*

『映画 妖怪ウォッチ2』とその未来

公開日: : 最終更新日:2020/03/28 アニメ, 映画:ヤ行

映画版『妖怪ウォッチ』の第二弾『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』、ウチは親子で観に行きました。今年の正月映画の話題は『スターウォーズ』の一人勝ちのようでいて、なかなかどうして、自分が行った映画館では『妖怪ウォッチ』も当日券は夜まで完売でした。自分は『スターウォーズ』の大ファンなので、ホントは初日に徹夜してでも観たいところ。それをグッと抑えて、『スターウォーズ』に並ぶお客さん達を横目にみつつ、子どもの好み優先で『妖怪ウォッチ』の鑑賞。なんでも土日の興行入場者数は、『スターウォーズ』よりも『妖怪ウォッチ』の方に軍配が上がったとか。自分のようなスタンスの親世代が多かったのでは? ウチの3歳の息子は、今回が映画館デビュー! 本作が思い出の1本になることは間違いなし。

『妖怪ウォッチ』といえば、ゲーム制作会社のレベルファイブが作った、ゲームが原作のアニメ作品。『ドラえもん』や『ポケモン』の要素や、『ゆるキャラ』風のかわいいキャラクターデザインで、子ども達のハートをガッチリキャッチ!! でも親からすると、アニメ作品自体がゲームや関連商品の宣伝中心になっていたり、ギャグアニメのおちゃらけた表現で、生き物の死が描かれているので、倫理的に不謹慎な印象を感じていた。「人気があるから仕方ないか〜」と、あまり感心していなかった親御さんは自分だけではないはず。

でも今回の『妖怪ウォッチ』は、そのような引っかかるようなところはなく、親もほとんど手放しで楽しめる作品となっていた。娘に「パパ、泣いてたね」と指摘されたくらい。物語が、ちゃんと物語として描かれていました。これならパパも納得です!

『妖怪ウォッチ』もキャラクターが増えたため、1本の話にまとめてしまうと、主人公を絞らなければならなくなってしまうので、オムニバス形式にしたのでしょう。「あのキャラが活躍しなかった!」ということはない。しかも実はすべての話が最終話では繋がって、人気キャラが勢揃いするという『アベンジャーズ』的な展開に! 妖怪の世界の描写やら、妖怪の約束事の設定やらが、世界観の深みを増す。今までの『妖怪ウォッチ』作品より見応えがある。

『妖怪ウォッチ』は、当初はマイルドに描くことを主において、つらい現実の描写は避けていた。でもやはりファンタジーは現実と背中合わせ。観客は、関連商品のおもちゃにワクワクするのではなく、主人公達が困難に立ち向かう姿にワクワクする。ちなみにエンマ大王やぬらりひょんが、イケメンのカリスマ・サイコパスなキャラクターになっていて、予想外のデザインなのも興味深い。

『妖怪ウォッチ』に協賛する企業の多さに、当初は呆れていたが、今回の『スターウォーズ』の新作も同じようなこと。自分は『スターウォーズ』が好きなので、世の中には前作を観ていない人が案外多いのに驚いた。それでもキャラクター商品は売れている。作品は未見でも、商品が魅力的なら買ってしまう。とかく『妖怪ウォッチ』のような子ども向け作品は、どうしてもデザイン性は重視されず、キャラクターがプリントされていればいいというものが多い。しかし、なんのなんの、今回の『映画 妖怪ウォッチ2』の関連商品では、出来る限りかわいいものを、子ども達に提供しようと、若干デザイン性がアップしている。

『妖怪ウォッチ』も人気が不動となった今、鼻息荒く関連商品をつくったり、便乗商法をあおったりする時期は終わったのでしょう。これ以上この商法が激化すれば、限界もあるし、ファンの親から倦厭されてしまう。今度は落ち着いて、作品の内容自体を向上させていくのだろうと感じた。

映画の冒頭、『スナックワールド』という、CGの短編アニメが上映されました。なんでもCGアニメでテレビシリーズも予定しているとか。CGというと、すぐに世界進出を視野に入れているのだなと想像できる。今の世界のアニメ業界は、CG表現が主流。手描きの2Dアニメにこだわっているのは日本だけ。レベルファイブは『妖怪ウォッチ』の成功で、こういったCGアニメに挑戦しているのだろう。ピクサー映画のように、短編を本編上映前に流す。実験的なことをするのはとても楽しい。このユルい冒険活劇、世界の評価は如何に!? 少なくともウチの子たちには『スナックワールド』はすこぶる好評だった。

『スターウォーズ』はおあずけになったけど、今回の『妖怪ウォッチ』なら、パパも充分満足。ウチの子達も、「去年の『妖怪ウォッチ』の映画より、今年の方が面白かった」と言っています。子どもはちゃんとわかっているな〜。

 

関連記事

『この世界の片隅に』 逆境でも笑って生きていく勇気

小学生の頃、社会の日本近代史の授業で学校の先生が教えてくれた。「第二次大戦中は、今と教育が違

記事を読む

『インサイド・ヘッド』むずかしいことをゆかいに!!

ピクサーの2015年作品『インサイド・ヘッド』。ものすごい脚本だな〜、と感心してしまう映画。

記事を読む

『耳をすませば』 リアリティのあるリア充アニメ

ジブリアニメ『耳をすませば』は ネット民たちの間では「リア充映画」と 言われているらしい

記事を読む

no image

『きゃりーぱみゅぱみゅ』という国際現象

  泣く子も黙るきゃりーぱみゅぱみゅさん。 ウチの子も大好き。 先日発売され

記事を読む

no image

日本企業がハリウッドに参入!?『怪盗グルーのミニオン危機一発』

  『怪盗グルー』シリーズは子ども向けでありながら大人も充分に楽しめるアニメ映画。ア

記事を読む

『赤毛のアン』アーティストの弊害

アニメ監督の高畑勲監督が先日亡くなられた。紹介されるフィルモグラフィは、スタジオジブリのもの

記事を読む

no image

『カールじいさんの空飛ぶ家』憐憫の情を脱せなければ、ドラマは始まらない。

  ディズニーアニメの最新作『ベイマックス』が 予告編とあまりに内容が違うと話題に

記事を読む

『若草物語(1994年)』本や活字が伝える真理

読書は人生に大切なものだと思っている。だから自分の子どもたちには読書を勧めている。 よ

記事を読む

『うる星やつら 完結編』 非モテ男のとほほな詭弁

2022年の元日に『うる星やつら』のアニメのリメイク版制作の発表があった。主人公のラムが鬼族

記事を読む

no image

映画づくりの新しいカタチ『この世界の片隅に』

  クラウドファンディング。最近多くのクリエーター達がこのシステムを活用している。ネ

記事を読む

『不適切にもほどがある!』 断罪しちゃダメですか?

クドカンこと宮藤官九郎さん脚本によるドラマ『不適切にもほどがあ

『デューン 砂の惑星 PART2』 お山の大将になりたい!

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ティモシー・シャラメ主演の『デューン

『マーベルズ』 エンタメ映画のこれから

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の最新作『マーベ

『髪結いの亭主』 夢の時間、行間の現実

映画『髪結いの亭主』が日本で公開されたのは1991年。渋谷の道

『PERFECT DAYS』 俗世は捨てたはずなのに

ドイツの監督ヴィム・ヴェンダースが日本で撮った『PERFECT

→もっと見る

PAGE TOP ↑