『平成狸合戦ぽんぽこ』さよなら人類
日テレ好例『金曜ロードSHOW』枠でのスタジオジブリ特集で『平成狸合戦ぽんぽこ』をやっていた。公開当時の1994年には自分も劇場で鑑賞したのを覚えている。それを小学生になったばかりのウチの子どもが、眠い目をこすりながら観ていた。内容はサッパリわからないとのこと。やっぱりね。この映画は特に主人公がいるわけではなく、人間の住宅開発がすすんで、山を追われていくタヌキたちの群像劇の描写ばかり。作品を通して、人間たちの暴力的な利己的開発を掲示しているわけだが、小さな子どもにはちと難しい内容。主人公がいないのでなかなかとっかかりにくく、感情移入はしづらい。ジブリ作品にしては観づらい部類に入りそうだ。
山が崩され、タヌキ達がどんどん死んでいく様をウチの子達がじーっと観ている。ふと本編のセリフの中で、落ち延びたタヌキの行き先に、自分の今住んでいる地の名前も挙がっていた。そういえば路地裏を彷徨うタヌキの姿を見たことがあったっけ。自分が住んでいる地の高台に大きなニュータウンが鎮座している。これは自分がここへ来る前には大きな山だったとのこと。その山は以前は子ども達の間で『タヌキ山』と呼ばれていたらしい。この『平成狸合戦ぽんぽこ』から約20年。その間に落ち延びたタヌキ達も、さらに生活の場所を追われてしまったことになる。そういえば実家のうしろにある森林公園にはタヌキがまだいるらしい。
以前、子ども二人と一緒にその森林公園で遊んでいたら、そこで働いているおじさんが話しかけてくれた。なんでもこの森林公園にはタヌキが6匹いるらしく、先日赤ちゃんを産んだのだが、自動車事故で死んでしまったとのこと。ここの森林公園でも注意しながら見守っているらしい。そんなことがあったねと、テレビで『ぽんぽこ』を観ている子どもに話したら、俄然この映画が現実的に感じたらしく「タヌキがかわいそう」とぎょっとしておりました。
この映画から20年が経ち、世の中の様子もだいぶ変わり、これからは世界的に人口が減っていく。人間が目先の利益のために破壊した地球環境の影響で、自然の生態系も崩れてしまっている。ここのところの自然の猛威は、地球規模で人間を粛正しようとしているようにも思えてならない。人間はたくさんの生命を無駄遣いしてきた。そろそろその報いを受ける頃なのかも知れない。淘汰されるべき存在は人間と、宇宙規模で判断されているのだろう。悪が栄えた試しはないとはよく言ったものです。
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