『猿の惑星: 創世記』淘汰されるべきは人間
『猿の惑星:創世記』。
もうじき日本でも本作の続編にあたる
『猿の惑星:新世紀』が公開される。
果たして70年代に作られた『猿の惑星』シリーズの
続編にあたるのかリブート作にあたるのか、
公開当時は作品の位置づけがよくわからなかったが、
続編が作られると言う事は、
リブート作と解釈してよさそう。
久しぶりにメッセージ性の強い
SF娯楽映画で、とても面白かった。
SF作品はこういった社会風刺性がないと物足りない。
若い科学者が父親のアルツハイマーを
治そうとして新薬を猿に実験台にする。
この新薬発明には成功をみるが、
実験台にされた猿は、
人間よりも高い知能を身につけていくという
前シリーズからの説得力のある新解釈。
もうそれだけでSFとして面白い。
知性を身につけていく猿のシーザーの姿は
ダニエルキイスの『アルジャーノンに花束を』の
白痴の青年を彷彿とさせる。
猿のシーザーの知性ある表情の
CG演技にはうならされます。
そしてここで描かれているのは差別問題。
人間は新猿類(?)よりも無知にみえ、
彼らを低レベルに迫害します。
本当に人間が憎らしく見え、
猿たちが反乱を起こす様は爽快感さえある。
人間は他の生き物や地球に対して横暴すぎた。
ここ最近、未曾有の災害が
世界のあちこちで発生しているのは、
もしかしたら地球規模の意思が、
人間を粛正しようとしているのでは
と脅威すら感じてしまう。
人間は私利私欲のために何をしていたのか、
本気で見返らなければいけないのかもしれません。
地球や宇宙規模からすると、
人間はただのバクテリアにすぎず、
もっとも淘汰されるべき存在なのかも知れません。
今だからこそのテーマ性。
制作者のセンスを感じます。
関連記事
-
-
『イニシェリン島の精霊』 人間関係の適切な距離感とは?
『イニシェリン島の精霊』という映画が、自分のSNSで話題になっていた。中年男性の友人同士、突
-
-
『Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022 +(プラス)』 推しは推せるときに推せ!
新宿に『東急歌舞伎町タワー』という新しい商業施設ができた。そこに東急系の
-
-
『パフューム ある人殺しの物語』 狂人の言い訳
パトリック・ジュースキントの小説『香水 ある人殺しの物語』の文庫本が、本屋さんで平積みされて
-
-
『湯殿山麓呪い村』即身仏、ホントになりたいの?
先日テレビを観ていたら、湯殿山の即身仏の特集をしていた。即身仏というのは僧侶が死
-
-
『七人の侍』 最後に勝つのは世論
去る9月6日は黒澤明監督の命日ということで。 映画『七人の侍』を観たのは自分が10代の
-
-
『アドレセンス』 凶悪犯罪・ザ・ライド
Netflixの連続シリーズ『アドレセンス』の公開開始時、にわかにSNSがざわめいた。Net
-
-
『欲望の時代の哲学2020 マルクス・ガブリエル NY思索ドキュメント』流行に乗らない勇気
Eテレで放送していた哲学者マルクス・ガブリエルのドキュメンタリーが面白かった。『欲望の時代の
-
-
『進撃の巨人』 残酷な世界もユーモアで乗り越える
今更ながらアニメ『進撃の巨人』を観始めている。自分はホラー作品が苦手なので、『進撃の巨人』は
-
-
『君たちはどう生きるか』 狂気のエンディングノート
※このブログはネタバレを含みます。 ジャン=リュック・ゴダール、大林宣彦、松本零士、大
-
-
『平家物語(アニメ)』 世間は硬派を求めてる
テレビアニメ『平家物語』の放送が終わった。昨年の秋にFOD独占で先行公開されていたアニメシリ