*

『映像研には手を出すな!』好きなことだけしてたい夢

公開日: : 最終更新日:2020/03/04 アニメ, 映画:ア行,

NHKの深夜アニメ『映像研には手を出すな!』をなぜか観始めてしまった。

実のところなんとなく私自身、日本のアニメは避けているところがある。子どもが観てはいけないような暴力描写やポルノ的な内容が、無法地帯のように蔓延っているイメージが強い。絵が動く、本来なら子ども向けの媒体であったアニメーションなのに!

レンタルビデオ店のアニメコーナーで、子ども向け作品と一緒に、半裸の萌えアニメのジャケットが並んでいたりする。子連れで無防備にアニメコーナーへ行くのは、ちょっと危険。アニメのゾーニングは強く望む。

日本のアニメやマンガが好きだと言うと、偏った思想の持ち主か、心が病んでいるのではと思われてしまうのではないかと、ハナからガードしてしまうところがある。まあこれも偏見なのだが。

テレビアニメ『映像研には手を出すな!』の第1話のオンエアの録画予約ボタンを最初に押したのは妻だった。実写のサブカル的なコメディドラマだと思ったらしい。オタクの習性を描くようなドラマ。途中で「なんだ、アニメか!」と気がついて予約解除したらしい。

私も連続テレビアニメは観るのが面倒だと、さらさら観るつもりもなかった。夕方に放送していた番組宣伝で、我が家の子どもたちの方が観たいとのご所望。深夜アニメだし、子どもが観たらイケナイ内容だったらどうしようと一抹の不安。テレビアニメを観るのにここまで慎重にならなくてはいけないってどうゆうこと? まあそれも稀有に終わり、毎週家族でこのテレビアニメを予約録画で観ている。

『映像研には手を出すな!』は、アニメ作りを目指す三人の女学生の話。萌えアニメがニガテな私でも、このタッチなら大丈夫。日本のアニメの泥臭さを削いで、オシャレにやろうとしてる。人と人とがぶつかったり、人生の壁に立ち向かうようなドラマをメインに持ってこないのは、湯浅政明監督の特徴。カッコよければ、他に何もなくてもいいって。

アニメはアニメ作りをする女学生たちの空想と妄想を行き来する。SF作家の発想の起源を、ビジュアル的にわかりやすく観せてくれる。でもやっぱりこれって男脳。オタクおじさんたちが集まってこちょこちょアニメを作ってる姿が見えてくる。自分たちを女学生に転化してオブラートに包む。オタクはもっと意地悪だし。

テレビアニメとは思えないほど製作費がかかってる。なんでもこれから乃木坂46で実写映画化もされるとか。な〜んだ、大企業が絡んだメディアミクス企画だったのね。

劇中では身内が携わった作品も取り上げていたので、我が家ではそれも盛り上がった。製作した時間よりも、はるかに多くの時間を割いてオタクたちに語り継がれたであろう作品。

当時のスタッフたちは、アニメーションをこれからやってくる新しい芸術で、カッコいいものとして取り組んでいた。でもその頃の人たちが年老いてから口々に、「結局俺たちはダメな大人をつくってしまった」と言っている。最先端のアートを目指していたのに、社会はそれを別の方向へと持っていった。クリエーターが自分のファンを嫌うという構図。なにごとも蓋を開けて見なければわからない。とても皮肉だ。

そういえば私が高校に進学して部活探しをしていたとき、アニメ部の門扉をくぐろうとしたことがある。まだオタクなんて言葉がなかった時代。絵を動かせるなんて、単純に面白いと興味を抱いた。

