『ヴァンパイア』お耽美キワもの映画
映画「ヴァンパイア」録画で観ました。岩井俊二がカナダで撮った映画です。ものすごく暗かった。ヴァンパイアといっても、以前流行の吸血鬼ものと違って、一風変わった人殺しのお話です。
自殺願望の女の子から血液を抜き取って集める、自殺の手伝いをする殺人者の話です。『キワもの』と『美』の間。嘆美な世界。ハマる人は好きだろうけど、わからん人にはさっぱりのお耽美ちゃんな世界観。犯罪者が自分を正当化する時の哲学ってこういうことなのかもしれません。
殺人者の主人公は、被害者になる女の子たちに優しく接し、『性欲』ではなく『あこがれ』から殺人行為に進んで行くようにみえます。十代の男の子がアイドルにあこがれるように。自分は男だから男性として観ているんだけど、被害者になる女性側の観客はどう感じたんだろう? はたしてこんなふうに殺して欲しいの? マトモな精神状態の人が出て来ない、ビョーキだらけの映画。この映画は模倣犯を喚起するものなのか、それこそ日頃の鬱積をガス抜きするための潤滑剤なのか。かなり受け手の感性に委ねられる。この映画を観てウツっぽくなるのは否めない。健康的な作品ではないので、あまり話題にもならなかったのでしょう。暗すぎる映画は注目されにくい。世界的に暗い気分になっている現代では、とくに暗い映画は観たくない雰囲気がある。
岩井俊二はタッグを組んでいたカメラマンの篠田昇が亡くなって、ずっと新作を撮らずにいたが、今回は自分でカメラもやっている。撮影どころか、脚本・編集・音楽・製作と主要なところはすべて自分でこなしてる。映画は大勢の人間と創るものだと思うが、彼は殆どの作業を自分でこなしてしまう。だからこそ、どんどん閉じこもって行く印象を受ける。これはこれで説得力ある映画なんだけど、時代性からして、なにがしらの救いは欲しかったかな。
不思議な後味の映画でした。
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