*

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』顛落の悲劇。自業自得か殉教者か?

公開日: : 最終更新日:2019/06/15 映画:タ行, 音楽

 

問題作すぎて新作『ニンフォマニアック』の
日本公開も危ぶまれながらもうじき公開せまる
デンマーク出身ラース・フォン・トリアー監督の
カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞作。

アイスランドの歌手ビョークを主演とした
ミュージカル風映画。

物語はタイトル通り絶望的に暗く、
主人公も視力を失っていく。

ラース・フォン・トリアー作品では
無知な女性がどんどん堕ちて行く話が多くあります。
本作を含む「黄金の心」三部作の
『奇跡の海』もそれにあたります。

黄金の心というくらいですから、
殉教に近い尊いものとして扱っているのでしょう。

彼の作品に登場する
不幸にまっすぐ向かって行く女性像に
自分はいつもイライラしまくっているんですね。

きっとトリアー監督と同じ宗教的な
バックボーンがあれば、
もしくは理解できるのかもしれませんが、
日本人の自分にはムカつく
ダメ人間の姿に見えてしまいます。

自分から不幸に飛び込んで行く主人公なんてイヤ。

この不幸まみれの主人公。
現実逃避の心象風景でミュージカルシーンが
挿入されるのです。

ミュージカルシーンは彩り豊かで、
そこでは主人公はみんなに祝福されている。

ミュージカルシーンは必見です。

演出では100台のカメラを据え置き、
ミュージカルの臨場感を伝えています。

逆に不幸な日常の場面では、
手持ちカメラで撮影されたドキュメンタリータッチ。

この実験的な演出は、トリアーの特徴。
ちゃんとした効果を計算された
実験演出はとても興味深いです。

トリアー監督は鬼監督としても有名。
ビョークを精神的に追い込んで、
彼女が撮影を放棄して失踪してしまうなんて
ハプニングもあったそうです。

とてもとても凹む映画だし、
トリアーもビョークも実際会ったら
とてもめんどくさそうな人たちだけれど、
なんだか注目してしまう。

これがスター性というかカリスマ性と
いうものなんでしょうね。

関連記事

no image

『アトミック・ブロンド』時代の転機をどう乗り越えるか

シャーリーズ・セロン主演のスパイ・アクション映画『アトミック・ブロンド』。映画の舞台は東西ベルリンの

記事を読む

『ジョーズ』 刷り込みでないと言ってくれ!

平日の昼間に放送しているテレビ東京の『午後のロードショー』は、いつも気になっていた。80年代

記事を読む

『タリーと私の秘密の時間』 幸福という名の地獄

ジェイソン・ライトマン監督の作品のテーマは、いつもグッとくる。自分と同年代の監督さんというこ

記事を読む

『パラサイト 半地下の家族』 国境を越えた多様性韓流エンタメ

ここのところの韓流エンターテイメントのパワーがすごい。音楽ではBTSが、アメリカのビルボード

記事を読む

no image

部外者が描いたからこそ作品になれた『リトル・ブッダ』

  4月8日は花祭りの日。 ブッダが生まれた日としてお祝いする日だそうで。

記事を読む

『グレイテスト・ショーマン』 奴らは獣と共に迫り来る!

映画『グレイテスト・ショーマン』の予告編を初めて観たとき、自分は真っ先に「ケッ!」となった。

記事を読む

『めぐり逢えたら』男脳女脳ってあるの?

1993年のアメリカ映画『めぐり逢えたら』。実は自分は今まで観たことがなかった。うちの奥さん

記事を読む

『コーダ あいのうた』 諦めることへの最終章

SNSで評判の良かった映画『コーダ』を観た。原題の『CODA』は、音楽用語の最終楽章の意味にもあ

記事を読む

『東京卍リベンジャーズ』 天才の生い立ちと取り巻く社会

子どもたちの間で人気沸騰中の『東京卍リベンジャーズ』、通称『東リベ』。面白いと評判。でもヤン

記事を読む

『君の名前で僕を呼んで』 知性はやさしさにあらわれる

SF超大作『DUNE』の公開も間近なティモシー・シャラメの出世作『君の名前で僕を呼んで』。イ

記事を読む

『アメリカン・フィクション』 高尚に生きたいだけなのに

日本では劇場公開されず、いきなりアマプラ配信となった『アメリカ

『不適切にもほどがある!』 断罪しちゃダメですか?

クドカンこと宮藤官九郎さん脚本によるドラマ『不適切にもほどがあ

『デューン 砂の惑星 PART2』 お山の大将になりたい!

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ティモシー・シャラメ主演の『デューン

『マーベルズ』 エンタメ映画のこれから

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の最新作『マーベ

『髪結いの亭主』 夢の時間、行間の現実

映画『髪結いの亭主』が日本で公開されたのは1991年。渋谷の道

→もっと見る

PAGE TOP ↑