『風立ちぬ』 憂いに沈んだ未来予想図
映画『風立ちぬ』、
Blu-rayになったので観直しました。
この映画、家族には不評です。
小さな子どもには難しいらしく、
騒いでいるか寝てしまいます。
妻は最初から観たくないと言っております。
震災が起こって、戦争に向かっていき、
奥さん病気……。明るい要素が何も無いと。
戦争がテーマなので、
なんらかのプロパガンダは絡んでいるでしょう。
それも警戒感を与えるのでしょう。
昨年は本作と『永遠の0』という、
2本の零戦映画が公開され、どちらもヒットしました。
右側と左側の作家から、バランス良く出てきたと思います。
この『風立ちぬ』、
良い映画だとは思いますが、
如何せん、今迄の宮崎駿監督作品の
爽快感は期待できないのです。
最初から大人向けに作っているし、
戦争に取り込まれていく
ひとりの天才の姿を描いた作品だからです。
大きな時代の流れの中では、
個はあまりに小さく無力。
ワーカホリックの男の姿は、
当時のステレオタイプなのでしょうが、
仕事中心になると当然家庭は崩壊していきます。
妻の結核という病気もその象徴でしょう。
これが引退作と発表した宮崎監督。
過去を描きながらも、これからの未来を予兆した本作。
監督が描いたこの国の未来はあまりに暗く、
絶望的なものとなっております。
最終作にしては憂い過ぎではと、
観賞後不安にすらなります。
これが宮崎監督の最後のメッセージなんですね。
ちなみにこの作品を発表後、
アニメ業界の古株の方々から
「宮崎バッシング」が多発したそうです。
宮崎監督はいい人で業界でも有名。
悪口を言いづらい人らしいのです。
どうやら、大人向け作品と子ども向け作品、
どちらも成功した人は稀なので、
やっかみが業界に流れたのでは?と解釈します。
作品で成功すると、同業者から敵を作ってしまうのですね。
まったくもって嫉妬は恐ろしい。
関連記事
-
『桐島、部活やめるってよ』スクールカーストの最下層にいたあの頃の自分
原作小説と映画化、 映画公開後もものすごく話題になり、 日本アカデミー賞を総
-
『インサイド・ヘッド』むずかしいことをゆかいに!!
ピクサーの2015年作品『インサイド・ヘッド』。ものすごい脚本だな〜、と感心してしまう映画。
-
『作家主義』の是非はあまり関係ないかも
NHKでやっていたディズニーの 舞台裏を描いたドキュメンタリー『魔法の映画はこ
-
『王と鳥』パクリじゃなくてインスパイア
先日テレビで放送された 『ルパン三世・カリオストロの城』(以下『カリ城』)、
-
『鎌倉殿の13人』 偉い人には近づくな!
NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が面白い。以前の三谷幸喜さん脚本の大河ドラマ『真田丸』は、
-
『ゴーストバスターズ アフターライフ』 天才の顛末、天才の未来
コロナ禍真っ只中に『ゴーストバスターズ』シリーズの最新作『アフターライフ』が公開された。ネッ
-
『さよなら銀河鉄道999』 見込みのある若者と後押しする大人
自分は若い時から年上が好きだった。もちろん軽蔑すべき人もいたけれど、自分の人生に大きく影響を
-
『華氏911』アメリカは日本が進む反面教師?
世界のパワーバランスが崩れ始めている。 平和ボケしている日本人にも とうとう
-
『総員玉砕せよ!』と現代社会
夏になると毎年戦争と平和について考えてしまう。いま世の中ではキナくさいニュースば
-
『風立ちぬ』 招かざる未来に備えて
なんとも不安な気分にさせる映画です。 悪夢から覚めて、夢の内容は忘れても、 ただただ不安