マッドネエチャン・ミーツ『マッドマックス/怒りのデス・ロード』
大事なのは理屈じゃない、勢いなんだよ!! この映画『マッドマックス/怒りのデス・ロード』はそれこそ勢いで物語っている。前『マッドマックス』三部作から30年近く、一応は前作『サンダードーム』の後日談になっているみたいだけど、前作を知っていようがいまいがそんなこたぁ小さなことだ。そんなことグダグダ考えている隙もなく、勢い良く映画はタイトルバックまで進んでいく!! ROCKな映画とはこのことだ。ワルノリでカッコ良ければなんでもあり。悪党どものファッションやメカニックがいちいち楽しい。悪党軍団が白塗り丸坊主でこれじゃもう山海塾(古っ)じゃないか!! アングラやカルトの世界。とにかくいちばん気に入ったのは、紅のギター野郎!! 戦いの士気を高める為に太鼓を叩くのは分かる。太鼓隊をトラック後方に乗せ、前方にはドデカイスピーカーに紅のギター野郎が吊るさせれて、ギンギンにギターサウンドをぶちまける! おまけにそのギターは火を噴く!! バッカで〜い!! 夜間にはこの紅ギター野郎はライトアップされてる。周りはみんな暗いのに、ギター野郎だけが紅に光ってる。いざとなったら真っ先に標的だ。こいつが画面の端に写ってるだけで気になってしょうがない。映画を観ながら無意識のうちに頬が緩んでいた。
この映画『マッドマックス』がタイトルだけど、実はマックスが主人公じゃないのがミソ。悪党軍団に反旗を翻す女達がメイン。マックスはそのお手伝い。世紀末の荒廃した時代には、力がモノを言い、女達は子どもを作る為の道具や獲物に過ぎない。権力の象徴の女であるがゆえに、今までの『マッドマックス』には出て来なかった美人ばかり。以前政治家で「女は子どもを作る為の道具」とか発言して総スカン食らった輩がいるが、政治家なんて殆どみんな女性を見下しているものだろう。普段思っていることが、うっかり口が滑ったにすぎないだろうから、他の政治家達もなんで世論がここまで怒るのか意味不明だと思う。セクハラヤジが叩かれる理由もわからない、むしろ世論に叩かれて気の毒にと思ってる政治家なんていくらでもいるだろう。そんな上から目線のアホな男どもに女達が立ち向かう姿が気持ち良い!! 女がダメな男を成敗する姿の娯楽作品がこれからは増えるかも知れない。
監督はすべての『マッドマックス』を監督しているオーストラリアのジョージ・ミラー。『マッドマックス』の後は子豚が主人公の『ベイブ』や、ペンギンが主人公のCGアニメ『ハッピー・フィート』などファミリー映画が続いた。これらの映画も楽しい作品だったが、やっぱり原点のバイオレンスアクション作らなきゃ、死ぬに死ねないと御年70歳の老人とは思えぬパワフル演出。途中息切れするんじゃないかと心配も上の空、始めの勢いは最後まで劣ることはない。最初から最後までずっと走りっぱなしだぜ。スゲーじいさんだぜジョージ・ミラー!!
客層はカップルはもちろん、おつむの弱そうな中坊男子たちや、オールドファンなのか白髪頭のおじいさん2人組なんかもいた。みんなワイワイ楽しく鑑賞していた。
とにかく女性が大活躍するこの映画。シャーリーズ・セロンって元はどんなだったっけぐらいのパンクぶりだし、中途参戦の援軍はバイクにまたがったおばあちゃんだったりと、イマジネーションがぶっ飛び過ぎ。アクション映画は男の人が観るもんでしょ? って普通なら思っちゃうけど、この映画は女性の方がスカッとするんじゃないか? 女性が活躍するバイオレンスアクションで、ここまで成功している作品はいままでなかったと思う。そこがジョージ・ミラーのセンスの良さ。とにかく鬱々とした気持ちをスカッとさせてくれる、パワフルな映画だ。キモチイイ!!!
関連記事
-
-
『うる星やつら 完結編』 非モテ男のとほほな詭弁
2022年の元日に『うる星やつら』のアニメのリメイク版制作の発表があった。主人公のラムが鬼族
-
-
『ジョーズ』 刷り込みでないと言ってくれ!
平日の昼間に放送しているテレビ東京の『午後のロードショー』は、いつも気になっていた。80年代
-
-
『アナと雪の女王2』百聞は一見にしかずの旅
コロナ禍で映画館は閉鎖され、映画ファンはストレスを抱えていることだろう。 自分はどうか
-
-
『レディ・プレイヤー1』やり残しの多い賢者
御歳71歳になるスティーブン・スピルバーグ監督の最新作『レディ・プレイヤー1』は、日本公開時
-
-
『コーダ あいのうた』 諦めることへの最終章
SNSで評判の良かった映画『コーダ』を観た。原題の『CODA』は、音楽用語の最終楽章の意味にもあ
-
-
『きみの色』 それぞれの神さま
山田尚子監督の新作アニメ映画『きみの色』。自分は山田尚子監督の前作にあたるアニメシリーズ『平
-
-
『神風』ベッソン発SF映画は紛らわしいタイトル
フランスの俳優ミシェル・ガラブリュさんが1月4日に亡くなったそうです。フランスの
-
-
『THE FIRST SLAM DUNK』 人と協調し合える自立
話題のアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』をやっと観た。久しぶりに映画館での
-
-
『リメンバー・ミー』 生と死よりも大事なこと
春休み、ピクサーの最新作『リメンバー・ミー』が日本で劇場公開された。本国アメリカ公開から半年
-
-
『勝手にふるえてろ』平成最後の腐女子のすゝめ
自分はすっかり今の日本映画を観なくなってしまった。べつに洋画でなければ映画ではないとスカして
- PREV
- 『海街diary』男性向け女性映画?
- NEXT
- マイケル・ジャクソン、ポップスターの孤独『スリラー』