*

『風立ちぬ』 招かざる未来に備えて

公開日: : 最終更新日:2021/10/09 アニメ, 映画:カ行

なんとも不安な気分にさせる映画です。
悪夢から覚めて、夢の内容は忘れても、
ただただ不安な気分が残るような、そんな映画。

主人公は天才航空設計士。
天才は時にして空想と現実の境目がなくなる。
それを映画にするとこんな感じ。
どこが現実でどこが空想か分からなくなるのは
フェリーニの映画を観ているかのよう。

先日テレビ放送をあらためて観て、
やはりその観賞後の印象は変わらなかった。
これは御涙頂戴の映画ではないなと。

公開当時はまだ作品の意図など
理解も出来なかったけれど、
今の世の中の流れを肌で感じていると、
なんとなく以前より見えてくるものがある。

公開当時宮崎駿監督は、
「10年後20年後に
この作品の真価を問われるだろう」
のような意味深の言葉を放っていたと思う。

「地震のあとには戦争がやってくる」とは
忌野清志郎氏の言葉
この映画も関東大震災から始まり、
第二次世界大戦をむかえて終わります。

宮崎監督が関東大震災の場面の
絵コンテを描いているときに、
3.11震災が起こったと聞きます。
運命的です。

推測ですが、この映画は
依頼されて作ったのではないかと。

これから世の中が
戦争へむかっていきそうなので、
戦争にまつわる映画をつくってくれないかと。

宮崎監督としては、
戦争礼賛の映画はつくる訳にはいかないが、
設計士の話ならつくれるだろう。
そしてメロドラマも交えれば、
エンターテイメントとして成立し、
100%プロパガンダ映画にはならないと
工夫をされたのではないだろうか?

引退宣言には年齢的な問題も
当然あるでしょうが、
これからは自由な映画が作れない時代が来るなと
監督が感じていたのかも知れません。

映画に出てくる若者たちは
「戦争はイヤだ」とは絶対に口にしない。
当時の人間の潔さを感じる。

大きな時代のうねりの中では、
個人ではもうどうしようもない。

この映画の不安感は、
やがて近い未来にやってくるかもしれない、
暗闇に覆われた日本の姿。

映画はそんな時代がきたとしても、
「生きねばならぬ」と言っている。

{

関連記事

『未来のミライ』真の主役は建物の不思議アニメ

日本のアニメは内省的で重い。「このアニメに人生を救われた」と語る若者が多いのは、いかに世の中

記事を読む

『STAND BY ME ドラえもん』 大人は感動、子どもには不要な哀しみ?

映画『STAND BY ME ドラえもん』を 5歳になる娘と一緒に観に行きました。

記事を読む

『SAND LAND』 自分がやりたいことと世が求めるもの

漫画家の鳥山明さんが亡くなった。この数年、自分が子どものころに影響を受けた表現者たちが、相次

記事を読む

『RAW 少女のめざめ』それは有害か無害か? 抑圧の行方

映画鑑賞中に失神者がでたと、煽るキャッチコピーのホラー映画『RAW』。なんだか怖いけど興味を

記事を読む

『呪術廻戦』 邪悪で悪いか⁉︎

アニメ映画『呪術廻戦0』のアマプラ独占配信の予告を観て、『呪術廻戦』をぜんぶ観たくなった。実

記事を読む

『うる星やつら オンリー・ユー』 TOHOシネマズ新宿OPEN!!

TOHOシネマズ新宿が4月17日に オープンするということで。 都内では最大級のシネコン

記事を読む

no image

『電車男』オタクだって素直に恋愛したかったはず

  草食男子って、 もう悪い意味でしか使われてないですね。 自分も草食系なんで…

記事を読む

『葬送のフリーレン』 もしも永遠に若かったら

子どもが通っている絵画教室で、『葬送のフリーレン』の模写をしている子がいた。子どもたちの間で

記事を読む

『機動戦士ガンダム』 ブライト・ノアにみる大人のあり方

『機動戦士ガンダム』は派生作品があまりに多過ぎて、 TSUTAYAでは1コーナー出来てしま

記事を読む

『DUNE デューン 砂の惑星』 時流を超えたオシャレなオタク映画

コロナ禍で何度も公開延期になっていたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF超大作『DUNE』がやっと

記事を読む

『ブラッシュアップライフ』 人生やり直すのめんどくさい

2025年1月から始まったバカリズムさん脚本のドラマ『ホットス

『枯れ葉』 無表情で生きていく

アキ・カウリスマキ監督の『枯れ葉』。この映画は日本公開されてだ

『エイリアン ロムルス』 続編というお祭り

自分はSFが大好き。『エイリアン』シリーズは、小学生のころから

『憐れみの3章』 考察しない勇気

お正月休みでまとまった時間ができたので、長尺の映画でも観てみよ

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』 あらかじめ出会わない人たち

毎年年末になるとSNSでは、今年のマイ・ベスト10映画を多くの

→もっと見る

PAGE TOP ↑