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『チョコレートドーナツ』ホントの幸せってなんだろう?

公開日: : 映画:タ行

http://bitters.co.jp/choco/

今話題のLGBT差別の具体例は、映画『チョコレートドーナツ』で分かりやすく描かれていると聞いて、この映画は観ていなかったのを思い出した。実は公開時、自分はこの映画を観ることはないだろうと思っていた。

ゲイのカップルが、実母にネグレクトされている少年を養子に迎えようとする話。社会的弱者が寄り添って生きていこうとする。当時の宣伝文句は「絶対に泣ける映画」。お涙頂戴のあざとい映画だと思っていた。LGBTや障害者を扱って、苦労話を論って泣かせるだけのポルノ的作品ではないかと。『チョコレートドーナツ』という、甘ったるい少女漫画のような邦題も関心しなかった。

実際に映画を観てみたら、それが誤解だと分かった。自分はこの映画を観て、泣くどころか、やるせない怒りを感じた。映画はLGBTがいかに社会的地位を与えられていないのかをシミュレーションしている。映画の舞台は1970年代のアメリカにしてオブラートに包んではいる。でも2018年の現代日本は、この映画の社会とまったく同じ価値観みたいだ。映画は差別に対して問題提起している社会派だ。

ただ社会派を前面に出すと、映画がヒットしないのは確か。映画の中で象徴的に登場する『チョコレートドーナツ』を邦題に持ってくるのは、以外なことになかなかセンスがいい。ちなみに原題は『Any Day Now』。歌手を目指す主人公が歌う歌の歌詞からの引用らしい。抽象的な原題は、社会派の本作からブレてはいないが、キャッチーではない。商業作品である映画というジャンルの、タイトル付けの難しさだ。

今日本では、ある議員のLGBTの差別発言が問題になっている。LGBTは生産性がない存在だから、税金を使う必要がないというものだ。また、ある医科大学では、受験生が女子だと減点されていることが発覚した。それらに対する世論の怒りの反応はあちこちに広まっている。

これらの差別的で、マイノリティを排除しようとする全体主義的思想は、ナチスのそれと同じ。その思想はそのままホロコーストへと繋がっていく。障害者は子孫をつくってはいけないという優生保護法が日本で廃止されたのは1995年。結構最近なので驚く。日本はまだまだ差別感情が根強い。

今回の差別の矛先はLGBTや女性に向けられたものだが、こういった差別はいつ何に向かうかわからない。性別だけでなく、年齢や収入、出身や職業や学歴かもしれない。いま差別されていない人も、明日は被害者になるかもしれない。国のトップで、おおっぴらに差別が行われているのだから、多くの人が怒り、恐怖を感じている。差別は「嫌だな」と感じる人が多いのは、とてもいいことだ。多くの人がこのまま放置したら、その先どこへ向かうのか、皆想像する力があることの証明。

映画の後半は、ゲイのカップルがダウン症の少年を養子に欲しいと、親権をめぐる法廷劇になる。この疑似家族をずっとみてきた観客は、この三人が共に暮らせればどんなに幸せか知っている。しかし裁判では、ゲイのカップルと同居することへの悪影響ばかりが問われていく。

確かに大多数にあたる男女から形成される夫婦のもとで子どもが育つのと、ゲイのカップルのもとで、みるもの経験することは異なるだろう。でも男女の夫婦でも必ずしも優良なわけもない。子どもが育つ環境はさまざま。大切なのは、当事者が幸せを感じているかどうかだ。当事者に寄り添わない結果先にありきの裁判が展開されていく。

差別はなくならない。実際自分もBGLTや障害のある人を、無意識のうちに傷つけてしまうような言動をしてしまうかも知れない。身の周りにBGLTの人がいないからイメージできないのもある。BGLTの人がいないのではなく、生きづらくならないように隠しているだけかも知れない。

男はこうあるべき、女はどうあるべきと問うのはナンセンスだ。医療の場でも、医者が男か女かより、優秀な先生に診てもらった方が良いに決まってる。男尊女卑社会の仕掛け人は当然男だろう。しかし男女平等の世の中になっていけば、男性陣も実際は助かることが多くなる。これこそ想像力の欠如。

映画に出演している役者さんに左利きの人が多い。偶然か意図的か? 数十年前まで、左利きも差別の対象だった。無理に右利きに矯正して、障害がでてしまうこともあった。今では左利きは脳の個性だと科学的に証明されている。

映画を観ていると、本当の幸せとは何だろうと考えてしまう。人の尊厳が軽視されがちな現代社会。いろんな個性があって、尊重し合えればいいのだけれど、それは理想論でしかないのだろうか。互いを認め合うことはとても勇気がいる。想像力と勇気。これが必要。

「差別は嫌だ」と多くの人が感じてる。歴史上連綿と続いてきた差別問題が、いま浮き彫りにされている。嫌なものばかり取り上げられて、うんざりもする。いまさらなぜ? とも感じるが、ようやっといい方向へ成長する兆しなのだとしたら、とてもいいことだと思う。

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