*

夢物語じゃないリサーチ力『マイノリティ・リポート』

公開日: : 最終更新日:2019/06/14 映画:マ行,

 

未来描写でディストピアとも
ユートピアともとれる不思議な映画、
スピルバーグ監督の『マイノリティ・リポート』。

この映画に出てくる車のデザインや、
空間にタッチパネル映像を
浮かび上がらせる技術は映画公開を
13年迎えた今では現実のものとなっている。

企業が宣伝の為に情報提供して
タイアップしていたのかもしれないけど。

この作品は映画そのものの面白さより、
ギミックの先見性を楽しむものなのかもしれない。
この映画の未来のイメージは、
スピルバーグ監督の前作『A.I.』を踏襲している。

フィリップ・K・ディックの短編小説を
大胆アレンジした本作。
プレコグ(超能力者)を使って
これから犯罪を起こすであろう人を、
未然に逮捕する特捜員をトム・クルーズが演じてる。
テクノロジーが進化しても、
超能力のようなオカルト的なものに
頼っているのが皮肉。
超能力者も人間なので、人権を無視している。

この映画では網膜が個人情報のIDとされている。
網膜をチェックすれば、その人のアイデンティティが
一瞬にして分かるようになっている。

その人の網膜から、その人の趣味嗜好をよみとって、
街中の看板がその人の好きそうな内容に変わる。
きもちわるいな~と映画を観て思っていたが、
今のSNSの広告画面なんて、
まったくそのものになっている。

これ、売る側には客層を絞れて
効率のいい売り方が
出来るかもしれないけれど、
受け手からすると偏った情報しか
入ってこない事になる。
個人にとっては世界が自分の趣味の物しか
なくなってしまうということ。

これは危険。

人間関係や社会生活は、
自分の趣味だけではやっていけない。
一見無関係なようなものから、
新しい人生が開けたりする事もある。

企業に都合の良い世の中というものは、
個人の可能性を閉ざしてしまうのかもしれない。

ある程度の大人だったら、
それくらいは感じ取れるだろうが、
若い子がネットの世界に触れて、
世界観が矮小化するのはとてもよろしくない。

小さい時から映画好きだった自分は、
社会に出るまで、
映画を観ない人が世の中にいるなんて
想像すらしていなかった。
でもそんな趣味の違う人とでも仲良くできるし、
そういった人から、
自分の知らないことを教わったりする。
それが人生だと思う。

狭い世界がすべてになると、
あらゆるチャンスを逃すことにもなりかねない。

ネットは大人にとっても危険だけれど、
子どもには極力触れさせない方が良いのかもしれない。

関連記事

no image

『かもめ食堂』クオリティ・オブ・ライフがファンタジーにならないために

  2006年の日本映画で荻上直子監督作品『かもめ食堂』は、一時閉館する前の恵比寿ガ

記事を読む

no image

宇多田ヒカル Meets 三島由紀夫『春の雪』

  昨日は4月になったにもかかわらず、 東京でも雪が降りました。 ということで『春の雪』。

記事を読む

no image

『高い城の男』占いは当たらない?

  映画『ブレードランナー』の原作者フィリップ・K・ディックの代表作『高い城の男』。

記事を読む

no image

『わたしを離さないで』自分だけ良ければいいの犠牲

今年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ原作の映画『わたしを離さないで』。ラブストーリーのよう

記事を読む

no image

映画化までの長い道のり『のぼうの城』

  鳥取市のマスコットキャラクター 『かつ江(渇え)さん』が批判を受けて非公開にな

記事を読む

no image

『惑星ソラリス』偏屈な幼児心理

  2017年は、旧ソ連の映画監督アンドレイ・タルコフスキーに呼ばれているような年だ

記事を読む

no image

『愛の渦』ガマンしっぱなしの日本人に

乱交パーティの風俗店での一夜を描いた『愛の渦』。センセーショナルな内容が先走る。ガラは悪い。でも蓋を

記事を読む

no image

『沈まぬ太陽』悪を成敗するのは誰?

  よくもまあ日本でここまで実際にあった出来事や企業をモデルにして、作品として成立させたな~と

記事を読む

no image

『はだしのゲン』残酷だから隠せばいいの?

  明日8月6日は広島の原爆の日ということで、『はだしのゲン』ドラマ版の話。

記事を読む

no image

『ジャングル大帝』受け継がれる精神 〜冨田勲さんを偲んで

  作曲家の冨田勲さんが亡くなられた。今年は音楽関係の大御所が立て続けに亡くなってい

記事を読む

no image
『ひろしま』いい意味でもう観たくないと思わせるトラウマ映画

ETV特集で『ひろしま』という映画を取り扱っていた。広島の原爆投下から

no image
『愛の渦』ガマンしっぱなしの日本人に

乱交パーティの風俗店での一夜を描いた『愛の渦』。センセーショナルな内容

no image
『八甲田山』ブラック上司から逃げるには

今年になって日本映画『八甲田山』のリマスター・ブルーレイが発売されたら

no image
『さよなら、人類』ショボくれたオジサンの試される映画

友人から勧められたスウェーデン映画『さよなら、人類』。そういえば以前、

no image
『若草物語(1994年)』本や活字が伝える真理

読書は人生に大切なものだと思っている。だから自分の子どもたちには読書を

→もっと見る

PAGE TOP ↑