部室へ見学に行くと、教室の隅っこで数人の男女の先輩たちが背を向けて談笑している。私が入ってきたら、全員が冷たい目で睨んできた。ここから出て行けと視線は語っている。あまりのノット・ウェルカムぶりに怯んだ。「しつれいしました〜」と、その教室から後ずさり。新入生を歓迎しない部活ってあるんだとカルチャーショック。そのあと普通に受け入れてくれたバドミントン部へ入部した。オタクの文化部から運動部への転進。人生の選択肢なんて、そんなもの。それが良かったか悪かったかはわからない。まあ視野が広がったから良かったのかな。

たとえ好きな作品があっても、それのファンが好きになれなかった場合、その作品自体も嫌いになってしまうこともある。どんなジャンルでも、熱狂的なファンというのは厄介だ。

でも誰にだって、闇雲に自分の好きなものだけにのめり込みたい願望というものもある。生活や人間関係もまったく忘れて、ただ好きなことだけに没頭したい。「しがらみ」なんて私たちの世界には存在しない。そんな夢を叶えてくれるファンタジーがこのアニメなのかもしれない。現実によく似た、でも現実にはありえないファンタジー。

「何かになる夢」に向かう物語ではなく、「夢を見ることに夢をみる」という、かなり乾いた現代的な視点だろう。夢を見ることすら難しい社会での、逃避系エンターテイメントだ。まあ、アニメは基本的には現実逃避なんだけど。

関連記事

no image

宇多田ヒカル Meets 三島由紀夫『春の雪』

  昨日は4月になったにもかかわらず、 東京でも雪が降りました。 ということで『春の雪』。

記事を読む

no image

『坂本龍一×東京新聞』目先の利益を優先しない工夫

  「二つの意見があったら、 人は信じたい方を選ぶ」 これは本書の中で坂本龍

記事を読む

no image

『ファインディング・ドリー』マイノリティへの応援歌

  映画はひととき、現実から逃避させてくれる夢みたいなもの。いつからか映画というエン

記事を読む

no image

『Mr.インクレディブル』好きな仕事に就くこと

  今年続編が公開される予定のピクサー2004年の映画『Mr.インクレディブル』。も

記事を読む

no image

『千と千尋の神隠し』子どもが主役だけど、実は大人向け

  言わずもがなスタジオジブリの代表作。 フランスのカンヌ映画祭や アメリカのア

記事を読む

no image

『機動戦士ガンダム』とホモソーシャル

  『ガンダム』といえば、我々アラフォー世代男子には、 小学校の義務教育の一環とい

記事を読む

『いだてん』近代日本史エンタメ求む!

大河ドラマの『いだてん 〜東京オリムピック噺〜』の視聴率が伸び悩んでいるとよく聞く。こちらと

記事を読む

no image

『君たちはどう生きるか』誇り高く生きるには

  今、吉野源三郎著作の児童文学『君たちはどう生きるか』が話題になっている。

記事を読む

no image

ある意味アグレッシブな子ども向け映画『河童のクゥと夏休み』

  アニメ映画『河童のクゥと夏休み』。 良い意味でクレイジーな子ども向けアニメ映画

記事を読む

no image

『ひつじのショーン』おっと、子供騙しじゃないゾ!!

  ひつじ年を迎え『ひつじのショーン』を 無視する訳にはいかない。 今年はも

記事を読む

『鬼滅の刃 無限列車編』映画が日本を変えた。世界はどうみてる?

『鬼滅の刃』の存在を初めて知ったのは仕事先。同年代のお子さんが

『パラサイト 半地下の家族』国境を越えた多様性韓流エンタメ

ここのところの韓流エンターテイメントのパワーがすごい。音楽では

『ターミネーター/ニュー・フェイト』老人も闘わなければならない時代

『ターミネーター』シリーズ最新作の『ニュー・フェイト』。なんで

『家族を想うとき』頑張り屋につけ込む罠

  引退宣言をすっかり撤回して、新作をつくり続

『もののけ姫』女性が創る社会、マッドマックスとアシタカの選択

先日、『マッドマックス/怒りのデスロード』が、地上波テレビ放送

→もっと見る

PAGE TOP ↑