『ひとりぼっちを笑うな』蛭子さんはハルクの如し
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最終更新日:2019/06/13
本
最近、蛭子さんの言葉が流行っているらしい。蛭子さんとは、マンガ界のヘタウマ天才と言われ、タレントとしてもバラエティ番組にひっぱりだこの、あの蛭子能収さんのこと。ヘラヘラっといつも笑っているけれど、描くマンガはいつも怒っていてエログロナンセンス。とかく過激な表現をする人は、実際にはおとなしくて礼儀正しくて、道理をわきまえている場合が多い。蛭子さんも完全にそのタイプだろう。ベストセラーになった『ひとりぼっちを笑うな』も、さぞかし怒っているのかと思っていたら……。
ハリウッド映画の『アベンジャーズ』の中に『ハルク』というキャラクターがいる。普段はおとなしい科学者ブルース・バナーが自ら実験台になった研究に失敗して、感情が高まると緑色の巨人・ハルクに変身して大暴れする能力がついてしまう。まさに普段おとなしい人が、キレるとやっかいのメタファー。自制ができないので、ヒーローとしてはかなり危うい。Dr.バナーも、この才能を短所と受け止めている。
ハルクはいろんな人が演じているけど、『アベンジャーズ』のマーク・ラファロのハルクがいちばん共感できる。こんな場面がある。迫り来る敵の前にDr.バナーがバイクにまたがってやって来ます。優しい笑顔のDr.バナー。キャプテン・アメリカはじめ、アベンジャーズたちが「いま、怒っていいぞ」と言うと、笑顔のDr.バナーは「大丈夫。実をいうとね、私はいつも怒っているんだ」と、メラメラメラとハルクにメタモルフォーゼして、立ち向かっていく。カッコいいけど、普段どれだけガマンしてるんだろ?
蛭子さんもそんな感じかな? と想像していた。本を読んでみると、確かに怒ってはいるのだけど、基本的に明るくてポジティブな考え方。決して卑屈になんかなっていない。やっぱり天才と言われる人は、道理を知っている。
自分は凡人だけど、けっこう蛭子さんと通ずる点も多い。グラフィックデザイナーを目指していたとか、自分も通った脚本家養成学校の先輩だったとか。蛭子さん自身は目立ちたくないのに、どうしても目立ってしまう存在らしい。自分もよく街を歩いていると、知らない人から名指しで声をかけられることがある。「○○で一緒だった△△です」と言われても、相手の顔に覚えがない。そこへは行ったことあるし、共通の記憶もあるみたいだから、あながちウソではなさそう。向こうはこっちの名前も知ってる。記憶障害か何か? でも若い時からずっとそんなことの繰り返し。自分はそれほど他人に興味がないのに、相手には覚えられる。なんとなく目立つ存在らしい。もしかしたら、蛭子さんにちかいかも?
『ひとりぼっちを笑うな』というタイトル。会社組織やSNSの、ムリに群れようとする心理に対しての警鐘。群れると人は無責任で凶暴になる。だからこそ自身の言動に責任を持つことの大事さ。自分自身という看板を自ら背負うことで、ブレない人生を送れるようになる。それは本当の意味で自由になること。ただ、蛭子さんは、ひとりぼっちだったらなんでも良いとは言ってない。孤独にも『良い孤独』と『悪い孤独』があるということ。
無意味に大勢の人と繋がって、相手の顔色ばかりうかがって生きるより、少数でも本音を言い合える人がいることの大切さ。その足元が整った上ではじめて『ひとりぼっち』をエンジョイする。気のおけない相手がいるという、ささやかな幸せに感謝して、あえてひとりぼっちになる。自分が自分を好きになれないようでは、他人からも好かれない。そして自分の行動は絶対に人のせいにしない。心がポジティブならば、ニッチな抜け道は必ずみつかる!
蛭子さんは言う「自分が自由になりたければ、他人も自由にしてあげなくてはいけない」。どんな趣味の人でも、犯罪や人に迷惑をかけていないのなら、口を出してはいけない。それは相手を尊重することらしい。……そうか、それは肝に銘じなければいけないな!
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