*

モラトリアム中年の悲哀喜劇『俺はまだ本気出してないだけ』

公開日: : 最終更新日:2019/06/15 映画:ア行,

 

『俺はまだ本気出してないだけ』とは
何とも悲しいタイトルの映画。

42歳の中年男が突如自分探しで、
会社を辞め漫画家になる事を決意する。

しかしながらなかなか芽がでそうにない。
日々ダラダラとゲームをしたり、
ファーストフードでバイトして
年下たちとふざけあって、
年下の上司に叱られたりしてる。
何とも情けない。

いちばん楽しかった場面は、
出版社に作品を持ち込んだとき、
担当者がボツを告げる時のやり取り。

担当者は言葉を選んで、相手を怒らせず、
むしろいい気分にさせて追い返す。
これはコミュニケーションの勉強しなりますね~。

安定した収入だったサラリーマン生活とは?
いま人生と仕事との関係について
悩んでいない人はいないと思います。

主人公は節々で自問自答しています。
「一生サラリーマンの方が良かったのだろうか」と。

この主人公はダメダメなんだけど、
もしかしたらサラリーマン時代は
メチャクチャ仕事ができたかも知れない。

どこかで電池が切れて、
無気力になってしまったのかもと思うと、
人生を豊かにしようと思って
がむしゃらに働いていたにも関わらず、
本末転倒な結果へと向かってしまった事になる。
悲しい。

映画ではこれといった答えは出していません。
これから現実の時代が
この答えを出して行く事でしょう。

この作品はドラマ『アオイホノオ』や
『勇者ヨシヒコ』を手がけた福田雄一監督。
ニートの心を描くのがうまい監督さんですね。

「自分の事ばっかり考えてるからこうなるんだよ!」
そう自問する言葉は辛い。

自分中心で言動していると、
世界はどんどん閉じて行くものなのです。

関連記事

no image

『父と暮らせば』生きている限り、幸せをめざさなければならない

  今日、2014年8月6日は69回目の原爆の日。 毎年、この頃くらいは戦争と

記事を読む

『チ。 ー地球の運動についてー』 夢に殉ずる夢をみる

マンガの『チ。』の存在を知ったのは、電車の吊り広告だった。『チ。』というへんなタイトルがキャ

記事を読む

『関心領域』 怪物たちの宴、見ない聞かない絶対言わない

昨年のアカデミー賞の外国語映画部門で、国際長編映画優秀賞を獲った映画『関心領域』。日本が舞台

記事を読む

『ヒックとドラゴン』真の勇気とは?

ウチの2歳の息子も『ひっくとどらぽん』と 怖がりながらも大好きな 米ドリームワークス映画

記事を読む

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』 戦場のセンチメンタル

アメリカの独立系映画スタジオ・A24の作品で、同社ではかつてないほどの制作費がかかっていると

記事を読む

no image

『バウンス ko GALS』JKビジネスの今昔

  JKビジネスについて、最近多くテレビなどメディアで とりあつかわれているような

記事を読む

『メダリスト』 障害と才能と

映像配信のサブスクで何度も勧めてくる萌えアニメの作品がある。自分は萌えアニメが苦手なので、絶

記事を読む

『愛がなんだ』 さらば自己肯定感

2019年の日本映画『愛がなんだ』が、若い女性を中心にヒットしていたという噂は、よく耳にして

記事を読む

『三体(Netflix)』 神様はいるの?

Netflix版の『三体』をやっと観た。このドラマが放送開始されたころ、かなり話題になっていたし

記事を読む

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』 お祭り映画の行方

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』やっと観た! 連綿と続くMCU(マーベル・シ

記事を読む

『アドレセンス』 凶悪犯罪・ザ・ライド

Netflixの連続シリーズ『アドレセンス』の公開開始時、にわ

『HAPPYEND』 モヤモヤしながら生きていく

空音央監督の長編フィクション第1作『HAPPYEND』。空音央

『メダリスト』 障害と才能と

映像配信のサブスクで何度も勧めてくる萌えアニメの作品がある。自

『マルホランド・ドライブ』 整理整頓された悪夢

映画監督のデヴィッド・リンチが亡くなった。自分が小学生の頃、こ

『侍タイムスリッパー』 日本映画の未来はいずこへ

昨年2024年の夏、自分のSNSは映画『侍タイムスリッパー』の

→もっと見る

PAGE TOP ↑