『フラガール』生きるための仕事
史実に基づいた作品。町おこしのために常磐ハワイアンセンターを設立せんとする側、新しいものを拒み、今までの町を守ろうとする側の対立を描きながら、フラガールという華やかなショービジネスが出来上がるまでの群像劇。
常磐ハワイアンセンターは今ではスパリゾートハワイアンズと改名している。福島にあるこの施設は東日本大震災の被害を受け、一時は休業を余儀なくされた。この映画『フラガール』のヒットのあとの出来事。いまではスパリゾートハワイアンズも再開して、自分の周りでも「最近行った」なんて声も聞こえてきます。
今年の夏、ジェイク・シマブクロのメインテーマがコンビニでかかっていたので、いい曲だな〜、懐かしいな〜とコンビニのカフェブースでよく聞いていました。
映画『フラガール』の物語は、東北のある街を支えていた炭坑の仕事がダメになり、起死回生のハワイアンリゾート地をつくろうと、そして女性たちはそこでのフラダンサーになるべく、特訓していきます。街には、保守的で新しい風を拒む派と二分化になり、主人公のひとり蒼井優の演じる新人ダンサーがいて、その母・富司純子は強烈な反対派のひとり。この親子の確執がドラマのひとつの見せ場でもあります。
その母が映画の後半、ふとしたことで、疎遠していた娘の練習風景を目にします。娘は意図的に、母に自分のダンスをみせます。このシーンに台詞はいっさいありません。踊る人とそれを見る人の姿だけです。自信にあふれた娘のダンスに、母の心が動きます。(これはイギリス映画「リトルダンサー」のオマージュでもありますが……)
そして母は、反対派の仲間たちに言うんです。この台詞が良い。「今まで仕事とは、暗い穴の中で歯くいしばって、死ぬか生きるかでやるもんだと思っていたんだ」東北人らしい我慢強い人の言葉。「でもあんなふうに踊って人様によろこんでもらえる仕事もあってもいいのではないかと思えてきた」と続く。
ただ耐えるだけが仕事ではない。仕事を選ぶ自由もあるし、覚悟さえあればなんだってできる。暗いご時世に希望を感じさせる、良い台詞。
クライマックスのフラガールとなった娘の勇士を母は目撃します。そして娘のソロで会場から割れんばかりの喝采を受けます。ここ、富司純子さん演じる母親と一緒に泣きましたよ。
迫力のダンスシーンもさながら、あらためて、ステキな映画だと感じました。
関連記事
-
-
『リメンバー・ミー』 生と死よりも大事なこと
春休み、ピクサーの最新作『リメンバー・ミー』が日本で劇場公開された。本国アメリカ公開から半年
-
-
『DENKI GROOVE THE MOVIE?』トンガリ続けて四半世紀
オフィス勤めしていた頃。PCに向かっている自分の周辺視野に、なにかイヤなものが入
-
-
『ブラックパンサー』伝統文化とサブカルチャー、そしてハリウッドの限界?
♪ブラックパンサー、ブラックパンサー、ときどきピンクだよ〜♫ 映画『ブラックパンサー』
-
-
『ビバリーヒルズ・コップ』映画が商品になるとき
今年は娘が小学校にあがり、初めての運動会を迎えた。自分は以前少しだけ小中高の学校
-
-
『ニュー・シネマ・パラダイス』 昨日のこと明日のこと
『ニュー・シネマ・パラダイス』を初めて観たのは、自分がまだ10代の頃。当時開館したばかりのシ
-
-
『ピーターラビット』男の野心とその罠
かねてよりうちの子どもたちがずっと観たがっていた実写版映画『ピーターラビット』をやっと観た。
-
-
『幕が上がる』覚悟の先にある楽しさ
自分はアイドル文化や萌えとかよくわからない。だから『ももいろクローバーZ』の存在
-
-
『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』ディズニー帝国の逆襲
自分は『スター・ウォーズ』が大好きだ。小学1年のとき、アメリカで『スター・ウォーズ』という得
-
-
『バーフバリ』 エンタメは国力の証
SNSで話題になっている『バーフバリ』。映画を観たら風邪が治ったとまで言われてる。この映画を
-
-
『銀河鉄道の夜』デザインセンスは笑いのセンス
自分の子どもたちには、ある程度児童文学の常識的な知識は持っていて欲しい。マンガばかり読んでい