モラトリアム中年の悲哀喜劇『俺はまだ本気出してないだけ』
『俺はまだ本気出してないだけ』とは
何とも悲しいタイトルの映画。
42歳の中年男が突如自分探しで、
会社を辞め漫画家になる事を決意する。
しかしながらなかなか芽がでそうにない。
日々ダラダラとゲームをしたり、
ファーストフードでバイトして
年下たちとふざけあって、
年下の上司に叱られたりしてる。
何とも情けない。
いちばん楽しかった場面は、
出版社に作品を持ち込んだとき、
担当者がボツを告げる時のやり取り。
担当者は言葉を選んで、相手を怒らせず、
むしろいい気分にさせて追い返す。
これはコミュニケーションの勉強しなりますね~。
安定した収入だったサラリーマン生活とは?
いま人生と仕事との関係について
悩んでいない人はいないと思います。
主人公は節々で自問自答しています。
「一生サラリーマンの方が良かったのだろうか」と。
この主人公はダメダメなんだけど、
もしかしたらサラリーマン時代は
メチャクチャ仕事ができたかも知れない。
どこかで電池が切れて、
無気力になってしまったのかもと思うと、
人生を豊かにしようと思って
がむしゃらに働いていたにも関わらず、
本末転倒な結果へと向かってしまった事になる。
悲しい。
映画ではこれといった答えは出していません。
これから現実の時代が
この答えを出して行く事でしょう。
この作品はドラマ『アオイホノオ』や
『勇者ヨシヒコ』を手がけた福田雄一監督。
ニートの心を描くのがうまい監督さんですね。
「自分の事ばっかり考えてるからこうなるんだよ!」
そう自問する言葉は辛い。
自分中心で言動していると、
世界はどんどん閉じて行くものなのです。
関連記事
-
『光とともに…』誰もが生きやすい世の中になるために
小学生の娘が、学校図書室から借りてきたマンガ『光とともに…』。サブタイトルに『〜自閉症児を抱えて〜』
-
『誰がこれからのアニメをつくるのか?』さらなる大志を抱けたら
「日本が世界に誇るアニメ」などという手前味噌な恥ずかしいフレーズも、すっかり世の
-
高田純次さんに学ぶ処世術『適当教典』
日本人は「きまじめ」だけど「ふまじめ」。 決められたことや、過酷な仕事でも
-
『コクリコ坂から』 横浜はファンタジーの入口
横浜、とても魅力的な場所。都心からも交通が便利で、横浜駅はともかく桜木町へでてしまえば、開放
-
『マイマイ新子と千年の魔法』 真のインテリジェンスとは?
近年のお気に入り映画に『この世界の片隅に』はどうしも外せない。自分は最近の日本の作品はかなり
-
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』虐待がつくりだす歪んだ社会
ウチの子どもたちも大好きな『ハリー・ポッター』シリーズ。こわいこわいと言いながらも、「エクスペクト・
-
『aftersun アフターサン』 世界の見え方、己の在り方
この夏、イギリス映画『アフターサン』がメディアで話題となっていた。リピーター鑑賞客が多いとの
-
『LAMB ラム』 愛情ってなんだ?
なんとも不穏な映画。アイスランドの映画の日本配給も珍しい。とにかくポスタービジュアルが奇妙。
-
『キングコング 髑髏島の巨神』 映画体験と実体験と
なんどもリブートされている『キングコング』。前回は『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジ
-
『ウォレスとグルミット』欽ちゃんはいずこ?
この『ウォレスとグルミット』は、現在大ヒット中の映画『ひつじのショーン』のアード
- PREV
- 『AKIRA』 ジャパニメーション黎明期
- NEXT
- 低予算か大作か?よくわからない映画『クロニクル』