*

『キングスマン』威風堂々、大人のわるふざけ。

公開日: : 最終更新日:2018/06/02 アニメ, メディア, 映画:カ行

kingsman

作品選びに慎重なコリン・ファースがバイオレンス・アクションに主演。もうそのミスマッチ感だけで、ポスターを二度見してしまう。それに2015年の面白かったアクション映画と言えば『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が一番にあがるのは当然だけど、かならず二番目にあがるのが、この『キングスマン』。なにかある!

コリン・ファースあっての企画だし、彼が主演でなければ、映画の魅力も半減する。しかし映画はコリン・ファースだけに頼ることなく、全く別の方向へと進んでいく。予告編で観て、こんな映画だろうと観はじめたら、観終わったときにはぜんぜん違う印象の映画になっている。観客を良い意味で裏切るトリッキーな映画。サブカル好きにはたまらないツボを押さえてる。

他のキャスティングもすごい。『ダークナイト』シリーズの執事アルフレッド役のマイケル・ケインや、またこの手の映画に出てきたの?って思っちゃうサミュエル・L・ジャクソン。我らがルーク・スカイウォーカーことマーク・ハミルもショボくれた教授役で登場してる。よくもまあこれだけの役者が集まったものだ。ノリはB級、配役はA級。サブカル的豪華さ。

『キングスマン』とは、国籍を特定していないスパイのこと。コリン・ファース演じるキングスマンは、普段はゴージャスな仕立て職人。マナーに厳しいイギリスの上流階級出身のスパイという荒唐無稽な設定も、コリン・ファースならしっくりハマってしまう。ある意味、こんなコリン・ファースが観たかった。

映画はキレッキレのバイオレンス・アクション満載。血みどろの残虐シーンの連続なのに、終始ゲラゲラ笑けてしまう。もちろんこの映画はR指定。だからこそ倫理に反した描写も割り切って堂々としてみせる。これこそまさにブラックユーモア。わるふざけをしてるようで、実は観客に大人のセンスを問われている。

残虐シーン満載なのに不快にならないのは、殺す相手が一般的に世の人が眉をひそめる輩ばかりだから。罪のない人が殺されたりすると暗い気分になるけど、キングスマンが闘う相手は、悪徳政治家や自己中大富豪にレイシスト、ラスボスはサイコパスなIT企業の大物。キングスマン、ぜひともやっつけて!

作中の音楽センスがめちゃくちゃイイ。地獄絵図の場面に『威風堂々』がかかるなんて、もう大爆笑! 悪趣味なのに、センスがいい!!

本作の監督は『キック・アス』のマシュー・ヴォーン。なるほどね。この悪ガキ的なサブカルセンスは、自分と同世代なのはすぐわかる。でももしかしたら、この感覚はもう古いのかもしれない。これからどんどん新しいセンスのエンタメ作品が生まれてくるだろう。本編しかり、カルチャーも世代交代の転換期かも。

前作『キック・アス』も楽しくてブラックなR指定のお子ちゃま大人向け映画だった。バイオレンスを期待して観たら、さわやかな気分にさせられてしまった。あまり胸を張って、好きだと言えない類いの映画。人によっては、こっちの人格を疑われちゃう。そういえば『キック・アス』のヒットガールのビジュアルをみて、まだ小さかったウチの子は本気でイヤがっていたっけ。なにか不穏なものをすぐさま感じ取ったのだろう。子どもの無意識な自己防衛反応の正確さ。まさにR指定いらず。

で、人を選んで密かに言わなくちゃだけど。……『キングスマン』、自分は好きです。

関連記事

『おやすみなさいダース・ヴェイダー』SWファンもすっかりパパさ

ジェフリー・ブラウン著『おやすみなさいダース・ヴェイダー』。 スターウォーズの暗黒卿ダース

記事を読む

『ファイト・クラブ』とミニマリスト

http://www.playbuzz.com/thelaststraw10/do-you-rem

記事を読む

『硫黄島からの手紙』日本人もアメリカ人も、昔の人も今の人もみな同じ人間

クリント・イーストウッド監督による 第二次世界大戦の日本の激戦地 硫黄島を舞台にした戦争

記事を読む

『カーズ/クロスロード』もしかしてこれもナショナリズム?

www.disney.co.jp[/caption] 昨年2017年に公開されたピクサーアニ

記事を読む

『カメレオンマン』嫌われる勇気とは?

ウッディ・アレンの『カメレオンマン』。人に好かれたいがために、相手に合わせて自分を変化させてしま

記事を読む

『はじめて投票するあなたへ、どうしても伝えておきたいことがあります。』って、はじめてじゃないけどね

7月10日に参議院選挙がある。今回から選挙権が18歳以上に引き下げになる。それに対して発売さ

記事を読む

アーティストは「神」じゃない。あなたと同じ「人間」。

ちょっとした現代の「偶像崇拝」について。 と言っても宗教の話ではありません。 先日妻

記事を読む

『おおかみこどもの雨と雪』で人生に向き合おう

『リア充』って良い言葉ではないと思います。 『おおかみこどもの雨と雪』が テレビ放映

記事を読む

『マザー!』観客はそれほど高尚ではない?

http://paramount.nbcuni.co.jp/mother/[/caption]

記事を読む

『ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘』天才と呼ばれた普通の父親たち

なんともうまいタイトルの本。本屋さんをブラブラしていたら、水木しげるさんの追悼コーナーにあっ

記事を読む

『インクレディブル・ファミリー』ウェルメイドのネクスト・ステージへ

https://www.disney.co.jp/movie/inc

『薔薇の名前』難解な語り口の理由

あまりテレビを観ない自分でも、Eテレの『100分de名著』は面

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』ディズニー帝国の逆襲

https://starwars.disney.co.jp/[/ca

『ホームレス ニューヨークと寝た男』華やかさのまやかし

ドキュメンタリー映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』。

『フロリダ・プロジェクト』パステルカラーの地獄

アメリカで起きていることは、10年もしないうちに日本でも起こる

→もっと見る

PAGE TOP ↑