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『キャプテン・マーベル』脱・女性搾取エンタメ時代へ

公開日: : 映画:カ行

ディズニー・マーベル作品はリリース順に観ていくのが正しい。リンクネタがどこに散りばめられているかわからないので、思わぬネタバレがあったりする。

でも自分はどうしても『アベンジャーズ/エンドゲーム』が観たくて、その前作にあたる『キャプテン・マーベル』を飛び越して観てしまった。『エンドゲーム』から観たら、「キャプテン・マーベルって誰?」となるのは重々承知の助だった。

ディズニー・マーベル作品はとにかく明るい! 最近ワーナー・DCの『ジョーカー』を観たばかりだったから、その明暗がはっきりする。

DC作品の登場人物は、ヒーローも敵もみんな理不尽な現実に打ちのめされて病んでしまった人ばかり。特殊能力を持つというよりは、その能力にすがっているようにさえ見える。

反対にディズニー・マーベルの明るさは、特殊能力がもたらす日常生活の弊害をコメディタッチで描いている。この明るさがこのシリーズの成功の要因だったのかもしれない。アメコミ好きのオタクだけでなく、女性やファミリーまで客層に取り込んだ。ディズニーのマーケティングのうまさ。オタクカルチャーを、オシャレなコンテンツに料理してしまった。

最近のハリウッドは、マイノリティの人々へエールを送るようなテーマを作品に込めるのが主流だ。マーベル初の女性ヒーローの冠作品。当然女性の客層に不快感を与えないように配慮されている。共同監督に女性を起用しているのも狙い通り。

案外男女問わず、チャーミングで強い女性はみんな好きなもの。セクシーを売りにするような男性目線のキャラクターは、オタク文化では重宝されるかもしれないが、不特定多数の客層にうったえるには偏りすぎる。不快感を抱く人も現れるような作品だと、どんどんアンダーグラウンドになっていく。オタク向けの作品は、目先では儲かるように見えるが、客層は狭い。

ハリウッドが早々にジェンダー問題を作品の魅力に取り込むのは頭が良い。女性性ばかりが前面に出されたり、女性搾取を楽しむような作品はダサく思えてきた。もちろんその手の作品を全面否定するわけではないが、ゾーニングは必要だ。直接裸が出ていないからいいというものではない。フェチズムの扇動だって、心理的にはポルノだ。

ネタバレになるが、強い女性のシンボルのキャプテン・マーベルがイケメンをぶっ飛ばすところが楽しい。相手はイケメンだから、女性にモテる。もちろんそこまで顔がいいと同性も好感を持ってしまう。

モテる人は自分がモテてることは重々自覚している。どんなにステキな男性でも、いつしか女性には上から目線になってしまう。ムカつくポイントはそこ。

そんなイケメンを、一発でのしてしまうことのカタルシス。「でもあんたは殺さないであげるわ」って、逆に上から見下ろしてやる。これって男女問わずスッキリポイントなのではないだろうか?

最近日本では、献血のポスターにポルノ的なアニメ絵を載せて問題になっている。「表現の自由の侵害だ」という声もあるが、それは違うと思う。女性搾取の文化は昔から根強くあるし、それ自体を制限しても仕方がない。やっぱり重要なのはゾーニング。それが不特定多数の人が目にする媒体に適しているコンテンツか。ちょっと想像すればわかること。要は送り手の想像力の欠如。

ゾーニングといえば、レンタルショップのアニメコーナーが困る。子連れで行きたいのに、キッズ作品とポルノ的な作品、暴力的な作品が同じ棚に陳列されている。あきらかにアヤシイ輩も集まってくる。危険すぎて子どもが行けない。アニメコーナーなのに!

エンターテイメントは、いかに大勢を楽しませるかが重要。誰も不快感を与えないというのは、とても大切なことだ。ディズニー・マーベルは、そこのところキッチリ配慮している。

そういえば最近、マーティン・スコセッシ監督やフランシス・コッポラ監督が、マーベル映画に対して批判的な発言をした。「マーベルは映画じゃない」って。

でも映画の定義って何だろう? 映画を通して教養を得ようとか、社会問題について考えようとは、まず思わない。やっぱり「面白そうだから観る」といったシンプルなものだ。そこから興味を持って勉強を始めるのは個々によるもの。

アトラクション的映画がヒットするのは、とことん観客をおだてるのに徹しているから。むしろ頭を空っぽにして、日頃の嫌なことをひととき忘れさせてくれればいい。それだって映画の重要な役目だ。それこそスピルバーグやジェイムズ・キャメロン、JJエイブラムスなんかが出てきたときだって、「こんなの映画じゃない!」って言われてたはず。

マーベル映画の登場は、新しい映画のジャンルが生まれたことのなのだろう。巨匠監督が拒否反応を示すのがその証拠。老舗の危機感。時代の変化。

いろいろな映画があっていい。お金儲けに徹した映画も、何か問題意識を提起する映画も、教養的な映画も。ただいちばんマズイのは、偏った作品ばかりに触れてしまうこと。そうしてその人の視野が著しく狭くなってしまうこと。まず観客である我々は、現実の自分の生活をいちばんに考えなければいけない。趣味で身を滅ぼしては本末転倒。

息抜きの娯楽に人生が取り込まれないよう気をつけないと。エンターテイメント第一主義の作品は、お客さんをいい気分にさせてくれる。だからこそハマりやすい。息抜きの薬が毒にもなりかねない。もしかしたらその危険性に対して巨匠監督たちが警鐘を鳴らしているのかも。

楽しいものには毒がある。それを強く意識しながらエンターテイメントを楽しんだ方が、健全に付き合えそうだ。

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