*

『誰がこれからのアニメをつくるのか?』さらなる大志を抱けたら

公開日: : 最終更新日:2019/06/15 アニメ, 映画,

 

「日本が世界に誇るアニメ」などという手前味噌な恥ずかしいフレーズも、すっかり世の中に浸透してしまった。日本のアニメーションの制作現場は、それ以下はないほどの劣悪な環境だということも、やっと一般の人にも知れわたるようになった。お寒い日本こと、クールジャパンは、あいかわらずなんだかよくわからない。なんとなく日本のアニメは衰退の一途を辿るオワコンなのではという印象は正直否めない。

エンターテイメント・ビジネスでの世界的での収益一位は、間違いなくアメリカ。でも第二位は日本なのも事実。日本のアニメは世界中の誰かに確実に観られてる。儲かっているはずなのに儲からない。なんとも摩訶不思議。日本のアニメ界隈は、魑魅魍魎な妖気に満ちている。

自分は、これから日本のアニメは淘汰されていくのではないかと感じている。でも日本のアニメの遺伝子はけっして滅ぶことはないだろう。日本のアニメに影響された海外の作家たちが、日本のアニメの志を受け継いだ作品をどんどん発表していくのではないかと予想している。本家の実態は無くなっても、魂だけは生き続ける。それはそれでいいのではないだろうか。

新書『誰がこれからのアニメをつくるのか?』の著者・数土直士氏は、そんな自分の考えとはうらはらに、日本のアニメの将来を前向きにとらえている。膨大な現在進行形のアニメ事情の情報と、説得力のある考察で未来を明るくみている。ともあれポジティブな意見は希望がうまれ、元気がでてくる。人間は否定よりも肯定の生きものなのだと痛感する。

日本のエンタメ・ビジネスは世界二位とはいえ、一位のアメリカとの差は大きい。言ってしまえば、アメリカと日本以外はエンタメにほとんど力を入れていないのかも。ビジネスとしての競合がいないことになる。

でも日本がなかなかドカンと突出していかないところは、そもそもはじめから国内完結の観客しか意識していないところにあるから。まず国内でヒットしたら、海外の誰かが見つけてくれて、引き抜いてくれるのでは?と、仄かな期待だけある。コツコツ仕事をしていれば、誰かが分かってくれるだろうというものなら、なんとも消極的。

日本のアニメはカウンターカルチャーに属する。万人をターゲットにするインカルチャーと異なり、マニアックな客層を狙ったニッチな産業だ。アニメだけど、子どもには手放しで観せられない矛盾を孕んでいる。でもその毒が、いちばんの魅力だったりもする。

万人ウケするジャンルではないからこそ、ファンは少数派だ。作品そのものだけでは元値を回収できない。だからこそグッズやイベントなどの派生ビジネスで、何度も同じ客からカネを集めなければならなくなる。そうなると国内完結のビジョンでは限界がある。経済的、環境的にのびしろがない。ならば世界中に散らばっている、同様の趣味嗜好を持つ少数派の観客たちをターゲットにしていかなければならない。少数派も世界中から集まれば、かなりバカにならない大多数になる。いるところにはいるといった感じ。

そんなわけか、最近では日本のアニメの資本も中国だったり、IT企業だったりする。海外資本でつくられる日本アニメ。ビジネスとしてそれなりに魅力があるから、日本アニメの制作に海外もカネをだしてくれてるのだろうが、どうもピンとこない。

日本のアニメは観客を選ぶサブカルチャーだ。万人ウケはしないし、芸術作品でもない。独自の道を突き進んでいる。でもスタジオジブリのように、エンターテイメント性と芸術性を兼ね備えた作品もあるから、日本のアニメジャンルがますますややこしくなる。昨年の新開誠監督作品『君の名は。』の国民的な大ヒットも想定外の特殊変異事象だろう。それが良いのか悪いのかは分からない。ただ日本のアニメは大化けする可能性はあるということ。

「ただね……」と、自分はいつも思ってしまう。

歳をとってきたせいか、あまりトンがった作品が得意ではなくなってきた。アニメ作品は好きだが、ディズニーやらイルミネーションやら、ハリウッドの、それこそインカルチャーの王道モノにしか魅力を感じなくなってきた。巨大なバジェットでマーケティング調査され尽くされた、豪華な作品の方を選んでしまう。やっぱりエンターテイメントはわかりやすい方が個人的には好みかな?

