*

『猿の惑星:聖戦記』SF映画というより戦争映画のパッチワーク

公開日: : 最終更新日:2019/06/11 映画:サ行,

地味に展開しているリブート版『猿の惑星』。『猿の惑星:聖戦記』はそのシリーズ完結編で、オリジナル第1作に繋がるという。

自分は社会風刺のある地味系SFが大好物なので、これは無視することはできない。このシリーズ、内容も地味だけど、日本での興行もなかなか地味。三部作構想は最初から言われていたが、途中で未完結のまま消滅してしまうのでは?と心配していた。この完結編も結構な制作費がかかってる。よくまぁこのスケールで最後まで辿り着けたと、いちファンとしては肩をなでおろす。

リブートシリーズ完結編『猿の惑星:聖戦記』は、SF映画というよりは、60〜80年代の戦争映画のパッチワーク映画だった。『猿の惑星』シリーズの特徴だった社会風刺色はすっかり薄まり、シンプルな戦争エンターテイメント映画になった。映画鑑賞後は『猿の惑星』1作目から観直すより、過去の有名戦争映画を観直したくなる。

『猿の惑星:聖戦記』は、わかりやすいプロットと豪華な作りで、エンターテイメントとしてはレベルが高い。観客に寄り添って作られている贅沢な映画。

でもなんでだろう? なんだか物足りない。

もともとSFは社会風刺のエンターテイメント。社会に対する警鐘を鳴らせて、シビアなテーマを扱っている。『猿の惑星』も人種問題や環境問題、ハイパーテクノロジーの顛末を予想した悲観的な未来への警告が描かれている。だからこそ見応えがあった。どんなに悲劇的な展開でも、人間が猿を演じているというバカバカしさで笑い飛ばすこともできる。実録ものとは違った救い。

最近の『キングコング』リブート版も、『地獄の黙示録』のオマージュ映画だった。今回の『猿の惑星:聖戦記』も同じ映画からの引用。なんだか猿の映画は『地獄の黙示録』と縁があるらしい。

今、世界中にキナ臭い雰囲気が漂っている。こんな時代に、戦争を扱ったSF映画で社会風刺をしないのはもったいない。過去の戦争映画に懐古趣味でのほほんと浸るのはちょっと時代錯誤。最悪の現実をシミュレーションするくらいの問題作もつくれたろうに。なんともガッツのない。

『猿の惑星』リブート第1作『創世記』は、風刺が効いたSF映画だった。今回の完結編は完成度こそは高いけど、鑑賞後すぐ忘れてしまいそうなブロックバスタームービー。まあそれはそれで面白かったけど。はぐらからされたように感じるのは、こっちが勝手に思い描いていたものと違っただけのこと。

オタクに走りすぎると、世の中が見えなくなる。映画のネタは、過去の映画の中よりも、今足元にある現実の中にこそ山ほどある。時代の流れが読めないと、名作もつくれない。オマージュもやり過ぎると、ただの同人作品。楽屋落ちじゃあちと寂しい。地味でも上質だった『猿の惑星』は、広げた大きな風呂敷を、やはり地味に静かに畳んでくれた。

さて、それでは久しぶりに『大脱走』やら『戦場にかける橋』でも観直そうかしら。おっとそれもはぐらかしの現実逃避か。

関連記事

『鬼滅の刃』親公認!道徳的な残虐マンガ‼︎

いま、巷の小学生の間で流行っているメディアミックス作品『鬼滅の刃』。我が家では年頃の子どもが

記事を読む

『ヴァチカンのエクソシスト』 悪魔は陽キャがお嫌い

SNSで評判だった『ヴァチカンのエクソシスト』を観た。自分は怖がりなので、ホラー映画が大の苦

記事を読む

『窓ぎわのトットちゃん』 他を思うとき自由になれる

黒柳徹子さんの自伝小説『窓ぎわのトットちゃん』がアニメ化されると聞いたとき、自分には地雷臭し

記事を読む

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』 問題を乗り越えるテクニック

映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』は、日本公開当時に劇場で観た。アメリカの91

記事を読む

no image

発信者がウソをついてたら?『告白』

  中島哲也監督作品、湊かなえ著原作『告白』。この映画の演出のセンスの良さにシビレま

記事を読む

『スター・ウォーズ/スカイ・ウォーカーの夜明け』映画の終焉と未来

『スターウォーズ』が終わってしまった! シリーズ第1作が公開されたのは1977年。小学

記事を読む

no image

『それでもボクはやってない』隠そうとしてもでてくるのが個性

  満員電車で痴漢と疑われた男性が、駅のホームから飛び降りて逃走するというニュースが

記事を読む

no image

デート映画に自分の趣味だけではダメよ!!『サンダーバード』

  なんでも『サンダーバード』が50周年記念で、新テレビシリーズが始まったとか。日本

記事を読む

『関心領域』 怪物たちの宴、見ない聞かない絶対言わない

昨年のアカデミー賞の外国語映画部門で、国際長編映画優秀賞を獲った映画『関心領域』。日本が舞台

記事を読む

no image

王道、いや黄金の道『荒木飛呂彦の漫画術』

  荒木飛呂彦さんと言えば『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの漫画家さん。自分は少年ジ

記事を読む

『ナミビアの砂漠』 生きづらさ観察記

日曜日の朝にフジテレビで放送している番組『ボクらの時代』に俳優

『サタンタンゴ』 観客もそそのかす商業芸術の実験

今年2025年のノーベル文化賞をクラスナホルカイ・ラースローが

『教皇選挙』 わけがわからなくなってわかるもの

映画『教皇選挙』が日本でもヒットしていると、この映画が公開時に

『たかが世界の終わり』 さらに新しい恐るべき子ども

グザヴィエ・ドラン監督の名前は、よくクリエーターの中で名前が出

『動くな、死ね、甦れ!』 過去の自分と旅をする

ずっと知り合いから勧められていたロシア映画『動くな、死ね、甦れ

→もっと見る

PAGE TOP ↑