『スターウォーズ/フォースの覚醒』語らざるべき新女性冒険譚
I have a goood feeling about this!!
やっとこさ『スターウォーズ』の新作『エピソードⅦ/フォースの覚醒』を観ることができた。この待ちに待ったシリーズ最新作。監督のJ・J・エイブラムスはじめ、多くの人がネット上でのネタバレを警戒していた。ネットでは『フォースブロック』なるネタバレ防止の拡張機能まで作られる次第。自分の周りでも公開3日間で観に行った方は多かったけれど、誰として内容に言及する人はいなかった。口のかたい、未見の人を思いやる心あるみんなに、フォースのご加護あれ! そう、この新作は未見の人に内容を語ってはいけない映画なのです。だから自分もネタバレはしないつもりですが、何も知りたくない方はここから先はご注意下さいませ。
『スターウォーズ/フォースの覚醒』は映画館によって上映方法が様々。3D上映だけではなく、IMAX、最新の4DXやら、『スターウォーズ』の生みの親・ルーカスが開発したイオンシネマ海老名のTHX、ドルビーアトモス、立川シネマシティでは独自の『極上爆音上映』なるものもあり、まったくもって目移りしてしまう。で、自分も『スターウォーズ』ならば特別興行で観たいと思い、ネット予約しようとした。確定ボタンを押す瞬間、請求額に愕然とした。先日親子三人で『妖怪ウォッチ』の映画を観た時の総額より、一人で観る『スターウォーズ』の方が高額なのだ!! 普段の映画の2〜3倍の入場料。さすがの特別興行の高騰ぶりに、確定ボタンのクリックの指が止まりました。ふとこの差額で、子ども達と楽しめることに使った方が意義深く思えてしまった。自分はプリクエール三部作(ep.Ⅰ〜Ⅲ)の時は徹夜して先行オールナイトを観た口。このシリーズに労力もカネも惜しまないくらい。でも当時は独身。今ではこの高額をポンと出すには勇気がいる。ということで2Dで鑑賞することにしました。それでも充分楽しめました。平日の昼間に行ったからか、2Dだったからか、空いててゆったり観れた。初日のお祭り騒ぎが嘘みたい。今まで特別興行で映画を観て、楽しめはしたけれど、やはり果たしてこの高額はどんなものかといつも疑問を感じていた。入場料、もう少し安くならんのかしら?
この最新作を観ると、クラシック三部作(ep.Ⅳ〜Ⅵ)をすぐ観直したくなる。けっしてプリクエール三部作じゃなくてね。プリクエール三部作は、当時不評だったけれど、自分はそれはそれで好き。プリクエールは悪が勝って終わる暗い話だし、群像劇で感情移入しずらいから不人気なのかも? 今回は主人公を絞って、個人の目線で物語が進んでいく、とても観やすい映画。
この『フォースの覚醒』は『スターウォーズ』の続編新作であるけれど、J・J・エイブラムス監督の新作でもある。JJ特有の、テンポのいいキャラクター紹介や、説明的な場面でもスルリと流れでみせてしまう演出テクニックは健在。前作のオマージュも交えながら新しい作品を作ろうとしてる「本気」を感じる。『スターウォーズ』の魅力は、敷居が低いこと。初めて観る人にも、手を広げて受け入れてくれる。この『フォースの覚醒』からはじめてシリーズに触れる観客にも優しくわかりやすいつくり。新しい観客は、興味がわけばその前のシリーズを観ていけばいい。JJは『スタートレック』のリブート作も監督しているが、これもオールドファンはもちろん納得できて、それでいて新参の観客も楽しめるような親切な工夫がホントに上手い。まったくもって手練の監督さんなのです。
今度の新三部作は、女の子が主人公。これって三十年以上前の第一作の時代では考えられなかったこと。こういったSFファンタジー冒険譚は、少年が主人公なのが鉄則だった。本来は男の子の世界。でも時代は変わり、いっけん華奢だけど強い女の子が、マスコット(ドロイドのBB8)と一緒に旅を進めていく。彼女がいく先々で、仲間がどんどん増えて、たくましくなっていく。RPGの楽しさ。これってジブリ作品の影響もあるだろうし、男ばかりのファンタジーは出尽くしたのかも。主人公のレイが登場した時の音楽が、ジョン・ウイリアムズなのに、心なし久石譲チックになったような気がした。男の世界で女の子が活躍するのは、男にとっては萌えポイントだし、女人禁制のSF映画に女性客を惹き入れる魅力にもなる。そうなると、ますます男の出番がなくなってくる。白人女性と黒人男性が主人公という、いままでのエンターテイメントではあまり使われない組み合わせ。『スターウォーズ』という、スタンダードアイコンを舞台にしながら、ジワジワ新しいことに踏み込んでいる制作者の意欲がニクい!! とにかく、はやく続きがみたくなる。さあ、次回作『エピソードⅧ』が公開されるまでに、自分は一体何回この『フォースの覚醒』を観直すのだろう……。
May the force be with US!!
関連記事
-
『インサイド・ヘッド』むずかしいことをゆかいに!!
ピクサーの2015年作品『インサイド・ヘッド』。ものすごい脚本だな〜、と感心してしまう映画。
-
『チェンソーマン』 サブカル永劫回帰で見えたもの
マンガ『チェンソーマン』は、映画好きにはグッとくる内容だとは以前から聞いていた。絵柄からして
-
部外者が描いたからこそ作品になれた『リトル・ブッダ』
4月8日は花祭りの日。 ブッダが生まれた日としてお祝いする日だそうで。
-
『Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022 +(プラス)』 推しは推せるときに推せ!
新宿に『東急歌舞伎町タワー』という新しい商業施設ができた。そこに東急系の
-
『TENET テネット』 テクノのライブみたいな映画。所謂メタドラえもん!
ストーリーはさっぱり理解できないんだけど、カッコいいからいい! クリストファー・ノーランの新
-
『るろうに剣心』マンガ原作というより、大河ドラマの続編
自分は実は『るろうに剣心』の マンガもアニメも未見。 でもこの映画を観たいと
-
『PERFECT DAYS』 俗世は捨てたはずなのに
ドイツの監督ヴィム・ヴェンダースが日本で撮った『PERFECT DAYS』。なんとなくこれは
-
『槇原敬之』自分ではダメだと思っていても……。
今年は槇原敬之さんのデビュー25周年ということ。自分が槇原敬之さんの存在を知った
-
ホントは怖い『墓場鬼太郎』
2010年のNHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』で 水木しげる氏の世界観も
-
キワドいコント番組『リトル・ブリテン』
『リトル・ブリテン』という イギリスのコメディ番組をご存知でしょうか?
- PREV
- 『映画 妖怪ウォッチ2』とその未来
- NEXT
- 『母と暮せば』Requiem to NAGASAKI