『AKIRA』 ジャパニメーション黎明期
日本のアニメが凄いと世界に知らしめた
エポックメーキング的作品『AKIRA』。
今更話題にするのも恥ずかしいくらい。
当時のアニメの概念を壊したと言っていい。
善くも悪くもこれ以降、アニメは子ども向けでは
なくなってしまった気がする。
とにかく過去SF作品からのモチーフの
パッチワークがうまかったと思える。
音楽に芸能山城組を起用して、
当時の日本映画は音楽に費用をかけるなんて
考えられなかった時代に、あえて音楽に力を入れた。
ねぶた祭と近未来都市という、
なんともカッコいいビジュアルを見せつけてくれた。
ものすごい情報量で、観客はただただ圧倒させられた。
自分が通っていた映画学校の先生がつぶやいた。
「あれは面白いのかも知れんが、わけがわからん」
当時10代だった自分は、トンガリ盛り。
「なぜ分からない! 先生感性が老いてるよ!!」
と思ったものだが、
今となってはその先生の発言の意味が理解できる。
本作は、カッコいいもののパッチワーク
情報の物量でごまかされたしまうのだが、
実はSFとしてのテーマ性が全くないのです。
本来SFは社会へ対しての警笛や、
社会風刺などがこもっていてシニカルなもの。
SF的なデザインは、そのままの言ってしまうと
生々しすぎる描写をオブラートに包ます役目を持っている。
そのオブラートのためのギミックを集めた『AKIRA』。
SF作品としてはハリボテのスカスカになってしまうのです。
センスの良さだけで突っ走ってしまった作品。
この映画の後からは、
スカスカでもSFが成立すると誤解され、
安直な作品が増えてしまったのも否めない。
本作の舞台は2019年の架空の都市ネオトーキョー。
2020年には東京オリンピックを迎えるという設定。
東京オリンピックなんてあり得ないだろうと
当時の自分は思っていたので、
本作の予言は当ってしまった。
この作品の日本は、軍隊が力を持ち、
テロや暴動、犯罪が乱立して治安が悪い。
この作品の予言が東京オリンピックだけで
それ以外の予言は、
はずれて欲しいと願うばかりです。
関連記事
-
『ジャングル大帝』受け継がれる精神 〜冨田勲さんを偲んで
作曲家の冨田勲さんが亡くなられた。今年は音楽関係の大御所が立て続けに亡くなってい
-
太宰治が放つ、なりすましブログのさきがけ『女生徒』
第二次大戦前に書かれたこの小説。 太宰治が、女の子が好きで好きで、 もう
-
『かもめ食堂』 クオリティ・オブ・ライフがファンタジーにならないために
2006年の日本映画で荻上直子監督作品『かもめ食堂』は、一時閉館する前の恵比寿ガーデンシネマ
-
育児ママを励ます詩『今日』
今SNSで拡散されている 『今日』という詩をご存知でしょうか。 10年程
-
『ウォレスとグルミット』欽ちゃんはいずこ?
この『ウォレスとグルミット』は、現在大ヒット中の映画『ひつじのショーン』のアード
-
『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』アメコミみたいなアイツ
トム・クルーズが好きだ! 自分が映画を観るときに、監督で選ぶことはあっても、役者で決めることはほとん
-
『薔薇の名前』難解な語り口の理由
あまりテレビを観ない自分でも、Eテレの『100分de名著』は面白くて、毎回録画してチェックし
-
『バンカー・パレス・ホテル』 ホントは似てる?日仏文化
ダメよ~、ダメダメ。 日本エレキテル連合という 女性二人の芸人さんがいます。 白塗
-
『猿の惑星:聖戦記』SF映画というより戦争映画のパッチワーク
地味に展開しているリブート版『猿の惑星』。『猿の惑星:聖戦記』はそのシリーズ完結編で、オリジナル第1
-
『ヒックとドラゴン/聖地への冒険』 変わっていく主人公
いまEテレで、テレビシリーズの『ヒックとドラゴン』が放送されている。小学生の息子が毎週それを