なぜ日本劇場未公開?『ヒックとドラゴン2』
とうとう日本では劇場公開はせず
ビデオのみの発売となった
米ドリームワークスの『ヒックとドラゴン2』。
7月の発売まで待ちきれず、
輸入版Blu-rayを購入。
ドイツ版とフランス版は
日本版キャストによる吹き替え版も
入っているので、子どもたちと楽しく観れた。
ドリームワークスの作品は、
なかなか日本ではヒットせず、
権利の問題もあって、
最近作は日本では
劇場公開される事がなくなった。
萌えアニメやゆるキャラが全盛の日本では、
毛色が合わない作風なのかもしれない。
ただ子どもたちは同社の『マダガスカル』、
大好きだけどね。
(すっきすっき~!)
海外で観た人たちが口をそろえて
「良かった」と言っていた本作。
期待しただけあった!!
冒頭、飛行マスクを外したヒックの
凛々しい表情の成長ぶりにハッとする。
前作のナヨっとした雰囲気はなく、
自信にあふれた男らしい青年になっている。
ガールフレンドのアスティとも
うまくいっており、その様子をセリフではなく、
お芝居でふたりの親密感が伝わる。
なかなか日本のアニメではない演出。
でも日本のアニメ、特に宮崎駿監督の作品の
遺伝子はいろんなところで引き継いでいる。
美術のデザインなんかもそうだが、
ヒックの母親なんかは、
まさに宮崎アニメの戦う少女が
そのまま中年になったよう。
ヒックは族長としての資質を持っている。
それは誰もが認めているのだが、
彼自身は自分はふさわしくないと思っている。
バイキングの世界は戦争が耐えない。
武力や腕力がモノを言う世界で、
ヒックは交渉と対話を重んじている。
彼のマッチョな父の姿とは異なる道を進んでいる。
現実の世界でも、
武力での争いが主となる昨今。
まず話し合いからというのは理想の姿。
本編でも、理解を示す者もいれば、
争いの姿勢を変えない者もいる。
ヒックは今までのバイキングにはない姿の首魁。
本当のリーダーは、己の無力さも自覚している。
リーダーの資質がある者は
覚悟を決めなければいけない。
これは継承の物語。
このたくましい物語が、
日本ではヒットしないと判断されてしまう
今の国内のエンタメ業界。
日本人が本当に弱っているのだな、と感じる。
関連記事
-
アーティストは「神」じゃない。あなたと同じ「人間」。
ちょっとした現代の「偶像崇拝」について。 と言っても宗教の話ではありません。
-
『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』夢を現実にした最低で最高の男
芸能界は怖いところだよ。よく聞く言葉。 本書は『宇宙戦艦ヤマト』のプロデューサーで、実質的な生みの
-
『ジャングル大帝』受け継がれる精神 〜冨田勲さんを偲んで
作曲家の冨田勲さんが亡くなられた。今年は音楽関係の大御所が立て続けに亡くなってい
-
『東のエデン』事実は小説よりも奇なりか?
『東のエデン』というテレビアニメ作品は 2009年に発表され、舞台は2011年
-
『ベイマックス』 涙なんて明るく吹き飛ばせ!!
お正月に観るにふさわしい 明るく楽しい映画『ベイマックス』。 日本での宣伝のされかた
-
『カールじいさんの空飛ぶ家』憐憫の情を脱せなければ、ドラマは始まらない。
ディズニーアニメの最新作『ベイマックス』が 予告編とあまりに内容が違うと話題に
-
『風が吹くとき』こうして戦争が始まる
レイモンド・ブリッグズの絵本が原作の映画『風が吹くとき』。レイモンド・ブリッグズ
-
『BLUE GIANT』 映画で人生棚卸し
毎年年末になると、映画ファンのSNSでは、その年に観た映画の自身のベスト10を挙げるのが流行
-
王道、いや黄金の道『荒木飛呂彦の漫画術』
荒木飛呂彦さんと言えば『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの漫画家さん。自分は少年ジ
-
『SING』万人に響く魂(ソウル)!
「あー楽しかった!」 イルミネーション・エンターテイメントの新作『SING』鑑賞後、ウチの子たちが