*

夢は必ず叶う!!『THE WINDS OF GOD』

公開日: : 最終更新日:2015/11/08 メディア, 映画:ア行,

スクリーンショット 2015-05-30 20.58.25

俳優の今井雅之さんが5月28日に亡くなりました。

ご自身の作演出主演のライフワークでもある『THE WINDS OF GOD』の日本講演中ということで、闘病のため降板会見のすっかり痩せて人相が変わってしまった彼の姿に、日本中が衝撃を受けました。末期がんということで、ご自身の死を悟った上での会見でした。千秋楽が今日、5月31日の沖縄公演だったらしいので、この日まではなんとか見届けたいと思っていたことでしょう。ご本人の心中を察すると、さぞ無念だったと思います。でも視点を変えれば、大好きな仕事をしながら殉じていけるのは、ある意味幸せな最期なのかもしれません。

『THE WINDS OF GOD』は現代のお笑い芸人がタイムスリップして、神風特攻隊として生きていくことになる話です。今井さんは役者になる前は自衛官だったとのことで、その経験がこの物語のベースに流れているのでしょう。この作品は海外でも評価され、英語版で公演したり、映画化もされたりと、ずっと長い間愛された作品です。きっと海外では神風特攻隊の存在を多くの人にひろめたでしょう。後に類似作がたくさん作られたのも、かなりインパクトがあった作品だったのでしょう。

今井さんは神風特攻隊を武士道に重ねた発言もしたりしていたので、保守的な方なのかと思っておりました。でもはっきりと本人が「戦争反対」と言っておりました。そこから思想的に戦争という題材を選んでいる訳ではないのがわかります。今国会で問われている、日本が戦争のできる国にしようとする話し合いには、さぞかし今井さんも憂いていたことでしょう。今回の講演の千秋楽の地に沖縄を選んでいることにも「反戦」という大きなテーマ性を感じます。本編のテーマは「生きろ」そのもの。その題材むなしく、ご本人が亡くなってしまった訳ですが、今井さんが身を以て我々にみせた姿というものは、大変意義深いものだったと思います。

己の死が近いことを知りながら、公の場に姿を現す勇気は尊敬に値します。そして死を覚悟しているからこそ、残りの寿命を「生きる」姿をあからさまにしてくれたこと。ともすると生ける屍のようになってしっている現代人に、警笛を鳴らしてくれているような行動でした。

病でやせ細った俳優・今井雅之の表情は知的で、今までの無骨な体育会系のアニキのようないでたちとは違っていました。降板発表の時の彼の姿からは、深い知性を感じます。晩年の姿の方が自分はとても好きです。

人は死ぬ覚悟を決めたとき、初めて生きることができるのかもしれません。「夢は必ず叶う」と今井さんは生前後輩達に語っていたそうです。自分の作品が日本国内だけではなく世界にも認められたということ。アツい男がアツく夢を語っていたのだと想像できます。それに今回こそは夢半ばで亡くなってしまったように一見感じますが、この壮絶な死に様を晒して下さったことによって、多くの人に「生きる」意味を感じさせてくれたのだと思います。今井雅之さんは亡くなってしまったけれど、彼の作品や彼の最期の行動は、伝説として語り継がれることでしょう。そうなるとその魂は永遠になる。彼の夢は彼の死後も生き続けるのです。

今井雅之さんのご冥福を心よりお祈り致します。そしてお疲れさまでした。

関連記事

『かもめ食堂』クオリティ・オブ・ライフがファンタジーにならないために

2006年の日本映画で荻上直子監督作品『かもめ食堂』は、一時閉館する前の恵比寿ガーデンシネマ

記事を読む

『精霊の守り人』メディアが混ざり合う未来

『NHK放送90年 大河ファンタジー』と冠がついたドラマ『精霊の守り人』。原作は上橋菜穂子氏

記事を読む

『ベイマックス』を起爆剤に日本も!! その1

エンタメ産業はアメリカが世界一。 あまり知られていないが、日本は第二位。 この冬休み

記事を読む

負け戦には精神論が常『ヒトラー 〜最期の12日間〜』

「欲しがりません勝つまでは」 戦後70年たった今となっては、こんな我慢ばかりを要求する言葉

記事を読む

『帝都物語』混沌とした世にヤツは来る!!

9月1日といえば防災の日。1923年の同日に関東大震災で、東京でもたいへんな被害があったこと

記事を読む

『日の名残り』自分で考えないことの悲しみとおかしみ

『日の名残り』の著者カズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞した。最近、この映画版の話をしてい

記事を読む

『ベルサイユのばら』ロックスターとしての自覚

©︎池田理代子プロダクション[/caption] 「あ〜い〜、それは〜つよく〜」 自分が幼

記事を読む

『一九八四年』大事なことはおばちゃんに聞け!

https://ja.wikipedia.org/[/caption] 『一九八四年』はジョ

記事を読む

『アメイジング・スパイダーマン』早すぎるリブートシリーズ

『アメイジング・スパイダーマン2』 ご覧になった方も多いと思います。 みなさんは『ア

記事を読む

『嫌われ松子の一生』道から逸れると人生終わり?

中島哲也監督の名作である。映画公開当時、とかく中島監督と主演の中谷美紀さんとが喧嘩しながら作

記事を読む

PAGE TOP ↑