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『このサイテーな世界の終わり』 老生か老衰か?

公開日: : ドラマ, 映画:カ行, , 配信, 音楽

Netflixオリジナル・ドラマシリーズ『このサイテーな世界の終わり』。BTSのテテがこの作品について言及したことから、一気にトレンドに上がった作品。インフルエンサーの発言力に圧倒される。もし彼がこの作品を紹介してくれなかったら、きっと出会うことはなかった。アーティストが勧める作品で、なぜあなたがそれをチョイスしたのか、スタッフに言わされてるのだろうなと思えることが多々あるが、テテが『このサイテーな世界の終わり』を推すのは、彼の個性を知っていればいかにもと納得できる。

配信コンテンツが主流になっていくと、ドストライクな感性の作品でも見逃してしまうこともある。日本のNetflixの宣伝は、どうしても国内作品を贔屓してしまう。作品選びの基準は、SNSの口コミが一番頼りになる。肝心なNetflix自体が、海外の自社オリジナル作品はあまり熱心に紹介していない。

『このサイテーな世界の終わり』というインパクトの薄い邦題の響き。でも原題は『the end of the f***ing world』とそのまま。ハイティーンのカップルが、破滅的な旅をするロードムービー。原作は漫画とのこと。そのまま描けば暗いだけの作品だけど、ファッションや音楽でオシャレに演出している。次々と悲惨な出来事が起こるので、だんだん仕方なく笑えてきてしまう。ものごとがすべて最悪の方向へと展開していく面白さ(?)。

音楽はブラーのギタリスト、グレアム・コクソンが担当している。エモい選曲は彼のセンスだろう。90年代後半から2000年代頃に流行った、オシャレ系犯罪映画の影響が色濃く出てて、なんだか懐かしい。自分も若返った気になる。制作スタッフも、90年代後半にキッズだった世代が、中年になってあの頃の世界観を再現しているのがわかる。まさに我々の世代。アメリカ作品ではなく、イギリスなのも興味深い。

主人公の二人が選んでいく道。思春期の情緒不安定からくるのか、精神疾患的なものなのか。破天荒な行動にも関わらず、共感できなくもない。心と体がチグハグだった頃のことを、大人になることで忘れてしまった。きっとこの心身の均衡の崩れは、老いと共に再び巡ってくる。結局、『ボニー・アンド・クライド』にも『シド・アンド・ナンシー』にもなれない現実。目的があるようでない旅路。頼れる大人は誰もいない。

新宿トー横界隈にたむろする若者たちが社会問題になっている。行き場のない彼ら彼女らの抜本的問題は、帰れる場所がないということ。我々は無意識のうちに社会から守られている。家があったり学校へ通ったり、職場に属しているだけで、社会的に人権が得られている。フリーランスになった途端に真っ先に集まってくるのは、仕事の依頼より詐欺まがいの勧誘ばかりだったりする。犯罪とは無縁の日常を過ごしていても、ひとたび路地裏を歩いてみたら、新聞沙汰になるようなことが間近で起こっている。そんなもの一生知らないまま過ごせたなら、それに越したことはない。だから犯罪は他人事とたかを括ってしまうことは怖い。「自分は大丈夫」と言い切れてしまう人がもっとも危ない。

10代のトンガった感覚で暴走する。太く短く生きるのも人生。でもこのブラック・コメディは、どこか倫理的で優しい。ほんの少し救いすらある。若気の至りで突っ走ったあと、その責任をジワジワ背負わせられていく様はリアル。いっとき流行ったオシャレ犯罪映画の系譜を辿りながら、人生の機微を説得力あるシナリオで展開している。どんな結末が待っているのか予測できない。脚本スタッフが優秀。映画的アイデアの豊かさと社会問題の意識の高さを感じる。

頑張ること、夢を叶えること、成功すること、何かに期待すること……。景気の良い時は、大志を抱けばそれを得られることもあっただろう。今のような世界的な不況と不安定な世の中では、地に足のついた考え方が必要。大袈裟に言えば、今日どうやって生き延びるか?

物語が進んでいくうちに、主人公たちがだんだん老けて見えてくる。ドラマチックな人生は幸福とは無縁。つまらないくらい何も起こらない人生の方が、わりと幸せだったりする。若い時だからこそ、太く短く生きてみるのもいいかもしれない。そしてもし淘汰されずに生き延びたら、余生は静かに暮らすのがいい。早咲きすればするほど、人生が長く感じてしまう。

セカンド・シーズンまであるこのドラマ。どんなに面白くても、もう続きはなくていい。主人公たちにこれ以上困難が起こったら、いくらなんでもかわいそう。こんな世の中だからこそ、平穏に生きていく道を探していきたいとつくづく思う。このドラマを観ながら若かりし日の気分を思い出していたら、なんとなくこの先の人生が見えてきてきたという、年齢や時間の感覚が分からなくなるような変な気分になるドラマだった。

このサイテーな世界の終わり

the end of the fxxxing world

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