*

『ソーシャル・ネットワーク』ガキのケンカにカネが絡むと

公開日: : 最終更新日:2019/06/13 映画:サ行

 

ご存知、巨大SNS・Facebookの創始者マーク・ザッカーバーグの自伝映画。

アメリカの凄いところは、実在の人物を実名そのままで、本なり映画なりにしてしまうところ。それも批判的な内容も堂々と表現してしまっている。この後、何本も実在の人物の伝記映画が作られたが、いまいちパッとする作品がなかった。これは伝記映画が当たったのではなく、デビッド・フィンチャーのセンスの良さに由来しているからだろう。音楽の使い方やカメラワークのカッコ良さはフィンチャーならではかと。

映画ではザッカーバーグが女の子に振られた腹いせに立ち上げた悪口サイトが、Facebookの母体とされている。IT関係やマスコミ関係の人は狭い視野で上から目線の人が多い。コミュニケーション能力が希薄といっていいほど。そんな人たちだからこそ、日頃トラブルには事欠かない。当事者は、まったくトラブルが多いなと自分の周りはバカばっかりだとぼやくのだろうが、大抵の災難はその人の性格的問題が引き起こしている。

IT系は日々、幼稚なトラブルが事欠かない。ネットの特性自体がそういった人や事象を集めやすいものなのだろう。この映画でのザッカーバーグのオフィスは、幹部は大音響の音楽をかけて、プールで女の子と遊んでいる。その隣でオペレーターは仕事をしなければいけない。ちょっとでも見たら「仕事しろ!」って怒られる。最悪の仕事環境。つい最近までは、富豪というのは、酸いも甘いも経験して、人間的に深みのあるようなイメージもあったが、ここは本当にこどもの国。本来ならつまはじきにされる別世界。巨額のカネが絡んでくると、子どもの喧嘩も裁判沙汰になる。関わる弁護士のおじさんたちも気の毒になる。そしていちばん気の毒なのはザッカーバーグ本人のように映画は語っている。

本来ならば、いろんな大人達に出会って、いろいろ人生について教わっていく年頃。巨万の富を、器がないまま享受してしまったがゆえ、誰ひとりとして助言者にはなってくれない。実際の宝=財は手に入れたけれど、人生において大切な心の宝を得る事ができなかった。とても哀れな人のように、映画はザッカーバーグをとらえている。

いちばん最初に彼を振った女の子を思う若者らしい感性をかいまみせて映画は幕を閉じる。

成功ってなんだろうと問いかけてくる切ない終わり方が、何とも言えない。

 

関連記事

『SHOGUN 将軍』 アイデンティティを超えていけ

それとなしにチラッと観てしまったドラマ『将軍』。思いのほか面白くて困っている。ディズニープラ

記事を読む

『007 スペクター』シリアスとギャグの狭間で

評判の良かった『007 スペクター』をやっと観た。 前作『スカイフォール』から監督は続

記事を読む

『シング・ストリート』 海の向こう、おなじ年代おなじ時代

映画『シング・ストリート』は、事前にかなりの評判を耳にしていた。「はやくも今年ナンバーワンの

記事を読む

no image

『猿の惑星:新世紀』破滅への未来予測とユーモア

  2011年から始まった『猿の惑星』のリブートシリーズ第二弾にあたる『猿の惑星:新

記事を読む

no image

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』集え、 哀しい目をしたオヤジたち!!

  『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』はマーベル・ユニバースの最新作。『アベン

記事を読む

no image

それを言っちゃおしまいよ『ザ・エージェント』

社会人として働いていると「それを言っちゃおしまいよ」という場面は多々ある。効率や人道的な部分で、これ

記事を読む

『ソウルフル・ワールド』 今そこにある幸福

ディズニープラスを利用し始めた。小学生の息子は、毎日のように自分で作品を選んで楽しんでいる。

記事を読む

『SHOAH ショア』ホロコースト、それは証言か虚言か?

ホロコーストを調べている身内から借りたクロード・ランズマンのブルーレイ集。ランズマンの代表作

記事を読む

『スパイダーマン ホームカミング』 ハイテク・スパイディは企業を超えて

 スパイダーマンがマーベル・シネマティック・ユニバースに本格的に参戦した単独作『スパイダーマ

記事を読む

『しあわせはどこにある』おじさんが旅に出る理由

サイモン・ペッグが観たい! ハリウッドのヒットメーカーであるJ.J.エイブラムス監督作品に

記事を読む

『ツイスター』 エンタメが愛した数式

2024年の夏、前作から18年経ってシリーズ最新作『ツイスターズ』

『オオカミの家』考察ブームの追い風に乗って

話題になっていたチリの人形アニメ『オオカミの家』をやっと観た。

『マッシュル-MASHLE-』 無欲という最強兵器

音楽ユニットCreepy Nutsの存在を知ったのは家族に教え

『太陽を盗んだ男』 追い詰められたインテリ

長谷川和彦監督、沢田研二さん主演の『太陽を盗んだ男』を観た。自

『ルックバック』 荒ぶるクリエーター職

自分はアニメの『チェンソーマン』が好きだ。ホラー映画がダメな自

→もっと見る

PAGE TOP ↑