日本のアニメは道徳的、倫理的にズレた題材のものが多い。自分もバイオレンス映画とか大好きだが、それらはみな道理をわきまえた風刺として描かれてきたような気がする。ただただ反社会的な描写をしているのではなく、その表現をあえて選んでこそ伝えたいものがある。だからこそ面白いのだ。余裕のウィット。底辺に自ら陥ってしまうと、自力で這い上がれる体力的精神的自信がない。

それよりなにより、昨今は商業作品が量産的につくられすぎている。100本の「亜流作品」を観続けるより、1本の「気骨ある作品」を観た方が有意義だ。下手な鉄砲は数撃っても当たらない。要らぬ情報を浴びすぎると、己が疲弊して感性を鈍らせてしまう。

でも最近の若い人たちは、アニメの楽しみ方がカジュアルになったように感じる。40代以上のアニメファンというと、マニアックで閉鎖的な印象だが、若い人たちは広く浅くアニメを楽しんでいる。どっぷりオタク的にハマらない。アニメは特殊なジャンルではなくなっている。作品とカジュアルに接することは健康的だ。見習うべき距離感。反面、企業にとっては軽いファンが多くなってしまうと、派生ビジネスは難しくなる。

日本のアニメの将来に賭けるのは、かなりのチャレンジ精神が必要だ。このジャンルが大好きでないと、乗りこなせずに失敗してしまうだろう。かつての社会現象にもなる大ヒット作品の数々は、つくり手のこれ以上にないほどの作品愛があってこそ。その「作品をこよなく愛する思い」が、新たな奇跡を生みだすかもしれない。

でもやっぱり自分なら王道を選ぶかな? アンダーグラウンドの魅力の追求は、もっとリラックスした社会ができてからゆっくりしたい。現実逃避ではなく、世知辛い現実と遊ぶためにも。ようは単純に「気骨のある作品」に出会いたいだけなのだが。

関連記事

no image

『ひつじのショーン』おっと、子供騙しじゃないゾ!!

  ひつじ年を迎え『ひつじのショーン』を 無視する訳にはいかない。 今年はも

記事を読む

no image

『ドラえもん のび太の宇宙英雄記』映画監督がロボットになる日

やっとこさ子ども達と今年の映画『ドラえもん』を観た。毎年春になると、映画の『ドラえもん』が公開される

記事を読む

no image

『ルパン三世(PART1)』実験精神あればこそ

  MXテレビで、いちばん最初の『ルパン三世』の放送が始まった。レストアされて、もの

記事を読む

no image

『天使のたまご』アート映画をアニメでやった押井守監督の意欲作

  最新作の実写版『パトレイバー』も話題の世界的評価の高い押井守監督の異色作『天使の

記事を読む

no image

『東京ディズニーランド』お客様第一主義の行方

  自分はディズニーランドは大好きです。 子どもたちも喜ぶし、 自分も子どもみた

記事を読む

『レディ・プレイヤー1』やり残しの多い賢者

御歳71歳になるスティーブン・スピルバーグ監督の最新作『レディ・プレイヤー1』は、日本公開時

記事を読む

no image

逆境も笑い飛ばせ! 日本人のユーモアセンスは!?『団地ともお』

  『団地ともお』は小学生。 母親と中学生になる姉と 三人で団地暮らし。 父親

記事を読む

『アナと雪の女王2』百聞は一見にしかずの旅

コロナ禍で映画館は閉鎖され、映画ファンはストレスを抱えていることだろう。 自分はどうか

記事を読む

no image

『美女と野獣』古きオリジナルへのリスペクトと、新たなLGBT共生社会へのエール

ディズニーアニメ版『美女と野獣』が公開されたのは1991年。今や泣く子も黙る印象のディズニーなので信

記事を読む

no image

イヤなヤツなのに魅力的『苦役列車』

  西村堅太氏の芥川賞受賞作『苦役列車』の映画化。 原作は私小説。 日本の人

記事を読む

『1917 命をかけた伝令』戦争映画は平和だからこそ観れる

コロナ禍の影響で『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開が当

『インセプション』自分が頭が良くなった錯覚に堕ちいる映画

クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』。公開当時、映

『ホドロフスキーのDUNE』伝説の穴

アレハンドロ・ホドロフスキー監督がSF小説の『DUNE 砂の惑

『TENET テネット』テクノのライブみたいな映画。所謂メタドラえもん!

ストーリーはさっぱり理解できないんだけど、カッコいいからいい!

『鬼滅の刃 無限列車編』映画が日本を変えた。世界はどうみてる?

『鬼滅の刃』の存在を初めて知ったのは仕事先。同年代のお子さんが

→もっと見る

PAGE TOP ↑