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『スパイダーマン ホームカミング』ハイテク・スパイディは企業を超えて

公開日: : 最終更新日:2019/06/11 映画:サ行

 スパイダーマンがマーベル・シネマティック・ユニバースに本格的に参戦した単独作『スパイダーマン ホームカミング』。スパイダーマンの映画化権はすっかりディズニーに移籍したものと思いきや、映画はいつものスパイダーマンシリーズと同じコロンビア映画のロゴマークから始まる。『スパイダーマン ホームカミング』は、ソニー・ピクチャーズの新作として、ディズニー・マーベルの『マーベル・シネマティック・ユニバース』の世界に融合している。

マーベル作品は『X-MEN』シリーズのFOX映画もあるし、『スパイダーマン』はソニー・ピクチャーズの作品と、あちこちの配給会社に散らばっている。作風もさまざま。

自分はトビー・マクガイア主演&サム・ライミ監督版の『スパイダーマン』3部作が大好き。だからすぐにリブートされた『アメイジング・スパイダーマン』はどうもノレずにいた。当初『アメイジング・スパイダーマン』は4分作の構想があったような? キャストはアンドリュー・ガーフィールドとエマ・ストーンと、前シリーズより見栄えが良くなり、コメディ要素を封印したシリアスな作風になった。

『X-MEN』の第1作目が公開された頃はアメコミのリアル演出が新鮮だった。ヒーローものなのに、文芸作品のような重厚感。オタク心理を突いてきた。でも時代は変わり、世界中がキナ臭い暗いニュースばかりになってききて、観客はエンターテイメントでわざわざ暗い作品を観たいと思わなくなったのだろう。『アメイジング・スパイダーマン』はシリーズ未完のまま終了となった。

本来スーパーヒーローなんてバカバカしいもの。明るく軽快に展開していったマーベル・シネマティック・ユニバースが成功したのもうなずける。でも、いくらエンターテイメント作品だからといって、子どもだましでは観客は興醒めする。キャラクターにはそれなりにリアリティがなければいけない。スーパーヒーローが悲しげなオヤジばかりなのもマーベル・シネマティック・ユニバースの魅力だ。

そこに若いスパイダーマンが入って来る! 今度のスパイディは、アイアンマンにもらったスーツを着てるのでハイテク仕様だ。スパイディ少年は、アイアンマンに認めてもらいたいがためにいつもムチャをする。スパイディがピンチに陥って、アイアンマンに助けてもらいたいと思わせる。でもこの映画の主人公はスパイダーマン。自分で乗り越えてもらわなければ、カタルシスがなくなっちゃう。絶妙なさじ加減。

新スパイダーマンを演じるトム・ホランドは成人しているけど、違和感なく高校生にみえる。大人が学生を演じるのはよくあるが、この映画の学生たちはみな本物の高校生にみえる。そこにアイアンマンことトニー・スタークが絡んでくると、師弟どころか親子にみえてくる。アイアンマンが登場してはや10年。トニー・スターク=ロバート・ダウニー・Jr.もすっかり歳をとった。

敵のバルチャー役はマイケル・キートン。かつてのバットマンは、その役に対するリベンジみたいなキャラクターばかり演じてる。

まどろっこしい設定の説明はほどよく割愛。いままでのシリーズを観てきた観客にはちょうどいいスピードだが、果たして今回初めてスパイダーマンやマーベル作品に触れた人は、どこまで設定を理解できたのだろう?

過去作品の成功と失敗をリサーチして、こんなスパイダーマンが観たかったと思わせる作品になっている。ソニー・ピクチャーズの作品だとか、ディズニーの作品だとか、正直観客にはどうでもいい。この両社の作風を踏襲して違和感のない新作にしたのは革新的。きっと両会社の偉い人たちが、何度も打ち合わせしてここまできたのだろう。

今ノリにノってるディズニー。単純に考えると、ソニー・ピクチャーズにスパイダーマンの権利を残したままだと、ディズニーにはあまりメリットはなさそう。それでもスパイダーマンをアベンジャーズに入れた方がいいとなったのか? 結果としてスパイディのアベンジャーズ参戦はワクワクするものとなった。

日本の映画製作は、ほとんどが製作委員会制。何社かの企業が集まり、一社が莫大な出資をすることなく、持ち寄られた資金で映画が製作される。企業にとっては、たとえ作品が失敗してもローリスクで済む。

ハリウッドでは常に新しい企画を探していて、そのレーダーは世界中に広げている。当然日本でも面白そうな企画があれば、ぜひ映画化させてくださいと話を持ちかけてくる。アメリカのスタイルは、作品企画そのものや、商品化などのすべての権利を丸ごと買い取る。日本ではひとつの作品に、多くの権利がある。いざ作品の商談になると、誰がどれだけもらうかで揉めてしまう。そもそもローリスクなのでハイリターンは難しい。そんなこんなで話がもつれている間に、その商談自体が流れてしまうこともある。

カネの話をしてしまうと、クリエイティビティが失われてしまう。でもカネがなければ作品はつくれないし、それに携わる人が集まらない。しかも観客はクリエイティブなものに感動し、カネを払う。このなんとも言えない流れ。

カネは欲しいが、とりあえずそれは言わない。失敗を恐れずに、責任を持って立ち向かう革命家みたいな出資者が登場すれば、この問題はすぐに打開できそう。誰もやってないから競合はいない。すべての責任はオレが持つって言える勇敢な気骨あるギャンブラーの登場。それができないからこそ現実は厳しい。

とにかく『スパイダーマン ホームカミング』は、いろんな人たちが会議に会議を重ね、煮詰めて煮詰めて、企業間ウィンウィンにして、醸成しきった状態で観客に提供されたような気がする。

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