*

『ゴーストバスターズ(2016)』 ヘムジーに学ぶ明るい生き方

公開日: : 最終更新日:2021/06/16 映画:カ行, 映画館

アイヴァン・ライトマン監督作品『ゴーストバスターズ』は80年代を代表するブロックバスタームービー。自分も子どもの頃、夢中になって何度も観た。パート2もできたけど、そっちはなんとなく今まで観ずにいた。パート3を作る作らないと言ってるうちに、ゴーストバスターズのメンバーのひとりハロルド・ライミスが亡くなってしまった。なのでメンバーを全員女性に入れ替えて、リブート企画が始まった。

このリブート映画を観た人からは、口を揃えて「面白かった」との声が聞こえてきた。でもアメリカではバッシングの嵐。ウチも子どもたちが観たがっていたので、どうしようか考えているうちに、早々に上映が終わってしまった。客入りはイマイチだったのか。

ブルーレイになったのでやっと観たら、やっぱり面白かった! ウチの子たちも、きゃあきゃあ怖がりながら喜んでた。このリブート『ゴーストバスターズ』も、続編もつくる気マンマンの展開。旧メンバーのカメオ出演もあったけど、前作知らなくたって大丈夫。ビル・マーレーの出番が意外と多かったのにビックリ。吹替版で観たら、声優さんが一緒だった。細かい配慮。作品の敷居はいたって低い。それが旧来のファンには受け入れられなかったのかしら?

ゴーストバスターズのメンバーで、白人女性はみな科学者だけど、唯一の黒人メンバーだけが地下鉄員からの転職だった。それが差別だと感じた人がいたらしい。白人のゴーストバスターズメンバーは、リケジョでオタク。イケてないけど、やっぱり才女。黒人女性だけなぜ?ってルサンチマンな感覚だけど、高学歴を得られるのはやはり裕福な家庭環境あってのこと。差別というよりは、残酷な現実。経済力でその人の可能性に制限がかかってしまうのは社会問題としてとらえられる。

この新ゴーストバスターズでいちばん気になる登場人物は、クリス・ヘムズワースが演じる事務受付担当のケヴィン。この人、仕事なんにもできないの。電話応対すらできない。「ウェブかじってたからコーポレートロゴ考えてきた」なんて、どんなロクでもないデザイン見せられるのかと、期待に胸膨らませられちゃう。じゃあなんでこんな使えない人が採用されたかというと、ルックスがサイコーにイケメンだったから。

仕事ができない男なんて、普通だったら嫌われちゃう。でも人は見た目が9割。見た目だけで採用しちゃうゴーストバスターズの彼女たちも、やっぱりダメダメってこと。

ダメダメな女ゴーストバスターズに、歯がゆさを感じる男性観客も多いことだろう。でもこれ、男女逆転して考えればまったく平生普段の社会の縮図と変わらない。美人というだけで、仕事がなにもできないのに成り上がる人なんてざら。同性からは嫌われてるけど、異性からは異常にウケが良い。そういうタイプの人の努力は、仕事のスキルアップはなく、見栄えを磨くこと。それはそれで努力して頑張っている。

ダメダメなケヴィンは、ゴーストバスターズの足をひっぱってばかり。でもケヴィン、それほど悪いヤツじゃない。だからこそ女ゴーストバスターズは、ケヴィンを守ろうとゴーストたちと戦うのだ!

ケヴィン演じるクリス・ヘムズワースは、キラッキラ輝いてる! 彼の代表作『マイティ・ソー』もしのぐくらいのインパクト。ダメ男だって、明るい性格ならたくさん味方ができる。ケヴィンはそうやって今まで世渡りしてきたのだろう。

そういえば『マイティ・ソー』は、一作目では自分の王国を追放されて、地球に島流しされる。ボロボロで身寄りもないのに「俺は王だ!」と威厳を失わない。頭のおかしな男にしかみえないんだけど、明るく堂々としている彼に、自然と仲間ができてくる。ガールフレンドもすぐできちゃう。ボロを着てても、「これオシャレなんじゃないか?」と感じさせてしまう。追放された王なんて、アジアの作品だったらきっとメソメソしちゃうだろうな。

楽観的な人は、ものごとを暗く考えない。悲観的な考えも、所詮妄想にすぎないから。考えてもしょうがないことは、最初から考えない。悲観的妄想を、潜在的にシャットアウトしてしまうのも才能だ。パラノイアに陥るどころか、鬱にもなりそうもない。人からバカにされようと笑われようと、自分が楽しく生きられるならささいなことだ。明るく楽しく生きている人は魅力的にみえる。自ずと人生が好転してくるのは当たり前。

ケヴィンに乗り移ったゴーストが、「この鍛え抜かれた身体は、なんてラクなんだ!」と語る。あの厚い胸板や六つに割れた腹筋は、1日では成らず。体も軽くなれば、考え方だって軽くなる。こりゃあ本気で身体を鍛えるところから始めた方が良さそうだ。

関連記事

『キングコング 髑髏島の巨神』 映画体験と実体験と

なんどもリブートされている『キングコング』。前回は『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジ

記事を読む

no image

何が来たってへっちゃらさ!『怪盗グルーのミニオン危機一発』

  世界のアニメ作品はほぼCGが全盛。 ピクサー作品に始まり、 母体であるディズ

記事を読む

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』 特殊能力と脳障害

いま中年に差し掛かる年代の男性なら、小学生時代ほとんどが触れていた『機動戦士ガンダム』。いま

記事を読む

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』 ヒーローは妻子持ちNG?

今年は『機動戦士ガンダム』の35周年。 富野由悠季監督による新作 『ガンダム Gのレコン

記事を読む

『君たちはどう生きるか』 狂気のエンディングノート

※このブログはネタバレを含みます。 ジャン=リュック・ゴダール、大林宣彦、松本零士、大

記事を読む

『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』 特別な存在にならないという生き方

立川シネマシティ[/caption] 世界中の映画ファンの多くが楽しみにしていた『スター・ウ

記事を読む

『リトル・ダンサー』 何かになりたかった大人たち

2000年公開のイギリス映画『リトル・ダンサー』が、ここのところ話題になっている。4Kリマス

記事を読む

『ワンダーウーマン1984』 あの時代を知っている

ガル・ガドット主演、パティ・ジェンキンス監督のコンビでシリーズ第2作目になる『ワンダーウーマ

記事を読む

no image

『CASSHERN』本心はしくじってないっしょ

  先日、テレビ朝日の『しくじり先生』とい番組に紀里谷和明監督が出演していた。演題は

記事を読む

『スター・ウォーズ/スカイ・ウォーカーの夜明け』映画の終焉と未来

『スターウォーズ』が終わってしまった! シリーズ第1作が公開されたのは1977年。小学

記事を読む

『侍タイムスリッパー』 日本映画の未来はいずこへ

昨年2024年の夏、自分のSNSは映画『侍タイムスリッパー』の

『ホットスポット』 特殊能力、だから何?

2025年1月、自分のSNSがテレビドラマ『ホットスポット』で

『チ。 ー地球の運動についてー』 夢に殉ずる夢をみる

マンガの『チ。』の存在を知ったのは、電車の吊り広告だった。『チ

『ブータン 山の教室』 世界一幸せな国から、ここではないどこかへ

世の中が殺伐としている。映画やアニメなどの創作作品も、エキセン

『関心領域』 怪物たちの宴、見ない聞かない絶対言わない

昨年のアカデミー賞の外国語映画部門で、国際長編映画優秀賞を獲っ

→もっと見る

PAGE TOP ↑