*

『レクイエム・フォー・ドリーム』 めくるめく幻覚の世界

公開日: : 最終更新日:2021/12/27 アニメ, 映画:ラ行

「シェシェシェのシェー」と叫びながら隣人女性に危害を加えて捕まった男がいましたね。危険ドラッグを投与しての反抗とか。その加害者が連行されていく映像は、完全に別のものをみているようでしたね。自分を撮影している報道陣のフラッシュに大はしゃぎしている。ラリっている人はああなるのかと、半分笑えて半分ゾッとしたものです。

危険ドラッグ、マジックマッシュルーム……。合法だけれど、覚せい剤と同じように幻覚をみる危険なものがいつも世間に流布する。なんでも危険ドラッグは中国の工場から輸入されるとか? 検閲通すため、加工に加工を重ね原型がわからなくなって、特効薬を処方できないくらいらしい。どうやら日本は中国に狙われているのかな? ここでも貧しい中国の人たちが、合法ならいいじゃないかとばかりに堂々と危険ドラッグを作っているらしい。もう一つの産業。明らかに犯罪なのに許されてることってけっこう目立ちますよね。危険ドラッグをかろうじて合法にして、中国から輸入を許すなんて、日本人に中国人を嫌いになる理由をつくっているのではと邪推してしまう。

この映画『レクイエム・フォー・ドリーム』はとくにストーリーもある訳でもなく、普通の人がドラッグに触れ、幻覚を見続けるというイマジネーション描写で突き進むトンデモ映画だ。

おばあちゃんが、ダイエット薬と思い込みドラッグを飲み、神経がどんどん鋭敏になっていき、冷蔵庫など家中のものが自分を襲ってくる場面は本当に恐ろしい。クライマックスは、幻覚のオンパレード。この映画観たら、ドラッグ的なものには関わりたくないと感じるはず。

監督はロシア系ユダヤ人のダーレン・アロノフスキー。後にナタリー・ポートマン主演の『ブラック・スワン』を撮る監督さん。現実と幻覚の交錯する、ホラータッチのイマジネーションはリアリティがあり恐ろしい。アロノフスキー監督、自分と歳が近かったのでビックリ。そんなに若かったのね!? なんでも彼、日本のアニメ監督故・今敏監督のファンであるらしい。本作でジェニファー・コネリーがバスタブの底で絶叫する描写が今敏監督の『パーフェクト・ブルー』に似ているなあと感じていたので、やっぱりなと思いました。

とにかく後味の悪い映画です。映画を見終わった後、渋谷の映画館の前でマジックマッシュルームを路面で売ってるお兄ちゃんが警官に職務質問されてました。ドラッグは簡単に手に入るな~。怖いな~と実感した日でした。

「シェシェシェのシェー」の加害者もこの映画のような幻覚をみていたのかもしれませんね。

関連記事

『なつぞら』自分の人生とは関係ないドラマのはずだったのに……

「アニメーターってなによ?」7歳になる息子が、NHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』の番宣での

記事を読む

『ゲゲゲの女房』本当に怖いマンガとは?

水木しげるさんの奥さんである武良布枝さんの自伝エッセイ『ゲゲゲの女房』。NHKの朝ドラでも有

記事を読む

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』 言わぬが花というもので

大好きな映画『この世界の片隅に』の長尺版『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』。オリジナル

記事を読む

『ヒックとドラゴン/聖地への冒険』 変わっていく主人公

いまEテレで、テレビシリーズの『ヒックとドラゴン』が放送されている。小学生の息子が毎週それを

記事を読む

『シェイプ・オブ・ウォーター』懐古趣味は進むよどこまでも

今年2018年のアカデミー賞の主要部門を獲得したギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・

記事を読む

『銀河鉄道の夜』デザインセンスは笑いのセンス

自分の子どもたちには、ある程度児童文学の常識的な知識は持っていて欲しい。マンガばかり読んでい

記事を読む

no image

Someone to watch over me!!『LIFE!』

  自分が20代のはじめの頃、 正社員で勤めた時の会社の上司に こう言われました

記事を読む

『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』 自立とはなんだろう

イラストレーターのヒグチユウコさんのポスターでこの映画を知った。『ルイス・ウェイン 生涯愛し

記事を読む

no image

日本企業がハリウッドに参入!?『怪盗グルーのミニオン危機一発』

  『怪盗グルー』シリーズは子ども向けでありながら大人も充分に楽しめるアニメ映画。ア

記事を読む

『新幹線大爆破(Netflix)』 企業がつくる虚構と現実

公開前から話題になっていたNetflixの『新幹線大爆破』。自分もNetflixに加入してい

記事を読む

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』 普通に生きるという特殊能力

リチャード・カーティス監督の『アバウト・タイム』は、ときどき話

『ヒックとドラゴン(2025年)』 自分の居場所をつくる方法

アメリカのアニメスタジオ・ドリームワークス制作の『ヒックとドラ

『世にも怪奇な物語』 怪奇現象と幻覚

『世にも怪奇な物語』と聞くと、フジテレビで不定期に放送している

『大長編 タローマン 万博大爆発』 脳がバグる本気の厨二病悪夢

『タローマン』の映画を観に行ってしまった。そもそも『タローマン

『cocoon』 くだらなくてかわいくてきれいなもの

自分は電子音楽が好き。最近では牛尾憲輔さんの音楽をよく聴いてい

→もっと見る

PAGE TOP ↑