*

なぜ日本劇場未公開?『ヒックとドラゴン2』

公開日: : 最終更新日:2019/06/14 アニメ, 映画:ハ行

 

とうとう日本では劇場公開はせず
ビデオのみの発売となった
米ドリームワークスの『ヒックとドラゴン2』。

7月の発売まで待ちきれず、
輸入版Blu-rayを購入。
ドイツ版とフランス版は
日本版キャストによる吹き替え版も
入っているので、子どもたちと楽しく観れた。

ドリームワークスの作品は、
なかなか日本ではヒットせず、
権利の問題もあって、
最近作は日本では
劇場公開される事がなくなった。
萌えアニメやゆるキャラが全盛の日本では、
毛色が合わない作風なのかもしれない。
ただ子どもたちは同社の『マダガスカル』、
大好きだけどね。
(すっきすっき~!)

海外で観た人たちが口をそろえて
「良かった」と言っていた本作。
期待しただけあった!!

冒頭、飛行マスクを外したヒックの
凛々しい表情の成長ぶりにハッとする。
前作のナヨっとした雰囲気はなく、
自信にあふれた男らしい青年になっている。

ガールフレンドのアスティとも
うまくいっており、その様子をセリフではなく、
お芝居でふたりの親密感が伝わる。
なかなか日本のアニメではない演出。

でも日本のアニメ、特に宮崎駿監督の作品の
遺伝子はいろんなところで引き継いでいる。
美術のデザインなんかもそうだが、
ヒックの母親なんかは、
まさに宮崎アニメの戦う少女が
そのまま中年になったよう。

ヒックは族長としての資質を持っている。
それは誰もが認めているのだが、
彼自身は自分はふさわしくないと思っている。

バイキングの世界は戦争が耐えない。
武力や腕力がモノを言う世界で、
ヒックは交渉と対話を重んじている。
彼のマッチョな父の姿とは異なる道を進んでいる。

現実の世界でも、
武力での争いが主となる昨今。
まず話し合いからというのは理想の姿。
本編でも、理解を示す者もいれば、
争いの姿勢を変えない者もいる。

ヒックは今までのバイキングにはない姿の首魁。
本当のリーダーは、己の無力さも自覚している。
リーダーの資質がある者は
覚悟を決めなければいけない。

これは継承の物語。

このたくましい物語が、
日本ではヒットしないと判断されてしまう
今の国内のエンタメ業界。
日本人が本当に弱っているのだな、と感じる。

関連記事

『銀河鉄道の夜』デザインセンスは笑いのセンス

自分の子どもたちには、ある程度児童文学の常識的な知識は持っていて欲しい。マンガばかり読んでい

記事を読む

『銀河鉄道999』 永遠の命と拝金主義

『銀河鉄道999』は自分が小学生低学年の頃、 社会現象になるくらいの人気があった。

記事を読む

『RAW 少女のめざめ』それは有害か無害か? 抑圧の行方

映画鑑賞中に失神者がでたと、煽るキャッチコピーのホラー映画『RAW』。なんだか怖いけど興味を

記事を読む

『耳をすませば』 リアリティのあるリア充アニメ

ジブリアニメ『耳をすませば』は ネット民たちの間では「リア充映画」と 言われているらしい

記事を読む

『日の名残り』 自分で考えない生き方

『日の名残り』の著者カズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞した。最近、この映画版の話をしてい

記事を読む

『ゴールデンカムイ』 集え、奇人たちの宴ッ‼︎

『ゴールデンカムイ』の記事を書く前に大きな問題があった。作中でアイヌ文化を紹介している『ゴー

記事を読む

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』 特殊能力と脳障害

いま中年に差し掛かる年代の男性なら、小学生時代ほとんどが触れていた『機動戦士ガンダム』。いま

記事を読む

『さらば、我が愛 覇王別姫』 眩すぎる地獄

2025年の4月、SNSを通して中国の俳優レスリー・チャンが亡くなっていたことを初めて知った

記事を読む

『犬ヶ島』オシャレという煙に巻かれて

ウェス・アンダーソン監督の作品は、必ず興味を惹くのだけれど、鑑賞後は必ず疲労と倦怠感がのしか

記事を読む

no image

『バードマン』あるいはコミック・ヒーローの反乱

  アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の 新作がコメディと聞いて、ま

記事を読む

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』 普通に生きるという特殊能力

リチャード・カーティス監督の『アバウト・タイム』は、ときどき話

『ヒックとドラゴン(2025年)』 自分の居場所をつくる方法

アメリカのアニメスタジオ・ドリームワークス制作の『ヒックとドラ

『世にも怪奇な物語』 怪奇現象と幻覚

『世にも怪奇な物語』と聞くと、フジテレビで不定期に放送している

『大長編 タローマン 万博大爆発』 脳がバグる本気の厨二病悪夢

『タローマン』の映画を観に行ってしまった。そもそも『タローマン

『cocoon』 くだらなくてかわいくてきれいなもの

自分は電子音楽が好き。最近では牛尾憲輔さんの音楽をよく聴いてい

→もっと見る

PAGE TOP ↑