*

『カールじいさんの空飛ぶ家』憐憫の情を脱せなければ、ドラマは始まらない。

公開日: : 最終更新日:2019/06/14 アニメ, 映画:カ行

 

ディズニーアニメの最新作『ベイマックス』が
予告編とあまりに内容が違うと話題になっている。

日本版の予告編は、
お涙頂戴の感動作のように宣伝されているのだが、
オリジナルのアメリカ版はヒーローものっぽい演出。
内容もオリジナル予告編のものらしい。
原作はマーベルコミックらしいし。

日本はとかく「泣ける=名作」と
勘違いしている傾向がある。

今年の『STAND BY ME ドラえもん』みたいに
「ドラ泣き」とかいってヒットするのは日本だけ。
こんな暗くセンチメンタルな内容では、
世界標準では通用しない。
(これはこれで好きだけど)

『アナと雪の女王』だって、日本版ポスターは
登場人物達が神妙な表情をしている。
本編は明るいので、ここでも違和感を感じずにいられない。

深刻だったり、お涙頂戴でなければ
不真面目な作品と勘違いされてしまうくらい
日本人は娯楽を見る目が乏しい。

ピクサー&ディズニーの
『カールじいさんの空飛ぶ家』も然り。

冒頭、カールじいさんの生い立ちが、
めくるめく早さで紹介される。

奥さんと結婚し、子どもができなかったが
仲良く暮らし、やがて妻に先立たれる。
とても悲しいオープニング。

日本の宣伝では、
「この妻を亡くした悲しいおじいさん」を
全面的にフィーチャーしている。

しかしこれはキャラクター紹介に過ぎないのだ。

カールじいさんは偏屈者だ。
偏屈な主人公が突然登場しても、
観客はこの人を好きになってはくれない。

偏屈になるには理由がある。
人生の殆ど一緒に過ごした妻を亡くしたばかりと知れば、
もうカールじいさんがどんなに偏屈でも感情移入できる。

でも偏屈じいさんが偏屈なままでは物語は始まらない。
いつまでも悲しみに耽ってばかりはいけないのです。

カールじいさんは旅に出ます。
若いときに妻と約束していた旅。

もう誰とも親しくなるまいと
心を閉ざしたにもかかわらず、
ボーイスカウトの少年と出会ってしまいます。

日本版予告編にある自己憐憫真っただ中の
人間のままでは物語は始まらない。

人間が成長するのに年齢なんて関係ない。
おじいさんだって成長していく。

そして笑いの中にこそ人生が存在していくのです。

日本の制作者側も観客側も、
いつまでたってもお涙頂戴から抜け出せずにいる。
この感性は昭和の貧しい時代のまま。

人生にとって必要なのは、涙よりも笑いのはず。
笑うことは不真面目とか思ってる人もいまだにいるらしい。

ホントはなんにも考えてないくせに、
とりあえず神妙な顔をつくって、
まじめぶってるとしか思えない。

本気でいろいろ考えてたら、
面白くなることばかり考えて、
ユーモアいっぱいの頭ん中になってしまうけどな。

「笑う門には福来る」って、日本の言葉だよね?

みんな笑いの重要性を忘れちゃってるのかしら?

 

関連記事

no image

『風と共に去りぬ』時代を凌駕した人生観

  小学生の娘が突然、映画『風と共に去りぬ』が観たいと言い出した。なかなか渋い趣味。

記事を読む

no image

『Ryuichi Sakamoto : CODA』やるべきことは冷静さの向こう側にある

坂本龍一さんのドキュメンタリー『Ryuichi Sakamoto : CODA』を観た。劇場は恵比寿

記事を読む

no image

『帰ってきたヒトラー』ドイツの空気感を伝える、コワイ社会風刺コメディ

公開時、自分の周りで好評だった『帰ってきたヒトラー』。毒のありそうな社会風刺コメディは大好物なので、

記事を読む

『未来少年コナン』厄介な仕事の秘密

NHKのアニメ『未来少年コナン』は、自分がまだ小さい時リアルタイムで観ていた。なんでもNHK

記事を読む

姫はセレブの国からやってきた『かぐや姫の物語』

先日テレビで放送した『かぐや姫の物語』。 録画しておこうかと自分が提案したら家族が猛反

記事を読む

no image

『ひつじのショーン』おっと、子供騙しじゃないゾ!!

  ひつじ年を迎え『ひつじのショーン』を 無視する訳にはいかない。 今年はも

記事を読む

no image

なぜ日本劇場未公開?『ヒックとドラゴン2』

  とうとう日本では劇場公開はせず ビデオのみの発売となった 米ドリームワークス

記事を読む

no image

『リメンバー・ミー』生と死よりも大事なこと

春休み、ピクサーの最新作『リメンバー・ミー』が日本で劇場公開された。本国アメリカ公開から半年遅れだ。

記事を読む

no image

『鉄コン筋クリート』ヤンキーマインド+バンドデシネ

アニメ映画『鉄コン筋クリート』が公開されて今年が10周年だそうです。いろいろ記念イベントやら関連書籍

記事を読む

『SLAM DUNK』クリエイターもケンカに強くないと

うちの子どもたちがバスケットボールを始めた。自分はバスケ未経験なので、すっかり親のスキルを超

記事を読む

『天気の子』 祝福されない子どもたち

実は自分は晴れ男。大事な用事がある日は、たいてい晴れる。天気予

『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類! 新春スペシャル!!』結束のチーム夫婦も前途多難⁉︎

2016年に人気だった『逃げるは恥だが役に立つ』、通称『逃げ恥

『JUNO ジュノ』ピンクじゃなくてオレンジな

ジェイソン・ライトマン監督の『JUNO ジュノ』は、エリオット

『トイストーリー4』人のお節介もほどほどに

大好きなピクサー映画の『トイストーリー』シリーズの最新作『トイ

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』言わぬが花というもので

大好きな映画『この世界の片隅に』の長尺版『この世界の(さらにい

→もっと見る

PAGE TOP ↑