『機動警察パトレイバー the movie2』 東京テロのシミュレーション映画

今実写版も制作されている
アニメ版『パトレイバー』の第二弾。
後に『踊る大走査線』や
『ダークナイト・ライジング』などに
多大に影響させる本作。
東京でももしテロが起こったらの
完全なるシミュレーションを映画でやってみせる。
アニメとは思えないリアリティある考察の表現。
本作の発表は1993年。
自衛隊のPKO派遣で、第二次大戦後はじめて
日本人が戦争に巻き込まれるのではと、
不安感がこの映画の冒頭で描かれている。
海外へ派遣された自衛隊は
攻撃され撃たれない限り、
戦争行為を絶対にしてはならない。
反撃の許可がおりずに部下を全滅させられた
元自衛官が東京でおこすクーデターと言う名のテロ。
これはかつて軍部が政府にクーデターを起こした
『226事件』のイメージ。
自衛隊が海外で戦争に巻き込まれたら?
自衛官や警官がもし日本でクーデターを起こしたら?
日本政府が責任逃れのたらい回しをはじめたら?
日本の警察や自衛隊が機能しなくなったら?
数々の恐ろしいシミュレーション。
そしてかつて軍人が起こした
政府へのクーデター『226事件』をきっかけに
日本は軍国主義へと進み、
世界大戦へと流れ込んで行きました。
戦争とはなんぞや?
平和ボケの日本人に問題提起していきます。
ちょっとアニメの域、超えてます。
周知の通り1995年には
東京で『地下鉄サリン事件』が発生し、
我々は現実にテロリズムと遭遇します。
この映画で伝える報道や東京の混乱が
まさに本作で描かれたものと
そのもの同じだったと記憶してます。
オウム真理教の連中も、
オタクなので本作を観ていた事でしょう。
模倣犯だったのか? 偶然だったのか?
この映画のシミュレーションが正確だったのか?
閉塞感漂う現代社会。
想像上恐ろしいと思って描いたフィクションが、
それよりも酷い状況になったりしている。
ただずっと言われているのが、
作者が警笛のつもりで放った作品に対し、
観客が自分ごとととらえられる
想像力が欠如しすぎているということ。
本作でスタッフとして参加していた
『ももへの手紙』の沖浦啓之監督が、
お忍びで劇場で『パトレイバー1』を観たとき、
上映終了後ファンの放った開口一番の感想が
「メカはいいけど、キャラがね」だったそうです。
映画を観てこの程度の感想しか出てこない
ファンの低能さに愕然としたと聞きます。
作者が命を削って描いた警告が
誰にも届かないという無力感。
作品を観るのも、想像力が必要なのです。
たとえ娯楽作品でも、
制作者がそれなりに心血注いだ作品には、
メッセージがあります。
生きるためのヒントも隠されています。
制作者は芸術家肌だったり天才肌だったりする人が多い。
凡人には見えないもを伝えていたりするのです。
現代の日本人は相手を思いやったり、
物事を見定めて行く想像力が
イマイチ足りなくなってしまったようです。
たかがアニメ、されどアニメ。
関連記事
-
-
『おおかみこどもの雨と雪』 人生に向き合うきっかけ
『リア充』って良い言葉ではないと思います。 『おおかみこどもの雨と雪』が テレビ放映
-
-
『誘拐アンナ』高級酒と記憶の美化
知人である佐藤懐智監督の『誘拐アンナ』。60年代のフランス映画のオマージュ・アニメーション。
-
-
『花束みたいな恋をした』 恋愛映画と思っていたら社会派だった件
菅田将暉さんと有村架純さん主演の恋愛映画『花束みたいな恋をした』。普段なら自分は絶対観ないよ
-
-
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』 サブカルの歴史的アイコン
1995年のテレビシリーズから始まり、 2007年から新スタートした『新劇場版』と 未だ
-
-
『クレヨンしんちゃん』 子どもが怖がりながらも見てる
かつて『クレヨンしんちゃん』は 子どもにみせたくないアニメワースト1でした。 とにか
-
-
『キャプテン・マーベル』脱・女性搾取エンタメ時代へ
ディズニー・マーベル作品はリリース順に観ていくのが正しい。リンクネタがどこに散りばめられてい
-
-
『ゴジラ-1.0』 人生はモヤりと共に
ゴジラシリーズの最新作『ゴジラ-1.0』が公開されるとともに、自分のSNSのTLは絶賛の嵐と
-
-
『電車男』オタクだって素直に恋愛したかったはず
草食男子って、 もう悪い意味でしか使われてないですね。 自分も草食系なんで…
-
-
『さよなら銀河鉄道999』 見込みのある若者と後押しする大人
自分は若い時から年上が好きだった。もちろん軽蔑すべき人もいたけれど、自分の人生に大きく影響を
-
-
『若草物語(1994年)』本や活字が伝える真理
読書は人生に大切なものだと思っている。だから自分の子どもたちには読書を勧めている。 よ
