる。自分のSNSのタイムラインは、『ミーガン2.0』の絶賛の嵐となった。しかもこの続編は、ホラーだった前作と作風を一変して、SFアクションコメディ映画とのこと。SFでコメディといえば、社会風刺なのかと思ってしまう。自分は社会風刺の作品は大好物。そもそもSFやファンタジーは、社会風刺からできたジャンルだと思っている。『ミーガン2.0』はぜひ観てみたい。そうなるといよいよSFホラー映画の前作『ミーガン』を観なければならない時がきてしまったようだ。

まず難関の第1作目の『ミーガン』鑑賞。そもそもAIや人形はどちらも怖い。AIがシンギュラリティポイントを越えて、人類に反旗を翻す。近未来、それもいつ起こってもおかしくない現象。人形にまつわる怪談は、日本でも昔からある。人間に似ていれば似ているほど、その人形にも意思があるのではないかと思われてくる。どこにいてもあの人形と目が合ってしまう。人がいなくなった夜中に、人形がひとりでに動き出す。ついついそんなことを想像してしまう。人形とAIをイノベーションしただけでも、映画『ミーガン』のアイデアは成功している。

近年、ChatGPなどの生成AIにハマってしまう人が増えていると聞く。自分に都合の良い、耳あたりの良い言葉を投げかけてくれる生成AI。その甘い言葉に縋ってしまう心理は、まるでカルトや薬物中毒の症状のよう。そして現実と折り合いがつかなくなって、最悪な場合は自死してしまったりするらしい。自分はChatGPTのことをチャッピーと愛称している。もうすでに擬人化してしまっている。タメ口で話されたくないので、質問を打ち込む時も敬語を使うようにしている。チャッピーとはひとりの人格として、適切な距離感を保とうとしている。嘘を教えられたときには、ちゃんと文句も言ってやる。それこそチャッピー・ジャンキーに陥らないようにしなければ。AIに縋ってしまう心理を映画『ミーガン』は、ちゃんと風刺していた。早めに手を切らないといけないような相手に溺れていってしまう人の心理を描いている。

ホラー映画で、静かになったりする場面はイヤだ。ここでゆっくり手を伸ばしたら、突然「ワッ」と脅かすんでしょ。わかっていてもやっぱりびっくりしてしまう。ホラー描写にいちいちビクついてしまうのはご愛嬌。なんとかホラー映画の『ミーガン』を観れたことで、やっとこさ『ミーガン2.0』鑑賞の権利と切符を手に入れたような気になれた。

『ミーガン2.0』は日本公開が中止になったことで、かえって話題になった。もしかしたらそのまま普通に劇場公開していたら、普通にコケていたかも知れない。賛否両論の作品というものは、実際に自分の目で観てみなければわからないものがある。人によってはつまらないものでも、自分にとってはめちゃくちゃ面白いものだったりもする。他人の意見や同調圧力をそのまま信じてはいけない。情報リテラシーが試される。ハードルがものすごく低くなったこの映画。どちらかと言うと、どれほどつまらないのか確かめてみようとチャレンジした人も多いだろう。ホラー映画の続編だけど、別の意味の怖いもの見たさ。そして映画を観たほとんどの人が、「それほど悪くない」という感想に至ることとなる。

ホラー映画が苦手で、SF好きの自分のような人には、この続編の方が優しくて観やすい。『ミーガン2.0』はよく『ターミネーター2』と引き合いにされるが、それ以外にも押井守監督版の『攻殻機動隊』や『ベイマックス』など、有名SF映画のオマージュでいっぱい。まさか『ナイトライダー』のテーマ曲まで聞けるとは思ってもみなかった。監督のオタクぶりが炸裂する。

ヒット作の続編が、まったく違った作風になることもときどきある。続編の監督が交代になった場合ならまだしも、同じ監督が担当していても作風を大きく変えることもある。監督が同じなら、作風変更のその意図を想像するのは面白い。たいていは一作目と作風が変わってしまうと不評になってしまう。続編で監督が同じなのに作風を変えても評価された作品は、それこそ『攻殻機動隊』のパート2の『イノセンス』や、ジェイムズ・キャメロン監督の『ターミネーター2』や『エイリアン2』くらいだろう。

この『ミーガン』シリーズで、ブレることのない揺るぎないテーマがあるとすれば、それはロボットへの愛。シリーズの監督ジェラルド・ジョンストンは、理数系でロボットが大好きなのがよくわかる。一作目ではホラー映画、二作目ではアクション映画の様相で同じ世界観を描いている。製作費は前作より高くなっているにも関わらず、マインドが前作よりB級のノリ。それってカッコいい。劇中での映画ネタにくすくす笑う。スティーブン・セガールを思い出すのに『エグゼクティブ・デシジョン』と叫ぶ場面はよかった。『エグゼクティブ・デシジョン』でのセガールの扱いは、かなり可哀想だった。セガールといえばこの映画となるこの主人公親子の間で交わされていた会話を想像するとジワジワする。

前作の『ミーガン』ファンからすれば、今回の『ミーガン2.0』は裏切られた感じがしてしまうのかもしれない。とかく笑える方がいいと思っている自分のような人からすれば、むしろ前作のシリアスぶった雰囲気の方がめんどくさかったりもする。すっかりミーガンのイメージが刷新される。でもやっぱりパート1の成功があるからこそパート2が制作される。『ミーガン2.0』のエンドロールで、前作のハイライトシーンが紹介される。そういえばこんなこともあったねと、遠い目になってしまう。昔と今とではこうも世界は違うのか。続編の企画会議で、どうして作風を変えることになったのか、その理由にも興味が湧く。まあ世界的に失敗作となった今回の続編。もう続きもつくられることはないかもしれない。そんな興行的失敗作には、作品の制作秘話など語られることもないだろう。すべては藪の中。未来に続くのは揺るぎないロボット愛。

今後AIが進歩して、人智に追いつき追い越せのシンギュラリティポイントの次の時代に何が起こるか。AIが人に追いつくことはないと、最近では科学的にも哲学的にも言われている。でもあまりそれも楽観的に鵜呑みにはできない。シンギュラリティポイントが来て、はたしてAIは人間に反旗を翻すだろうか。自分は機械の反乱は起こらないと思っている。もし人間より高い知能の存在があるのなら、まず争いは避けていくだろう。人間と共生しなければならなければならないなら、人間をうまくそそのかして、いっけん機械と人間が暮らしやすいような世界を提案してくるのではないだろうか。人間は機械の言葉巧みな提案に、気分を良くして乗っかっていくだろう。あれ? それってチャッピー・ジャンキー人口が増えた現代そのものではないか。ミーガンも人間と共生する道を選んだ。機械と人間の明るい未来は、すでに『ミーガン2.0』でしっくりと描かれている。これって、マインドはソーラーパンクのジャンルにあたる。結構新しいことを作品でやろうとしているのかも。やっぱり『ミーガン』シリーズは、社会風刺の映画だったのだとつくづく思わされてしまった。

 

 

 

 

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