『ダンサー・イン・ザ・ダーク』顛落の悲劇。自業自得か殉教者か?
問題作すぎて新作『ニンフォマニアック』の
日本公開も危ぶまれながらもうじき公開せまる
デンマーク出身ラース・フォン・トリアー監督の
カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞作。
アイスランドの歌手ビョークを主演とした
ミュージカル風映画。
物語はタイトル通り絶望的に暗く、
主人公も視力を失っていく。
ラース・フォン・トリアー作品では
無知な女性がどんどん堕ちて行く話が多くあります。
本作を含む「黄金の心」三部作の
『奇跡の海』もそれにあたります。
黄金の心というくらいですから、
殉教に近い尊いものとして扱っているのでしょう。
彼の作品に登場する
不幸にまっすぐ向かって行く女性像に
自分はいつもイライラしまくっているんですね。
きっとトリアー監督と同じ宗教的な
バックボーンがあれば、
もしくは理解できるのかもしれませんが、
日本人の自分にはムカつく
ダメ人間の姿に見えてしまいます。
自分から不幸に飛び込んで行く主人公なんてイヤ。
この不幸まみれの主人公。
現実逃避の心象風景でミュージカルシーンが
挿入されるのです。
ミュージカルシーンは彩り豊かで、
そこでは主人公はみんなに祝福されている。
ミュージカルシーンは必見です。
演出では100台のカメラを据え置き、
ミュージカルの臨場感を伝えています。
逆に不幸な日常の場面では、
手持ちカメラで撮影されたドキュメンタリータッチ。
この実験的な演出は、トリアーの特徴。
ちゃんとした効果を計算された
実験演出はとても興味深いです。
トリアー監督は鬼監督としても有名。
ビョークを精神的に追い込んで、
彼女が撮影を放棄して失踪してしまうなんて
ハプニングもあったそうです。
とてもとても凹む映画だし、
トリアーもビョークも実際会ったら
とてもめんどくさそうな人たちだけれど、
なんだか注目してしまう。
これがスター性というかカリスマ性と
いうものなんでしょうね。
関連記事
-
-
『メダリスト』 障害と才能と
映像配信のサブスクで何度も勧めてくる萌えアニメの作品がある。自分は萌えアニメが苦手なので、絶
-
-
アーティストは「神」じゃない。あなたと同じ「人間」。
ちょっとした現代の「偶像崇拝」について。 と言っても宗教の話ではありません。
-
-
『スター・トレック BEYOND』すっかりポップになったリブートシリーズ
オリジナルの『スター・トレック』映画版をやっていた頃、自分はまだ小学生。「なんだか単純そうな話なのに
-
-
『推しの子』 キレイな嘘と地獄な現実
アニメ『推しの子』が2023年の春期のアニメで話題になっいるのは知っていた。我が子たちの学校
-
-
『モアナと伝説の海』 ディズニーは民族も性別も超えて
ここ数年のディズニーアニメはノリに乗っている。公開する新作がどれも傑作で、興行的にも世界中で
-
-
『ドクター・ストレンジ』アメコミとユダヤ人
流転の民族ユダヤ人は、どこの社会に行っても成功していくらしい。商売上手だったり、仕事ができるのはもち
-
-
『ケナは韓国が嫌いで』 幸せの青い鳥はどこ?
日本と韓国は似ているところが多い。反目しているような印象は、歴史とか政治とか、それに便乗した
-
-
『うる星やつら 完結編』 非モテ男のとほほな詭弁
2022年の元日に『うる星やつら』のアニメのリメイク版制作の発表があった。主人公のラムが鬼族
-
-
『時をかける少女』 永遠に続く人生の忘れ物
細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』が公開されるにあたり、彼の出世作である『時をかける少女
-
-
『Ryuichi Sakamoto | Playing the Orchestra 2014』 坂本龍一、アーティストがコンテンツになるとき
今年の正月は坂本龍一ざんまいだった。1月2日には、そのとき東京都現代美術館で開催されていた『
