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『未来を花束にして』勝ち得たものの代償

公開日: : 映画:マ行

イギリス映画の『未来を花束にして』。100年前のロンドンを舞台に、女性の選挙権の必要性を訴えた女性活動家たちの姿を描いている。邦題は最近の流行りで、フワッとした恋愛モノみたいだが、映画は厳しい現実を描いている。

邦題のつけ方も、日本での宣伝文句も、なんとなく他人ごとのように扱っているが、せっかく映画を観るのだから、もうちょっと深読みしてみたい。

舞台は100年前だし、海の向こうのロンドンだし、昔は大変だったね。でも彼女たちの地道な努力のおかげで、いま私たちは何不自由なく暮らしてる。とは、さらさら思えない。

現代の日本では男女ともに、一定の年齢になれば選挙権は与えられる。この映画に登場する女性たちは、命がけでその権利を得ようとする。喉元過ぎればなんとやら。現代の日本を始め、世界の多くの人たちは、その与えら得た権利を利用することはない。政治なんて興味ないよと無関心。国民の多くがそんな態度でいると、やがては社会は後退してしまう。

なんだかこの映画は、過去を描いているようでいて、もしかしたらこれから向かおうとしている未来のディストピアのシミュレーションにすら思えてしまう。

20世紀初頭のイギリスでは、女性には選挙権もなければ、職業選択権もない。搾取される側は一生そのまま。それが当たり前になっているので、疑問を感じる人すらほとんどいない。

そんな中で声を上げるということは勇敢なことだし、立派な精神だと思う。頭のいい人は先見の明がある。多くの人が問題意識を抱くよりもかなり早い段階で、物事の矛盾に気づき、改善しようと努力する。

映画の登場人物たちは、世の中を少しでも良くしよう、自分たちの待遇を改善しようと奮闘する。でも政治や社会がそれを受け入れない。時の政治は、武力行使で彼女たちを弾圧し始める。暴力で弱者の意見を無理矢理封じ込めようとすれば、当然反発を買う。やられたらやりかえす。活動家たちの行動がどんどん過激になっていく。

映画を観ていると、とてもやるせない気持ちになってくる。活動家となっていく彼女たちに、別の生き方はなかったのかと。

主人公の女性活動家たちの言い分はいたって正当なもの。映画も、彼女たちはめでたく権利を獲得したと、美談のようにまとめてる。というか、そうまとめないと作品が完結しない。

でも主人公は、この活動によって仕事を失うし、家族も崩壊する。警察に常に目をつけられ、逮捕されて拷問を受ければ、心身ともにボロボロだ。追いつめられた人間は、決死の行動に出かねない。果たしてそれで勝ち得たものがあったとしても、本当にハッピーなのだろうか。

活動家たちは、為政者や社会に対して「このままではいけない!」と訴え続ける。でも世間から見たら、彼女たちは反社会活動をするテロリストみたいなもの。結局自分たちを疎ましく思っている世論を味方にしなければいけない。もうそれだけで矛盾がある。

たとえ正論であっても、世の中がそれを問題意識として感じていなければ、それは異端者の意見となる。悲しいかな世論が求めていないもの、共感を得られないものには、迫害しか待っていない。

正論であっても、必ずしも通るとは限らない。時流をみる重要性。客観性を持ってリスクヘッジをしていくことも大切だが、あまり悲観的になりすぎてパラノイアになってしまっては本末転倒。

普段自分は「これ、危ないな」と感じたら、そこから距離を置くことにしている。危機感を持って備えていると、その想像より酷いことは滅多に起こらない。常に危機感を持っているからこそ、小さな壁にぶつかったとき、たやすく越えられたりするのも事実。要は危機管理のバランスが大事かなと。

大きなうねりの中では、逃げ道は幾らでもあるものだ。その大海の流れに逆行するのはしんどい。素直に流れに乗って泳いだ方がラクに決まってる。ある意味、自分ひとりではどうしようもないことは、早々に諦めるのもアリなのかと。もしも最悪の事態が起きたとき、最初の犠牲者にならない工夫をしていたい。

ものごとに無関心や、考えないことはよくないが、考えすぎもよくない。もしかしたら、感受性が強くて、危機感の高いインテリの方が、争いごとの発端になってしまうこともあるかもしれない。

正論や正義を行使するのはとても危険。流れをみながら、スルスルと適材適所で自分の意思を表明できたら、もっと生きやすい人生になることだろう。

でもそれがとても難しいから、誰もが迷い苦しんで生きている。頭がいいのは良いことだから、その知恵を自分自身の幸せに向けていくことも大事なのかと。まずは自分がハッピーになる。小さなことから始めたいものだ。

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