『シン・レッド・ライン』美しい場所ほど悲惨な戦場だったりする
公開日:
:
最終更新日:2019/06/15
映画:サ行
自然が美しい場所ほど、過去に激戦地だったりする。
とこく今ではリゾート地となっている
美しく常夏のような場所こそ、
過去に多くの血が流れた場所が多い。
ハワイや沖縄などもそう。
人の殺し合いなど、自然からみれば
無意味なものだと言われているようだ。
この『シン・レッド・ライン』は
第二次大戦のガダルカナル島の戦いを描いている。
監督はテレンス・マリック。
一本映画を撮るとなかなか
新作を発表しない監督さん。
夕焼けの黄昏時である
マジック・アワーを好んで使い、
映像美溢れる画面作りで定評高い。
彼の描く美しい血みどろの戦争映画。
人々が殺し合う中、風は静かに漂い、
木漏れ日が大地を照らす。
映画での兵士は、
たいていマッチョに描かれるのだが、
この作品に登場する兵士は内省的で、
全編にモノローグ(独白)が多い。
兵士が故郷を思い出す心象風景は美しい。
この映画が公開されている当時、
自分は英会話教室に通っていた。
そこでオーストラリア人の教師とこの映画の話をした。
「君はあの映画を観て不快にならなかったか?」と聞かれた。
その意図は、日本人が大勢殺される場面で、
日本人として不愉快にならなかったのかという事だった。
そういった解釈では自分は観ていなかった。
殺し殺されるのが戦争。
日本人だとかアメリカ人だとかは関係ない。
人が殺される場面は、どこの誰であろうと不快。
時代が異なれば、
このオーストラリア人教師とも
殺し合っていたかもしれない。
友達になれるかもしれない人と
殺し合うのが戦争なのだと、
ものすごく実感した瞬間でした。
関連記事
-
『スイス・アーミー・マン』笑うに笑えぬトンデモ・コメディ
インディペンデント作品は何が出てくるかわからないのが面白い。『スイス・アーミー・マン』は、無人島に一
-
『猿の惑星:聖戦記』SF映画というより戦争映画のパッチワーク
地味に展開しているリブート版『猿の惑星』。『猿の惑星:聖戦記』はそのシリーズ完結編で、オリジナル第1
-
『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』 ヴィランになる事情
日本国内の映画ヒット作は、この10年ずっと国内制作の邦画ばかりがチャートに登っていた。世界の
-
『さよなら銀河鉄道999』 見込みのある若者と後押しする大人
自分は若い時から年上が好きだった。もちろん軽蔑すべき人もいたけれど、自分の人生に大きく影響を
-
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』 自分のことだけ考えてちゃダメですね
※このブログはネタバレを含みます。 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの四作目で完結
-
『ジャングル大帝』受け継がれる精神 〜冨田勲さんを偲んで
作曲家の冨田勲さんが亡くなられた。今年は音楽関係の大御所が立て続けに亡くなってい
-
『ゼロ・グラビティ』3D技術があっての企画
3D映画が『アバター』以来すっかり浸透した。 自分も最初の頃は3Dで作られた映
-
どこへいった? スプラッターブーム!?『13日の金曜日』
『13日の金曜日』というとキリストが 処刑された日として、キリスト教徒からは
-
『Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022 +(プラス)』 推しは推せるときに推せ!
新宿に『東急歌舞伎町タワー』という新しい商業施設ができた。そこに東急系の
-
『シンドラーのリスト』極端な選択の理由
テレビでナチスのホロコースト虐殺の特集を放送していた。なんでも相模原の養護施設で大量殺人をし
- PREV
- 『すーちゃん』女性の社会進出、それは良かったのだけれど……。
- NEXT
- 「天才」という名の苦悩