『グラン・ブルー』 ジワジワきた社会現象
公開日:
:
最終更新日:2021/05/11
映画:カ行
スカーレット・ヨハンソン主演で
リュック・ベッソン監督の最新作『LUCY』。
ベッソン映画の過去最高のヒット作らしいですね。
ベッソンほど初期と今とで
作風の変わってしまった監督さんも珍しい。
自分は当時若かったこともあり、
初期作品の熱烈なファン。
この映画『グラン・ブルー』。
自分は10代のとき、リアルタイムで
100回は観たであろう映画。
この映画の主人公は自分だと思っておりました。
当初本作は『グレート・ブルー』と言うタイトルで、
二時間ちょうどの上映時間。
劇場公開はされど、客の不入りで打ち切り。
後にビデオになってから、ジワジワ人気となっていきました。
フランスでは社会現象となったほどの人気作。
俳優の竹中直人さんが、雑誌『ブルータス』で
『グレート・ブルー』やリュク・ベッソン監督に
対する愛を語った記事もきっかけで、
日本でも長尺版『グラン・ブルー』が公開される。
公開記念イベント上映では、
新宿ミラノ座の1000人収容の大箱に長蛇の列。
自分も観に行きましたが、
もうロックコンサートのような興奮状態。
こうして公開当時はコケた映画が、
あと評判でカルトムービーになる姿を
目の当たりにしたわけです。
初期のリュック・ベッソンの作品は
社会に順応できない若者の苦悩を描いていました。
最近はアクション映画ばかりになってしまいました。
あの頃の作風が懐かしいです。
この映画、女性にも人気がありますが、
描かれている世界は完全にホモソーシャル。
男のロマンは描いていても、
女性の心理はなかなか描かれていません。
ベッソン映画にでてくる女性キャラクターは
ルックスは良くても、性格が同性から嫌われそう。
当時10代の自分は、この映画のように
いつしか自分のロマンに
殉ずるものだろうと信じておりました。
奇しくも主人公のモデルになった
ジャック・マイヨールとは
誕生日も同じ4月1日。
彼の場合はフランス人だし、
まさしくプワゾン・ダブリル、四月の魚。
自分は日本人なので、四月バカ。
映画同様自殺してしまったマイヨール。
遺言には「さみしい」と書いてあったそうです。
夢に殉ずる憧れの裏には
本人にしか分からないつらい現実があるのかもしれません。
関連記事
-
-
発信者がウソをついてたら?『告白』
中島哲也監督作品、湊かなえ著原作『告白』。この映画の演出のセンスの良さにシビレま
-
-
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』 そこに自己治癒力はあるのか?
自分はどストライクのガンダム世代。作家の福井晴敏さんの言葉にもあるが、あの頃の小学生男子にと
-
-
日本企業がハリウッドに参入!?『怪盗グルーのミニオン危機一発』
『怪盗グルー』シリーズは子ども向けでありながら大人も充分に楽しめるアニメ映画。ア
-
-
『家族を想うとき』 頑張り屋につけ込む罠
引退宣言をすっかり撤回して、新作をつくり続けるケン・ローチ監督。市井の人
-
-
『桐島、部活やめるってよ』スクールカーストの最下層にいたあの頃の自分
原作小説と映画化、 映画公開後もものすごく話題になり、 日本アカデミー賞を総
-
-
『気狂いピエロ』 カワイイのセレクトショップ映画版
ジャン=リュック・ゴダールが91歳で亡くなった。ゴダールの名前を知ったのは自分が10代になる
-
-
『乾き。』ヌルい日本のサブカル界にカウンターパンチ!!
賛否両論で話題になってる本作。 自分は迷わず「賛」に一票!! 最近の『ド
-
-
『風立ちぬ』 招かざる未来に備えて
なんとも不安な気分にさせる映画です。 悪夢から覚めて、夢の内容は忘れても、 ただただ不安
-
-
『健康で文化的な最低限度の生活』 貧しさが先か、病が先か?
「なんか該当しそうな給付制度ありました?」 これは最近パパ友との会話で欠かせないトピック。こ
-
-
『関心領域』 怪物たちの宴、見ない聞かない絶対言わない
昨年のアカデミー賞の外国語映画部門で、国際長編映画優秀賞を獲った映画『関心領域』。日本が舞台