*

『ファインディング・ドリー』マイノリティへの応援歌

公開日: : 最終更新日:2016/12/21 アニメ, 映画:ハ行, 音楽

ファインディングドリー

映画はひととき、現実から逃避させてくれる夢みたいなもの。いつからか映画というエンターテイメントも、限られた人しか観なくなりはじめている。朝から夜中まで働き、休日も返上することを良しとするビジネスマンからしてみれば、映画なんてくだらないものだろう。

それもあってかなくてか、映画ファン、とくにアニメファンなんかは、いろんな意味でマイノリティな客層がメインになってきた感じがする。最近のディズニー作品は、あきらかにマイノリティのお客さんに向けて、映画をつくっているような気がする。

この『ファインディング・ドリー』の前作『ファインディング・ニモ』では、生まれつき片方のヒレが小さいというハンディキャップをもつ息子を、過保護にしがちになるという親子の関係がテーマだった。

時代が変わって、前作から13年の歳月が過ぎての新作。マイノリティの気持ちをさらに深くみつめる続編が誕生した。

ドリーは物忘れが激しい健忘症。それは障害でもあり、個性でもある。障害を持つ子どもの気持ち、その親の気持ち、そして障害を持つ子が大人になったら……。ファンタジックな海の世界で、現実的なシビアな問題を描いている。登場する魚たちも、みななにかしらの障害を抱えている。難しいテーマにもかかわらず、映画は最初っから最後まで、ハラハラドキドキの連続! 小さな子どもから、大の大人まできゃあきゃあ言いながら、ドリーたちとともに冒険の旅へ‼︎

ドリーの幼少期のベビードリーがかわいすぎ! 自分は子どもたちと映画を観たので、吹き替え版だった。やっとこさ喋れるような子役の声優さんの演技が笑いを誘う。こんな愛らしい子どもとはぐれてしまった親の気持ちを想像するだけで、琴線を刺激する。

ベビードリーが迷子になっても、大人たちが助けてくれない。ウチの娘はショックを受けていた。誰もが自分が生きていくだけで精一杯の都会の世知辛さのよう。映画鑑賞後、息子は母親から離れるまいとガッシリくっついて歩いていた。

忘れん坊のドリーが自分が迷子なのだと、うまく説明できない。ひとりぼっちでさまよいながら、大人になってしまった。マーリンと出会うまで、ずっとひとりだったのが悲しくなる。ドリーの人の良さ、というか「魚のよさ」は、小さいときから冷たくあしらわられ続けてきたからこその処世術。

健忘症だって忘れたくないことはある! 障害をもつ者の信念のひとつのカタチ。観客はドリーとの旅にワクワクしながら、いつの間にか彼女の心の傷にも共感してしまう。

旅の途中、新たに相棒となるタコのハンクがカッコイイ!ストーリーを進めているのは、じつはこのタコだったりする。大活躍! 思わずぬいぐるみを買ってしまった‼︎

エンディングでは『unforgettable』がかかる。最近のディズニー・ピクサー恒例の吹き替え版は各国ローカライズバージョン。八代亜紀さんには罪はないが、やはりオリジナルのシーア版のほうが良いに決まってる。

シーアという、いまノリにノッてるアーティストが、ドリーの心情を歌うからこそ意味がある。シーアのソロの曲からもわかるように、彼女の人生のドン底から這い上がってくる、叫びのカタルシスは、心に響くものがある。昭和歌謡の懐古主義もいいけれど、やっぱり「いま」を感じさせるパワーにはかなわない。

すっかりニュアンスが変わってしまった日本版エンディング。こりゃオリジナル版も観直さなくてはいけないな。

関連記事

『かぐや姫の物語』この不気味さはなぜ?

なんとも不気味な気分で劇場を後にした映画。 日本人なら、昔話で誰もが知っている 『

記事を読む

『東京ゴッドファーザーズ』地味な題材のウェルメイドアニメ

クリスマスも近いので、 ちなんだ映画をセレクト。 なんでもこの『東京ゴッドファーザー

記事を読む

『バンカー・パレス・ホテル』フランス人と日本人の文化的嗜好は似てる

ダメよ~、ダメダメ。 日本エレキテル連合という 女性二人の芸人さんがいます。 白塗

記事を読む

『君の名は。』株式会社個人作家

日本映画の興行収入の記録を塗り替えた大ヒット作『君の名は。』をやっと観た。実は自分はずっとこ

記事を読む

『FOOL COOL ROCK!』サムライ魂なんて吹っ飛ばせ!!

『FOOL COOL ROCK! ONE OK ROCK DOCUMENTARY FILM』

記事を読む

『総員玉砕せよ!』と現代社会

夏になると毎年戦争と平和について考えてしまう。いま世の中ではキナくさいニュースばかり。悲観的

記事を読む

『パンダコパンダ』自由と孤独を越えて

from:http://www.cinematoday.jp/movie/T0005919[/ca

記事を読む

『オデッセイ』ラフ & タフ。己が動けば世界も動く⁉︎

YouTube/20th Century Fox[/caption] 2016年も押し詰まっ

記事を読む

百年の恋も冷めた。映画版『超時空要塞マクロス』

1980年代、自分が10代はじめの頃流行った 『超時空要塞マクロス』が ハリウッドで実写

記事を読む

松田優作と内田裕也にもってかれた『ブラックレイン』

今日は松田優作さんの命日。 高校生の頃、映画『ブラックレイン』を観た。 大好きな『ブ

記事を読む

『風と共に去りぬ』時代を凌駕した人生観

小学生の娘が突然、映画『風と共に去りぬ』が観たいと言い出した。

『光とともに…』誰もが生きやすい世の中になるために

©戸部けいこ・秋田書店[/caption] 小学生の娘が、学校

『ゲゲゲの女房』本当に怖いマンガとは?

水木しげるさんの奥さんである武良布枝さんの自伝エッセイ『ゲゲゲ

『チャーリーとチョコレート工場』歪んだ愛情とその傷

映画が公開されてから時間が経って、その時の宣伝や熱狂が冷めたあ

『ドラゴンボール』元気玉の行方

http://www.maniado.jp/community/ne

→もっと見る

PAGE TOP ↑