『ふがいない僕は空を見た』 他人の恋路になぜ厳しい?

デンマークの監督ラース・フォン・トリアーは
ノルウェーでポルノの合法化の活動の際、発言している。
「女性も人がセックスをしている様を見るのが好きだが、
物語を無視してそこばかりをみせられるのを嫌う」
本作の原作は「女による女のためのR18文学賞」をとった
窪美澄さん著の短編からなる連作。
同じ時間軸を各章、主人公をかえ、
すべて一人称で描かれている。
性に溺れて行く物語で、
ハッピーエンドになるはずもない。
「バカな恋愛をしたことのない奴がいるか」
と本編中の台詞でもあるが、その類いの恋愛像。
よく若い頃は「映画やドラマみたいな恋がしたい」
と言うが、本当の恋愛というものは
それほどドラマチックなものではない。
波瀾万丈でない方が幸せな恋愛なのだ。
シナリオ学校に通っていたとき、
講師が言っていました。
「ドラマは面白おかしくみせるために、
毎回ハプニングを考え、織り込んでいく。
日常でこんな事がいつも起こってしまっては、
普通の生活はできなくなる。
映画やドラマみたいな恋は反面教師にしてください」
現実世界と創作物語とは本来違うもの。
この違いは今までは誰もが了解済みで
映画やドラマを観ていたと思う。
いつからかその垣根がごちゃ混ぜになってしまったか。
現実の恋愛や結婚がどいったものか、
自分の頃は人生の先輩がそれとなく
教えてくれていたと思うが、
今はそんな先輩もいなくなっているかも知れない。
20代はじめの頃、勤めていた会社で、
同年代の子たちの社内恋愛が加熱して、
収集つかなくなったことがある。
自分はなんとなく遠目でみていた。
結局傷害事件みたいになってしまった。
「お前は映画や本をよく読んでいるから
おかしな事はしないんだな」と上司に言われた。
自分は単純に恐がりなだけだけど……。
この作品、映画と原作のブレはない。
原作だけ映画だけの場面もあるが、どちらも良かった。
映画化で作品の根幹が揺らぐ事はなかったのです。
テーマは「性と生」。
監督は女流のタナダユキさん。
原作も女性、監督も女性ということで
読後観賞後の印象を変える事なく、
ドロドロの世界観にもであっても、
女性らしい美しい作品に仕上がったのだと思います。
思うのは、いまやアニメとエロは
ほぼ同義語となってしまっているようです。
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