『グーニーズ』 ヤツは敵か味方か?
公開日:
:
最終更新日:2021/06/14
映画:カ行
自分が子どもの頃に夢中になっていた映画を、大人になった今、我が子と一緒に観直すのは楽しい。
以前、家電量販店に子どもたちと行ったとき、デモンストレーションで、2000年代になってからの新作版『インディ・ジョーンズ』が流れていた。ハラハラドキドキで、怖い場面満載の映画に、子どもたちは惹き込まれていた。すぐさま「この映画なに? 観たい!」となった。『インディ・ジョーンズ』は、ちょっと残酷な描写が多いので、ウチの子たちにはまだ早いかな。さすがに手放しで観せられない。……そうだ『グーニーズ』があった! あれなら子どもが主人公だし、コメディだ。安心して観せられる‼︎
でも最近ではこの『グーニーズ』も、テレビではなかなか放送できないらしい。放送コードにひっかかるらしい。
問題になるのはスロースというキャラクター。鎖につながれた大男。地下に監禁されて、絶叫してる。怖いったらありゃしない。スロースは悪党一家の末息子。小さいときに虐待にあって、顔が崩れ、奇形と障害をもつ。でも心は子どものままなので、純粋で優しい。『エレファント・マン』と友だちになれるだろうか? というのがこのキャラクターのアイデアだろう。
『グーニーズ』は、80年代当時のハリウッド映画で流行っていた要素をこれでもかと詰め込んでいる。パッチワークとイノベーションの巧みさ。
スロースは、人権に厳しくなった現代のテレビには、キワドイキャラクターだけど、やっぱり『グーニーズ』の映画には重要な存在。スロースなくては『グーニーズ』はありえない。
ウチの子たちも、スロースが登場した場面では、キャアキャア言って喜んでいた。グーニーズのメンバーで、食いしん坊のチャンクがスロースと対峙する場面、「このあとチャンクはどうなっちゃうの?」と子どもたちは固唾をのむ。怖いと思えた存在でさえ、相手がオープンマインドで接してくれたなら、すぐ友だちになれちゃう。子どもならではの垣根のなさ。容姿の奇異なんて関係ない。
スロースの生い立ちの設定は確かにダークでショッキングで悲惨なだけだけど、そんなキャラクターも『グーニーズ』の仲間に迎えられて、かけがえのない存在となっていく。自分は子どもの頃この映画を観たときに、そんなグーニーズたちの優しさが気に入った。
そしてスロースのように、どんなに過酷で理不尽な状況下にあっても、純粋な気持ちを守り続けることの大切さ。腐らず荒まず怒らず。人生の好転のチャンスはそこにある! いい意味でのおバカさんになろう‼︎
この映画が発表されて30年以上。いまだに愛され続けているのだから、それほど不謹慎な作品ではないのだと思う。今後、テレビではできないテーマでも映画なら扱えるのなら、媒体の区別化ができているのだから、それはそれで良いこと。映画の特別性が高まる。映画鑑賞は、ある程度懐の大きな、心のゆとりのある娯楽となる。
見た目が違うというだけで忌み嫌うのはダメだよと、感受性の鋭い子ならすぐ理解できる。でも見た目で感じた直感も信じたい。そのあんばいが難しい。偏見にならずに、ものごとを見定めるのは、なかなかオトナな技術らしいのです。
関連記事
-
『勝手にふるえてろ』平成最後の腐女子のすゝめ
自分はすっかり今の日本映画を観なくなってしまった。べつに洋画でなければ映画ではないとスカして
-
『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』 野心を燃やすは破滅への道
今年2023年の春、自分は『機動戦士ガンダム』シリーズの『水星の魔女』にハマっていた。そんな
-
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』 ヒーローは妻子持ちNG?
今年は『機動戦士ガンダム』の35周年。 富野由悠季監督による新作 『ガンダム Gのレコン
-
『華氏911』アメリカは日本が進む反面教師?
世界のパワーバランスが崩れ始めている。 平和ボケしている日本人にも とうとう
-
『グラン・ブルー』 ジワジワきた社会現象
スカーレット・ヨハンソン主演で リュック・ベッソン監督の最新作『LUCY』。 ベッソン映
-
ある意味アグレッシブな子ども向け映画『河童のクゥと夏休み』
アニメ映画『河童のクゥと夏休み』。 良い意味でクレイジーな子ども向けアニメ映画
-
『グッバイ、レーニン!』 長いものには巻かれて逃げろ
東西ドイツが統合された1989年。自分は子ども時代にそのニュースを見た。のちに学校の世界史の
-
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』 言わぬが花というもので
大好きな映画『この世界の片隅に』の長尺版『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』。オリジナル
-
『君の名は。』 距離を置くと大抵のものは綺麗に見える
金曜ロードショーで新海誠監督の『君の名は。』が放送されていた。子どもが録画していたので、自分
-
『鬼滅の刃 遊郭編』 テレビの未来
2021年の初め、テレビアニメの『鬼滅の刃』の新作の放送が発表された。我が家では家族みんなで