*

『STAND BY ME ドラえもん』 大人は感動、子どもには不要な哀しみ?

公開日: : 最終更新日:2021/05/21 アニメ, 映画:サ行,

映画『STAND BY ME ドラえもん』を
5歳になる娘と一緒に観に行きました。

ドラえもん初の3DCG作品であり、
原作のチョイスも感動編や恋愛編などの
評判が良かったものばかりなので、
「あざといな~」と思いながらも、
楽しみにしておりました。

原作の『さようならドラえもん』の部分、
ドラえもんが未来へ帰るくだりでは、
親子共々号泣。

ただ自分と娘の涙の意味は
明らかに違っていました。

映画終了後も娘はずっと泣いていて、
終止ベタベタ抱きついていました。
ちょっとしたトラウマになったのでは?

子どもの心は
ポジティブでしかできていません。
いまポジティブ真っ盛りの子どもに、
子ども時代のメタファーである
ドラえもんとの別れは不必要。

子ども時代に、
いつか子ども時代を
卒業することを考える必要は
まったくありません。

この作品は、
かつて『ドラえもん』を観て、
いまだに大人になれない大人に向けて
作られたメッセージ。

原作のドラえもんは、
ダメダメなのび太くんが
ドラえもんやひみつ道具に頼って、
ズルをしようとして
かえってヒドい目に遭う
という展開が殆どです。

時々、大人になったのび太や、
感動的な物語、
恋愛にまつわる物語が
あったりします。
ちょっと路線が違うエピソードです。

大人になると、
この路線と違うエピソードが
読み直したくなるのです。
自分が大人になったから、
大人になったのび太くんが気になる。

運命は変えられる。
君自身が動いたから成長できた。

原作からアレンジされたのは、
のび太くんの成長。

大人になったのび太くんは
相変わらず情けないけど、
どこかしっかりして、
たくましいところがある。

実はしずかちゃんに自分から
プロポーズしていたりもする。

子どもののび太くんが
大人ののび太くんに、
ドラえもんに会わせるよと提案します。
「ドラえもんか。懐かしいな。でもいいや」

子ども時代をすでに
卒業しているのび太くん。

日本のエンターテイメントは
泣けることが良作であると
勘違いしている風潮があります。

悲しい物語は、
悲しい経験をした人には
観たくもないでしょう。

悲劇をお金を払ってまでも
観たがるとはなんと平和な国民性。

こんな時代だからこそ
本当に必要なのは喜劇のはず。

悲劇が好きというのは、
自分の人生と立ち向かっていないのでは?
とまで疑ってしまう。

藤子・F・ 不二雄氏は
『さようならドラえもん』
を発表してすぐに
『かえってきたドラえもん』を
書いています。

妻は4歳の時、字も読めないのに
この『さよならドラえもん』を読んで、
号泣して大騒ぎしたそうです。

そんなですから、
きっとものすごい反響があったのでしょう。
その反響は藤子・F氏を傷つけもし、
勇気づけもしたと思います。

『ドラえもん』の連載再開のハラが決まり、
それ以降、ドラえもんがのび太の元を
去る話は一切なかったと思います。

ドラえもんは永遠に
子どもの頃の心の象徴。

でも、大人の年齢になったら、
きちんとその「子ども心」とは
ケリをつけなければいけませんね。

関連記事

『帝都物語』 混沌とした世にヤツは来る!!

9月1日といえば防災の日。1923年の同日に関東大震災で、東京でもたいへんな被害があったこと

記事を読む

no image

ホントは怖い『墓場鬼太郎』

  2010年のNHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』で 水木しげる氏の世界観も

記事を読む

no image

『うつヌケ』ゴーストの囁きに耳を傾けて

  春まっさかり。日々暖かくなってきて、気持ちがいい。でもこの春先の時季になると、ひ

記事を読む

no image

『花とアリス』男が描く少女マンガの世界

  岩井俊二監督作品『花とアリス』が アニメ化されるというニュースが来ましたね。

記事を読む

『未来のミライ』真の主役は建物の不思議アニメ

日本のアニメは内省的で重い。「このアニメに人生を救われた」と語る若者が多いのは、いかに世の中

記事を読む

『ジョーカー』時代が求めた自己憐憫ガス抜き映画

めちゃめちゃ話題になってる映画『ジョーカー』。ハリウッド映画のアメコミ・ヒーロー・ブームに乗

記事を読む

no image

『父と暮らせば』生きている限り、幸せをめざさなければならない

  今日、2014年8月6日は69回目の原爆の日。 毎年、この頃くらいは戦争と

記事を読む

『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』 25年経っても続く近未来

何でも今年は『攻殻機動隊』の25周年記念だそうです。 この1995年発表の押井守監督作

記事を読む

no image

デート映画に自分の趣味だけではダメよ!!『サンダーバード』

  なんでも『サンダーバード』が50周年記念で、新テレビシリーズが始まったとか。日本

記事を読む

『インサイド・ヘッド2』 感情にとらわれて

ディズニー・ピクサーの『インサイド・ヘッド2』がアメリカの劇場でヒットしているとニュースは、

記事を読む

『アン・シャーリー』 相手の話を聴けるようになると

『赤毛のアン』がアニメ化リブートが始まった。今度は『アン・シャ

『新幹線大爆破(Netflix)』 企業がつくる虚構と現実

公開前から話題になっていたNetflixの『新幹線大爆破』。自

『ラストエンペラー オリジナル全長版」 渡る世間はカネ次第

『ラストエンペラー』の長尺版が配信されていた。この映画は坂本龍

『アドレセンス』 凶悪犯罪・ザ・ライド

Netflixの連続シリーズ『アドレセンス』の公開開始時、にわ

『HAPPYEND』 モヤモヤしながら生きていく

空音央監督の長編フィクション第1作『HAPPYEND』。空音央

→もっと見る

PAGE TOP ↑