『海街diary』男性向け女性映画?
日本映画で人気の若い女優さんを4人も主役に揃えた作品。全然似てないキャスティングの4人姉妹の話を是枝裕和監督が演出する。この主役クラスの若い女優が揃っただけで、映画はヒットしてしまう。是枝作品の中で過去最大のヒット作だろう。客層はファミリーやカップル、女友達同士で来てるような老若男女問わずで大入り。とてもよろしい。
この映画の予告を観たとき、女性がたくさん出てくる映画なのに、まったく女性的な雰囲気が伝わって来ないのに違和感を感じた。この映画に出てくる女性は、男性目線からの女性像。若い美女が4人画面に収まるだけで、独特の緊張感と言うか、狂気なようなものを感じずには得ない。自分はこの違和感は何たるかを確かめたくて映画館に足を運んだ。ちょっとしたコワイもの見たさだ。女ばかりが集まると諍いが起こるのは普通。なのにここにでてくる女性達はみんな優しい。美女が集まれば独特の緊張感が発生するのは当然。もし女性が集まってもまったりした雰囲気ならば、もっとラフな状態になっているはず。この緊張感は、演出家がオジサンだからなのだと原因はハッキリしている。どんなに女優さん達がラフな姿を演じてみせても、この映像美を計算され尽くされた理屈っぽい堅苦しい画面では、女性的な要素はみんな死んでしまう。女性的な感性は、もっとルーズなところから伝わってくる。画面の向こうには女性ばかりが出ているのだが、ここにあるのは男の世界。あたかも萌えアニメの美少女像と同じようなもの。やっぱり女性を描くのであれば、女性監督が演出するべきだったんじゃないか?
男性ならばこの美人女優が揃っているだけで大満足だろう。ましてや映像はとてもキレイ。文句をつけにくい。でも果たして女性は同性としてこの映画に共感できるのだろうかとても気になってしまう。自分は男だからこの映画の女性達には誰一人共感できる要素はないわけだが、女性の観客も同じような感想だったらそれはとても問題。でも男目線で描かれているからこそ、女性映画にも関わらず男性客にも訴求しているのだから、一概に否定はできないし。
吉田秋生さんの漫画原作は、自分はちょろっとしか観ていないが、大まかなストーリーは同じだと思う。でもニュアンスが変わっているように思えてならない。原作の同じキャラクターは、この映画のような緊張感はまったく放っていない。自分が普段感じてる女性的な女性の感覚を見事に表現していると思う。同じ作品だけどまるきり別ものといっていいのだろう。映画には梅酒や、しらす料理やカレーライスなど美味しそうな食べ物がたくさん出てくる。女の人が生活するのにいちばん大切にするものだ。これは原作者が女性だから出てくるものだろう。要するに、等身大の女性像を描きたいのなら、セックスアピールを臭わせて欲しくないってこと。
フランソワ・オゾンやペドロ・アルモドバルのように男性なのに女性を描きたがる監督は多い。でも彼らはやはりみなキワものといっていいだろう。彼らの描く女性像は、女性監督が描くそれよりも赤裸裸な感じがする。この『海街diary』はカンヌにも招待されたらしいので、海外の人は一体どう感じたのか? まぁ「若くて綺麗な女の子が撮りたかったのね」ぐらいにしか感じないだろうけど。日本の萌えアニメのような、おっさんが描く女性像の妄想の具現化だろうと思えば、海外では今の日本のサブカルっぽくて理解しやすいだろう。雑誌の表紙で映画に出てくる縁側で、四姉妹の女優に囲まれた是枝監督の姿が、ちょっと痛々しく感じてしまう。
仲の良い四姉妹の話を描きたかったのだろうが、この四姉妹がうまくいっているのは、お互いが遠慮し合っているから。それが作品のテーマであるのならば問題ない。原作もこのニュアンスなのかは分からないが、もし映画だけがこの緊張感を伝えているならば、女優さん達が男性の監督に気を使っているのがそのまま映像に出てしまっているわけだから、作品としては失敗になる。
悪く書いているようだけど、それほど悪い映画とも言い切れない。映画を観て、久しぶりに鎌倉に行きたくなったし、魅力的な要素はたくさんある。なんとも不思議な映画である。これが今の日本の姿の象徴と言ってしまえばそれきりだけど。
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