*

『硫黄島からの手紙』日本人もアメリカ人も、昔の人も今の人もみな同じ人間

公開日: : 最終更新日:2019/06/15 映画:ア行

 

クリント・イーストウッド監督による
第二次世界大戦の日本の激戦地
硫黄島を舞台にした戦争映画。

同監督による『父親たちの星条旗』と連作となる。
互いに戦ったアメリカ側と日本側で、
それぞれの視点で同じ戦争を描く意欲作。

当初イーストウッド監督は、
日本版は日系の監督に依頼しようと考えていたらしい。
外国人の自分には、正しい表現は無理だと見込んだのでしょう。

ただ、調べていくうちに、
日本人も自分たちもみな同じ人間だと
接点を感じ、自らメガホンをとる覚悟が決まったと聞きます。

戦争末期の日本は「一億総玉砕」と言われ、
勝っても負けても生きて還ってはいけない
という風潮がありました。

本土上陸の前哨戦にあたる硫黄島。
大本営に援軍を求めた渡辺謙演じる栗林忠道陸軍大将への返事は、
「鉄壁となって死ね」

日本兵は特攻や、追い詰められると自決する。
アメリカ兵からみたら、狂気の国民です。

イーストウッド監督が制作当初、
自分に感情移入できるか懸念したのも
理解できます。

しかしながら、完成した作品は
アメリカ版の『父親たちの星条旗』より
できが良かったとすら感じます。

よく終戦記念日などの街頭インタビューで、
「昔の人は偉かったんですね。お国のために死ねるなんて」
と答えている人がいます。果たして昔の人だったから偉かったのでしょうか?

時代が違っても、人間は人間。
戦争で死ぬなんて、イヤに決まってます。

人と自分が違うはずありません。

戦争で亡くなった人が特別な存在ではなく、
自分たちと同じだということです。

自分がイヤなことは、他の人もイヤ。

当時の彼らが英雄だったのではなく、
自分と同じ人間だということを受けとめた方がいい。

当時、戦争へ行って死んでいった人たちの気持ち、
ちょっと想像力を深めれば、理解できるはず。

外国人のイーストウッドだって、
分かり合えたのだから。


関連記事

『憐れみの3章』 考察しない勇気

お正月休みでまとまった時間ができたので、長尺の映画でも観てみようという気になった。ゆっくり休

記事を読む

『エイリアン』とブラック企業

去る4月26日はなんでもエイリアンの日だったそうで。どうしてエイリアンの日だったかと調べてみ

記事を読む

『犬ヶ島』オシャレという煙に巻かれて

ウェス・アンダーソン監督の作品は、必ず興味を惹くのだけれど、鑑賞後は必ず疲労と倦怠感がのしか

記事を読む

no image

『オデッセイ』 ラフ & タフ。己が動けば世界も動く⁉︎

2016年も押し詰まってきた。今年は世界で予想外のビックリがたくさんあった。イギリスのEU離脱や、ア

記事を読む

『イニシェリン島の精霊』 人間関係の適切な距離感とは?

『イニシェリン島の精霊』という映画が、自分のSNSで話題になっていた。中年男性の友人同士、突

記事を読む

『アーロと少年』 過酷な現実をみせつけられて

く、暗いゾ。笑いの要素がほとんどない……。 日本のポスタービジュアルが、アーロと少年ス

記事を読む

『ヴァチカンのエクソシスト』 悪魔は陽キャがお嫌い

SNSで評判だった『ヴァチカンのエクソシスト』を観た。自分は怖がりなので、ホラー映画が大の苦

記事を読む

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』 冒険の終わり、余生の始まり

ハリソン・フォードは『スター・ウォーズ』のハン・ソロ再演が評判だったのを機に、『ブレードラン

記事を読む

『推しの子』 キレイな嘘と地獄な現実

アニメ『推しの子』が2023年の春期のアニメで話題になっいるのは知っていた。我が子たちの学校

記事を読む

『1987、ある闘いの真実』 関係ないなんて言えないよ

2024年12月3日の夜、韓国で戒厳令が発令され、すぐさま野党によってそれが撤回された。日本

記事を読む

『侍タイムスリッパー』 日本映画の未来はいずこへ

昨年2024年の夏、自分のSNSは映画『侍タイムスリッパー』の

『ホットスポット』 特殊能力、だから何?

2025年1月、自分のSNSがテレビドラマ『ホットスポット』で

『チ。 ー地球の運動についてー』 夢に殉ずる夢をみる

マンガの『チ。』の存在を知ったのは、電車の吊り広告だった。『チ

『ブータン 山の教室』 世界一幸せな国から、ここではないどこかへ

世の中が殺伐としている。映画やアニメなどの創作作品も、エキセン

『関心領域』 怪物たちの宴、見ない聞かない絶対言わない

昨年のアカデミー賞の外国語映画部門で、国際長編映画優秀賞を獲っ

→もっと見る

PAGE TOP ↑