『間宮兄弟』とインテリア
江國香織さん原作の小説を、故・森田芳光監督で映画化された『間宮兄弟』。オタクの中年兄弟が、自分の趣味の世界に埋没して、なかなか恋愛に踏み出せないという話。江國さんの原作では「男子よ、もっとしっかりして!」という声が聞こえてきそうで、なんとも耳が痛かった。映画版は、同類のオタクがそのまま本職になっちゃった森田芳光監督だから、なんとなく視点は優しい。モテないダメダメ兄弟というよりは、タイミングが読めない不器用な人たちとして描かれている。彼らの恋愛がうまくいかないのは、相手の容姿ばかりに気を取られて、中身を見逃しているから。最近でこそ、オタクは悪いイメージしかないけど、本来は優しくて美意識が高かったりする人も多いのでは? と自己弁護。
この映画では間宮兄弟めぐる美女たちも魅力なのだが、兄弟のオタクマインド全開でも健全なライフスタイルの描写が好感がもてる。兄弟ふたりとも、毎日地道に仕事をこなしてる。けっこう仕事もできるっぽい!
それでとにかく兄弟の部屋がうらやましかったりする。まさにオタクのサンクチュアリ。フィギュアやゲームが陳列されているかと思いきや、さにあらず。部屋の壁一面には本がいっぱい。ウッド仕様の温かみのある統一された書棚は、パーテーションとしても上手にアレンジされている。オタクの部屋というよりは、作家の部屋といったところ。そういえば以前テレビで紹介されていた、脚本家の木皿泉夫妻の部屋もこんな感じだったから、モデルにしたのかも知れない。MUJI BOOKSや蔦屋書店も似たようなデザインだから、最近の流行りなのかも。
好きなものに囲まれて、それでいてオシャレな空間。最新の家電もそろえて、自由きままなこだわりの独身ライフを満喫。2006年の映画公開当時、いつかはこんな部屋に住みたいな~と思っておりましたが、こんな部屋だと地震が怖い。最近はポンポン買い物もしづらくなってきた。好きなものをコレクションするより、厳選に厳選を重ねて、良いものを少なく持つようになり始めた。本も読んだらすぐ処分したり、図書館を利用するようになった。CDなんかもデータ化するようになってきた。震災を経て、どちらかというと、モノを持たない『ミニマリスト』に近い思考となりつつある。
殺風景だけど、心地よい。モノは持たない(持てない)けれど、厳選したお気に入りの品はそろっている。極端すぎない絶妙なバランスの部屋づくりは、今後の楽しみとなりそうです。
関連記事
-
-
『SHOGUN 将軍』 アイデンティティを超えていけ
それとなしにチラッと観てしまったドラマ『将軍』。思いのほか面白くて困っている。ディズニープラ
-
-
『機動戦士ガンダムUC』 小説から始まり遂に完結!!
2010年スタートで完結まで4年かかった。 福井晴敏氏の原作小説は、遡る事2007年から。
-
-
『健康で文化的な最低限度の生活』 貧しさが先か、病が先か?
「なんか該当しそうな給付制度ありました?」 これは最近パパ友との会話で欠かせないトピック。こ
-
-
『裏切りのサーカス』 いちゃいちゃホモソーシャルの言い訳
映画『裏切りのサーカス』が面白いという勧めを知人から受けて、ずっと気になっていた。やっと観る
-
-
『マイマイ新子と千年の魔法』 真のインテリジェンスとは?
近年のお気に入り映画に『この世界の片隅に』はどうしも外せない。自分は最近の日本の作品はかなり
-
-
『団地ともお』で戦争を考える
小さなウチの子ども達も大好きな『団地ともお』。夏休み真っ最中の8月14日にNHK
-
-
『もののけ姫』女性が創る社会、マッドマックスとアシタカの選択
先日、『マッドマックス/怒りのデスロード』が、地上波テレビ放送された。地上波放送用に、絶妙な
-
-
『ローガン』どーんと落ち込むスーパーヒーロー映画
映画製作時、どんな方向性でその作品を作るのか、事前に綿密に打ち合わせがされる。制作費が高けれ
-
-
『電車男』オタクだって素直に恋愛したかったはず
草食男子って、 もう悪い意味でしか使われてないですね。 自分も草食系なんで…
-
-
『すーちゃん』女性の社会進出、それは良かったのだけれど……。
益田ミリさん作の4コママンガ 『すーちゃん』シリーズ。 益田ミリさんとも
