*

『インターステラー』 いつか神仏の存在も科学で証明されるだろう

公開日: : 最終更新日:2024/12/07 映画:ア行

SF映画『インターステラー』はヒットはしないだろう。
けれども今後数十年語り継がれる作品にはなるでしょう。

今時珍しく、本格的なSFをやろうとしている。
近頃のSFファンタジー系作品は
とかくCGを駆使し、派手なビジュアルで
薄っぺらな内容でひっぱる作品ばかりである。

その中でこれだけ真摯にSFを描くというのも
かなり時代に逆行してして好感が持てる。

派手な演出や、音楽で大仰に盛り上げるような
無粋な演出は一切排除している。
硬派な作品。

ポップコーン片手にデートやファミリーで
来ていた観客はみな面食らっていた。

実は自分は本作のクリストファー・ノーラン監督の
今までの作品があまり得意ではなかった。
とても評判の良い監督さんですが、
どうも自分とは相性が悪い。
『ダークナイト』シリーズや『インセプション』、
『メメント』……、どれも人気作だが、
自分にとってはどれも睡魔との対決させられる
作品ばかりだった。

彼の今までの作品は、ワンシーンが短く、
ポンポンストーリーが進んでしまう感じ。
人間を描くというより、
ストーリーやビジュアルのセンセーショナルを狙ってる。

題材が興味深いにも関わらず、
人間を描こうとしていないので、
結局自分は観ていて飽きてしまうのです。

本作はそういった流れを壊している。
自分にとっては初めて共感できる作品。

極力CGを使わないようにしたというのも
とても良い効果を生み出している。

ワームホールやブラックホールなど、
SF用語が普通に飛び交い、
軽い説明でどんどん物語は進んで行く。

地球が人類の住めないような環境になっていき、
新天地を求める旅をするという、
言ってみれば『宇宙戦艦ヤマト』のリアル版といた趣。

難解になりがちなSF作品だが、
実は父と娘の親子の関係を横軸に走らせているので、
とても感情移入しやすくさせている。

主人公には息子と娘がいるのだが、
どうも娘との相性が深いらしい。

自分も娘と息子がいるのだが、
どうも異性の親子というのは、特別な関係なのだろうか。
自分と娘、妻と息子という構図は、なんとなくしっくりいく。

娘が幽霊の存在を口にする場面がある。
科学的な作品ににつかわない、オカルト的な部分。
しかしこの伏線すら、ひとつの事象として
本作は科学的仮説で証明していく。

第六感や今は科学で証明されていない
オカルトとされている分野も、
100年もすればなんてことのないことで、
科学で証明されているかもしれない。

目に見えないものが存在しないと
いことがないということ。

人類の存続なるかと、大いなるテーマではあるが、
実は時空を超えた家族のシンパシーの作品である。

自分を守っている力は、実は自身の中にあるという
個があってこその宇宙という存在。

宇宙規模でみたら、人間の一生はあまりに短いのだが、
ひとりの人間の意思というものは永遠に続くのだと
感じさせられる映画。

観ている最中、この大きく広げた風呂敷を
どうやってまとめるのか、
とてもエキサイティングでした。

そして観賞後は、なぜか明るい気分にさせられた。

この映画をみていると、いつか神仏の存在の謎も
解き明かされるときがくると感じます。

そのとき人間は、過去のように見えないものに対し
畏敬の念を思い出すことができるのだろうか?

現在のまま、閉塞感ばかりがつのる世界から
解き放たれることはあるのだろうか?

本格的な哲学的SF作品なので、
ついつい自分の人生について見つめ直したくなる。

いちSFファンとしては、
かなり見応えのある映画でした。

関連記事

no image

『アバター』観客に甘い作品は、のびしろをくれない

ジェイムズ・キャメロン監督の世界的大ヒット作『アバター』。あんなにヒットしたのに、もう誰もそのタイト

記事を読む

no image

『硫黄島からの手紙』日本人もアメリカ人も、昔の人も今の人もみな同じ人間

  クリント・イーストウッド監督による 第二次世界大戦の日本の激戦地 硫黄島を舞

記事を読む

no image

『生きる』立派な人は経済の場では探せない

  黒澤明監督の代表作『生きる』。黒澤作品といえば、時代劇アクションとなりがちだが、

記事を読む

『1917 命をかけた伝令』 戦争映画は平和だからこそ観れる

コロナ禍の影響で『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開が当初の予定から約一年後の4月に一

記事を読む

『アンブロークン 不屈の男』 昔の日本のアニメをみるような戦争映画

ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが監督する戦争映画『アンブロークン』。日本公開前に、

記事を読む

no image

『王と鳥』パクリじゃなくてインスパイア

  先日テレビで放送された 『ルパン三世・カリオストロの城』(以下『カリ城』)、

記事を読む

『aftersun アフターサン』 世界の見え方、己の在り方

この夏、イギリス映画『アフターサン』がメディアで話題となっていた。リピーター鑑賞客が多いとの

記事を読む

『エレファント・マン』 感動ポルノ、そして体調悪化

『エレファント・マン』は、自分がデヴィッド・リンチの名前を知るきっかけになった作品。小学生だ

記事を読む

『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』 長い話は聞いちゃダメ‼︎

2024年2月11日、Amazonプライム・ビデオで『うる星やつら2 ビューティフル・ドリー

記事を読む

『海よりもまだ深く』足元からすり抜けていく大事なもの

ずっと気になっていた是枝裕和監督の『海よりもまだ深く』。覚えずらいタイトルはテレサ・テンの歌

記事を読む

『たかが世界の終わり』 さらに新しい恐るべき子ども

グザヴィエ・ドラン監督の名前は、よくクリエーターの中で名前が出

『動くな、死ね、甦れ!』 過去の自分と旅をする

ずっと知り合いから勧められていたロシア映画『動くな、死ね、甦れ

『チェンソーマン レゼ編』 いつしかマトモに惹かされて

〈本ブログはネタバレを含みます〉 アニメ版の『チ

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』 普通に生きるという特殊能力

リチャード・カーティス監督の『アバウト・タイム』は、ときどき話

『ヒックとドラゴン(2025年)』 自分の居場所をつくる方法

アメリカのアニメスタジオ・ドリームワークス制作の『ヒックとドラ

→もっと見る

PAGE TOP ↑