*

『間宮兄弟』とインテリア

公開日: : 最終更新日:2019/06/13 映画:マ行,

 

江國香織さん原作の小説を、故・森田芳光監督で映画化された『間宮兄弟』。オタクの中年兄弟が、自分の趣味の世界に埋没して、なかなか恋愛に踏み出せないという話。江國さんの原作では「男子よ、もっとしっかりして!」という声が聞こえてきそうで、なんとも耳が痛かった。映画版は、同類のオタクがそのまま本職になっちゃった森田芳光監督だから、なんとなく視点は優しい。モテないダメダメ兄弟というよりは、タイミングが読めない不器用な人たちとして描かれている。彼らの恋愛がうまくいかないのは、相手の容姿ばかりに気を取られて、中身を見逃しているから。最近でこそ、オタクは悪いイメージしかないけど、本来は優しくて美意識が高かったりする人も多いのでは? と自己弁護。

この映画では間宮兄弟めぐる美女たちも魅力なのだが、兄弟のオタクマインド全開でも健全なライフスタイルの描写が好感がもてる。兄弟ふたりとも、毎日地道に仕事をこなしてる。けっこう仕事もできるっぽい!

それでとにかく兄弟の部屋がうらやましかったりする。まさにオタクのサンクチュアリ。フィギュアやゲームが陳列されているかと思いきや、さにあらず。部屋の壁一面には本がいっぱい。ウッド仕様の温かみのある統一された書棚は、パーテーションとしても上手にアレンジされている。オタクの部屋というよりは、作家の部屋といったところ。そういえば以前テレビで紹介されていた、脚本家の木皿泉夫妻の部屋もこんな感じだったから、モデルにしたのかも知れない。MUJI BOOKS蔦屋書店も似たようなデザインだから、最近の流行りなのかも。

好きなものに囲まれて、それでいてオシャレな空間。最新の家電もそろえて、自由きままなこだわりの独身ライフを満喫。2006年の映画公開当時、いつかはこんな部屋に住みたいな~と思っておりましたが、こんな部屋だと地震が怖い。最近はポンポン買い物もしづらくなってきた。好きなものをコレクションするより、厳選に厳選を重ねて、良いものを少なく持つようになり始めた。本も読んだらすぐ処分したり、図書館を利用するようになった。CDなんかもデータ化するようになってきた。震災を経て、どちらかというと、モノを持たない『ミニマリスト』に近い思考となりつつある。

殺風景だけど、心地よい。モノは持たない(持てない)けれど、厳選したお気に入りの品はそろっている。極端すぎない絶妙なバランスの部屋づくりは、今後の楽しみとなりそうです。

 

関連記事

『あしたのジョー』は死んだのか?

先日『あしたのジョー』の主人公矢吹丈の ライバル・力石徹役の仲村秀生氏が亡くなりました。

記事を読む

no image

『はだしのゲン』残酷だから隠せばいいの?

  明日8月6日は広島の原爆の日ということで、『はだしのゲン』ドラマ版の話。

記事を読む

『かもめ食堂』 クオリティ・オブ・ライフがファンタジーにならないために

2006年の日本映画で荻上直子監督作品『かもめ食堂』は、一時閉館する前の恵比寿ガーデンシネマ

記事を読む

no image

宿命も、運命も、優しく包み込む『夕凪の街 桜の国』

  広島の原爆がテーマのマンガ。 こうの史代氏著『夕凪の街 桜の国』。 戦争

記事を読む

『進撃の巨人 完結編』 10年引きずる無限ループの悪夢

自分が『進撃の巨人』のアニメを観始めたのは、2023年になってから。マンガ連載開始15年、ア

記事を読む

『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』その扇動、のるかそるか?

『ハリー・ポッター』シリーズのスピンオフ『ファンタスティック・ビースト』の第二弾。邦題は『黒

記事を読む

no image

『バウンス ko GALS』JKビジネスの今昔

  JKビジネスについて、最近多くテレビなどメディアで とりあつかわれているような

記事を読む

『下妻物語』 若者向け日本映画の分岐点

台風18号は茨城を始め多くの地に甚大なる被害を与えました。被害に遭われた方々には心よりお見舞

記事を読む

no image

『モモ』知恵の力はディストピアも越えていく

ドイツの児童作家ミヒャエル・エンデの代表作『モモ』。今の日本にとてもあてはまる童話だ。時間泥棒たちに

記事を読む

『愛の渦』ガマンしっぱなしの日本人に

乱交パーティの風俗店での一夜を描いた『愛の渦』。センセーショナルな内容が先走る。ガラは悪い。

記事を読む

『ケナは韓国が嫌いで』 幸せの青い鳥はどこ?

日本と韓国は似ているところが多い。反目しているような印象は、歴

『LAZARUS ラザロ』 The 外資系国産アニメ

この数年自分は、SNSでエンタメ情報を得ることが多くなってきた

『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』 みんな良い人でいて欲しい

『牯嶺街少年殺人事件』という台湾映画が公開されたのは90年初期

『パスト ライブス 再会』 歩んだ道を確かめる

なんとも行間の多い映画。24年にわたる話を2時間弱で描いていく

『ロボット・ドリームズ』 幸せは執着を越えて

『ロボット・ドリームズ』というアニメがSNSで評判だった。フラ

→もっと見る

PAGE TOP ↑