*

『汚れた血』 カノジョをキレイに撮る映画

公開日: : 最終更新日:2021/09/13 映画:ヤ行, 音楽

 

『あの人は今?』的存在になってしまったレオス・カラックス監督。2年前に新作『ホーリー・モーターズ』で復帰していたのですね!?

この『汚れた血』。1990年頃、友人にビデオでみせてもらって、ぶっ飛んだ記憶があります。何だかわからないけど、絵が好き。それだけでした。

神経質な画面構成や、さまざまなジャンルの音楽の起用。SFなんだか恋愛ものなんだか、フィルムノワールなんだか、ジャンルもチャンポン。静かな夜に女の子と部屋でチチクリ合ってたら、急にデビッド・ボウイがかかって夜のパリを失踪する!! ワケわかんない演出だけど、カッコいい!! とにかく出演している女優さんがみんなキレイなのね。

当時カラックス監督と恋人関係だったジュリエット・ビノシュ。自分のカノジョをキレイに撮りたい。それだけで映画になってしまったのでしょう。この映画を制作したときカラックスは26歳。フランスではリュック・ベッソンとジャン=ジャック・ベネックスとで『恐るべき子ども』とか『ネオ・ヌーベルバーグ』とか言われて、もう永遠の子どもと言ったところ。カラックス自身も「自分は30歳までに死ぬ」と言っていたし、それ以降の自分の姿がイメージできなかったのでしょう。大人になるシフトチェンジが自分の中で出来なかったのでしょうね。だからこそこの『汚れた血』を含むアレックス三部作以降は映画も撮れず、たまに新作(『ポーラX』や『TOKYO!』)を出してもあまりパッとしなかったのでしょう。

カラックスはインタビューの映像からみてもイヤなヤツだってのは一目瞭然。才能がなければ、ただの嫌われ者にしかならない。そんな生きるのが下手な彼が描く、生きるのが下手な主人公に共感が出来るのです。

こんな永遠の子どものカラックス。どんなにゴタクをならべて小難しいこと言ってても、結局女の子が好きで、女の子に甘えちゃってるところが可愛くおちゃめにみえるのでしょう。

ただ映画で観る分にはいいのだけれど、本人の人生は大変だったろうな。やっぱり年相応に程よく大人になるってのも生きていく上で大切なことなのだと思う。人生が生きやすくなるから。こういう自分も若かりし時は30歳を過ぎた自分の姿なんてイメージできなかった。それでもなんとか年相応になれるものなんですね。

関連記事

『アメリカン・ユートピア』 歩んできた道は間違いじゃなかった

トーキング・ヘッズのライブ映画『ストップ・メイキング・センス』を初めて観たのは、自分がまだ高

記事を読む

『たちあがる女』 ひとりの行動が世界を変えるか?

人から勧められた映画『たちあがる女』。中年女性が平原で微笑むキービジュアルは、どんな映画なの

記事を読む

『男はつらいよ お帰り 寅さん』 渡世ばかりが悪いのか

パンデミック直前の2019年12月に、シリーズ50周年50作目にあたる『男はつらいよ』の新作

記事を読む

no image

『DENKI GROOVE THE MOVIE?』トンガリ続けて四半世紀

  オフィス勤めしていた頃。PCに向かっている自分の周辺視野に、なにかイヤなものが入

記事を読む

『ボヘミアン・ラプソディ』 共感性と流行と

昨年はロックバンド・クイーンの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットが社会現象となった

記事を読む

no image

『きゃりーぱみゅぱみゅ』という国際現象

  泣く子も黙るきゃりーぱみゅぱみゅさん。 ウチの子も大好き。 先日発売され

記事を読む

no image

『湯殿山麓呪い村』即身仏、ホントになりたいの?

  先日テレビを観ていたら、湯殿山の即身仏の特集をしていた。即身仏というのは僧侶が死

記事を読む

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』映画監督がアイドルになるとき

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズの監督ジェームズ・ガンが、内定していたシリーズ

記事を読む

『沈黙 -サイレンス-』 閉じている世界にて

「♪ひとつ山越しゃホンダラホダラダホ〜イホイ」とは、クレイジー・キャッツの『ホンダラ行進曲』

記事を読む

『トップガン』カッコいいと思ってたけど?

「♪ハーイウェイ・トゥ・ザ・デンジャゾーン」風にのって歌が聴こえてくる。これは……、映画『ト

記事を読む

『関心領域』 怪物たちの宴、見ない聞かない絶対言わない

昨年のアカデミー賞の外国語映画部門で、国際長編映画優秀賞を獲っ

『Ryuichi Sakamoto | Playing the Orchestra 2014』 坂本龍一、アーティストがコンテンツになるとき

今年の正月は坂本龍一ざんまいだった。1月2日には、そのとき東京

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』 刷り込み世代との世代交代

今度の新作のガンダムは、『エヴァンゲリオン』のスタッフで制作さ

『ブラッシュアップライフ』 人生やり直すのめんどくさい

2025年1月から始まったバカリズムさん脚本のドラマ『ホットス

『枯れ葉』 無表情で生きていく

アキ・カウリスマキ監督の『枯れ葉』。この映画は日本公開されてだ

→もっと見る

PAGE TOP ↑