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『総員玉砕せよ!』と現代社会

公開日: : 最終更新日:2019/06/12 アニメ, ドラマ,

 

夏になると毎年戦争と平和について考えてしまう。いま世の中ではキナくさいニュースばかり。悲観的にもなりかねない。

『総員玉砕せよ!』は、昨年亡くなられた漫画家・水木しげるさんの第二次大戦中の兵役の実体験に基づく戦記モノ。水木さんといえば『ゲゲゲの鬼太郎』などの妖怪漫画で有名だが、歴史モノや戦争モノも多い。とくにこの『総員玉砕せよ!』は、彼の代表作でもある。

90パーセントは事実だと、著者のあとがきにもある。デフォルメこそされているが、登場人物たちは、実在した著者の戦友たちに似せて描いているのだろう。それもあってか、リアリティを感じる。

以前、水木しげるさんがこの作品に着手されている様子をテレビドラマ化していた。水木さん役を香川照之さんが演じていた。戦前はハキハキしゃべっている芝居だったが、戦後生還してからは話し方が変わっている。その演技プランが恐ろしかった。人はあまりに衝撃的な体験をしてしまうと、別人のようになってしまう。

兵士たちは日本の地から離れて、望みもしない戦争をさせられている。上官の理不尽なイジメや暴力は日常茶飯事。なんのためかわからない無意味な重労働。そしてひとたび玉砕命令がでれば、勝っても負けても生きて帰ってはいけない。もし生きて戻ってきたら、仲間の兵に処刑される。どちらにせよ死ぬしかない。

敵との戦いで死ぬことばかりでなく、あてもなく食料を探しに行けという命令で死んだりする。人の命が軽く扱われている。上官の目がイっちゃってる。分別がつかなくなってるのがわかる。こんな上官のもとで動いたら、隊は全滅するに決まってる。日々ムダな労力ばかり使わされ、兵たちは心身ともに疲弊しきっている。その過酷な日常の中での、兵たちのボヤキや愚痴、不平不満は、日々の労働者である現代の我々と重なるところがある。

戦争についての本を読んだつもりだったが、なんだか現代の日本の状況とオーバーラップしてくる。ある意味、いまの社会も戦場みたいなもの。

今の日本は戦争状態ではない。平和な国だ。目の前で同僚の五体が吹っ飛んで死ぬなんてことはない。でも、どこの企業へ行っても鬱病の人が必ずと言っていいほどいて、報道では自殺者もあとをたたないと聞く。

就職難からやっとこさ仕事にありつけたとしても、そこでは過酷な労働が待っているだけだったりする。朝早くから通勤ラッシュに揺られ、帰宅は夜中や徹夜。場合によっては休日もなし。まさに働くのも命懸け。

なんでそこまで忙しいかといえば、上司の顔色伺いや、無意味なこだわりなど、実質的には会社の利益にならないことで仕事が増えているなんてザラ。会社にどれだけ残っているか、休みをどれだけ犠牲にできるかで、仕事に対する姿勢を評価している会社もまだまだある。これでは永遠に仕事が終わらない。

ブラック企業という言葉がうまれ、労働者を大事にしょうと企業努力をしている会社もたくさんある。そんな志の高い会社が損をみない社会に1日も早くなって欲しい。

そしてなにより、この作品にでてくる気の毒な兵たちとの違いは、我々にはまだ環境を選ぶ権利があるということ。ブラック企業に利益をもたらす労力を与えない、のさばらせない信念。ブラック企業で働くブラック社員にならないということ。

国でもブラック企業の基準はあるが、やはり自分の仕事は自分で責任を持つことが大事。自分の身は自分で守るしかない。待っているだけでは、命にかかわることもある。自分で考え、判断し、ときにはそこを去る勇気も必要だ。社会はそんなにすぐに変わらない。

さて、ブラック企業を取り締まるビジネスなんてつくれないだろうか? ある程度の権限をもらって、ブラック企業を調査して、摘発する証拠をつかむ。労働監督署の手助け。ここまでブラック企業が社会に万延してしまうと、一部の企業努力だけでは、社会全体の改善は難しいだろう。罰則があるならどんどん取り締まれないのかな? ブラック企業Gメン、悪くないと思うんだけど。

 

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