*

『スター・トレック BEYOND』すっかりポップになったリブートシリーズ

公開日: : 最終更新日:2019/06/11 アニメ, 映画:サ行, 音楽

オリジナルの『スター・トレック』映画版をやっていた頃、自分はまだ小学生。「なんだか単純そうな話なのに、難しそうにやっているな〜」と、淀川長治さんが解説しているテレ朝の『日曜洋画劇場』の放送を、眠い目をこすりながら観ていたものです。

2009年から始まったこのリブートシリーズ。パラレルに時代が遡り、カーク船長もスポックもすっかり若返った。J.J.エイブラムスが監督した新シリーズは、初めて『スター・トレック』を観る人にも敷居が低く、従来のファン・トレッキーも納得ができるような、オリジナルシリーズへの配慮も行き届いていた。分かりやすいけど、硬派な匂いも残している斬新な続編。まあ今となっては、J.J.が演出するなら、そうなるのは至極当然なのだろうけど。

まさかだったのは、その後J.J.が『スターウォーズ』の新シリーズの監督にもなったこと。

『スター・トレック』と『スターウォーズ』は、公開当時から比べられ、「あなたはどっち派?」と、ファンも対立していた。そんな類似したビッグシリーズの再起動作を、両方監督してしまうJ.J.。ファンのなかでの論争も、製作者側から「くっだらねー」って一蹴された感じ。

J.J.は、新しい解釈で人気シリーズにフックをかけるのが得意。リブートの方向性を上手く築いている。土台ができれば、後続していくのはやりやすいもの。このシリーズ最新作『スター・トレック BEYOND』は、J.J.こそは演出していないが、ポップなノリはさらにパワーアップして継承している。今回は、もうオリジナルシリーズの硬派な感じは、すっかり薄らいでしまった。これは好みが分かれそう。

気になったのは、70〜80年代の日本のSFアニメのオマージュが多かったこと。古い宇宙船が大地を割って浮上したり、スペースコロニー内でのバトルがあったり、歌が武器になったりと、どこかで観たようなイマジネーションの連続。パブリック・エナミーなんて、久しぶりに聴いたぞ! これはSFと言うよりは、サブカル・ジェットコースタームービーといったところ。最近、宇宙空間でナツメロかけるのが流行りみたいね。

今回はとくにSF作品というより、エンターテイメント色が強かった。サブカル好きなオタク監督が、自分の影響受けたものを詰め込んだ感がある。『スター・トレック』であって『スター・トレック』でないような。ただの映画好き(というか映画オタク)が映画を作ると、世界観が偏ってつまらなくなりがちなもの。果たしてこのシリーズはどうなっていくことやら。

初代スポックを演じたレナード・ニモイが亡くなった。新シリーズでもカメオ出演していた。このシリーズのスポックは、未来の自分の死を知ることになる。これはかなりSF的。

そういえばこのシリーズが始まるとき、J.J.は「三部作になるだろう」とか言っていたような? これだと今後、いっくらでも続きが作れそうだなぁ。この『BEYOND』も評判が良ければ続編が作られるだろうし、人気がなければ、このままフェイドアウトしてしまうのかしら? でもやっぱり『スター・トレック』は、延々続いていくのが、いちばん『スター・トレック』らしいのかも。

殺伐とした世の中だからこそ、せめて映画くらいは能天気で軽いタッチのものが観たくなってしまう。『スター・トレック』も時代に合わせて変化したのだろう。

関連記事

『ヴァチカンのエクソシスト』 悪魔は陽キャがお嫌い

SNSで評判だった『ヴァチカンのエクソシスト』を観た。自分は怖がりなので、ホラー映画が大の苦

記事を読む

no image

デート映画に自分の趣味だけではダメよ!!『サンダーバード』

  なんでも『サンダーバード』が50周年記念で、新テレビシリーズが始まったとか。日本

記事を読む

no image

『くまのプーさん』ハチミツジャンキーとピンクの象

  8月3日はハチミツで、『ハチミツの日』。『くまのプーさん』がフィーチャーされるの

記事を読む

『バンカー・パレス・ホテル』 ホントは似てる?日仏文化

ダメよ~、ダメダメ。 日本エレキテル連合という 女性二人の芸人さんがいます。 白塗

記事を読む

no image

『ソーシャル・ネットワーク』ガキのケンカにカネが絡むと

  ご存知、巨大SNS・Facebookの創始者マーク・ザッカーバーグの自伝映画。

記事を読む

『ベイビー・ドライバー』 古さと新しさと遊び心

ミュージカル版アクション映画と言われた『ベイビー・ドライバー』。観た人誰もがべた褒めどころか

記事を読む

『勝手にふるえてろ』平成最後の腐女子のすゝめ

自分はすっかり今の日本映画を観なくなってしまった。べつに洋画でなければ映画ではないとスカして

記事を読む

『銀河鉄道の夜』デザインセンスは笑いのセンス

自分の子どもたちには、ある程度児童文学の常識的な知識は持っていて欲しい。マンガばかり読んでい

記事を読む

『インクレディブル・ファミリー』ウェルメイドのネクスト・ステージへ

ピクサー作品にハズレは少ない。新作が出てくるたび、「また面白いんだろうな〜」と期待のハードル

記事を読む

no image

『スターウォーズ/フォースの覚醒』語らざるべき新女性冒険譚

  I have a goood feeling about this!! や

記事を読む

『世にも怪奇な物語』 怪奇現象と幻覚

『世にも怪奇な物語』と聞くと、フジテレビで不定期に放送している

『大長編 タローマン 万博大爆発』 脳がバグる本気の厨二病悪夢

『タローマン』の映画を観に行ってしまった。そもそも『タローマン

『cocoon』 くだらなくてかわいくてきれいなもの

自分は電子音楽が好き。最近では牛尾憲輔さんの音楽をよく聴いてい

『僕らの世界が交わるまで』 自分の正しいは誰のもの

SNSで話題になっていた『僕らの世界が交わるまで』。ハートウォ

『アフリカン・カンフー・ナチス』 世界を股にかけた厨二病

2025年の今年は第二次世界大戦から終戦80周年で節目の年。そ

→もっと見る

PAGE TOP ↑