『レクイエム・フォー・ドリーム』 めくるめく幻覚の世界
「シェシェシェのシェー」と叫びながら隣人女性に危害を加えて捕まった男がいましたね。危険ドラッグを投与しての反抗とか。その加害者が連行されていく映像は、完全に別のものをみているようでしたね。自分を撮影している報道陣のフラッシュに大はしゃぎしている。ラリっている人はああなるのかと、半分笑えて半分ゾッとしたものです。
危険ドラッグ、マジックマッシュルーム……。合法だけれど、覚せい剤と同じように幻覚をみる危険なものがいつも世間に流布する。なんでも危険ドラッグは中国の工場から輸入されるとか? 検閲通すため、加工に加工を重ね原型がわからなくなって、特効薬を処方できないくらいらしい。どうやら日本は中国に狙われているのかな? ここでも貧しい中国の人たちが、合法ならいいじゃないかとばかりに堂々と危険ドラッグを作っているらしい。もう一つの産業。明らかに犯罪なのに許されてることってけっこう目立ちますよね。危険ドラッグをかろうじて合法にして、中国から輸入を許すなんて、日本人に中国人を嫌いになる理由をつくっているのではと邪推してしまう。
この映画『レクイエム・フォー・ドリーム』はとくにストーリーもある訳でもなく、普通の人がドラッグに触れ、幻覚を見続けるというイマジネーション描写で突き進むトンデモ映画だ。
おばあちゃんが、ダイエット薬と思い込みドラッグを飲み、神経がどんどん鋭敏になっていき、冷蔵庫など家中のものが自分を襲ってくる場面は本当に恐ろしい。クライマックスは、幻覚のオンパレード。この映画観たら、ドラッグ的なものには関わりたくないと感じるはず。
監督はロシア系ユダヤ人のダーレン・アロノフスキー。後にナタリー・ポートマン主演の『ブラック・スワン』を撮る監督さん。現実と幻覚の交錯する、ホラータッチのイマジネーションはリアリティがあり恐ろしい。アロノフスキー監督、自分と歳が近かったのでビックリ。そんなに若かったのね!? なんでも彼、日本のアニメ監督故・今敏監督のファンであるらしい。本作でジェニファー・コネリーがバスタブの底で絶叫する描写が今敏監督の『パーフェクト・ブルー』に似ているなあと感じていたので、やっぱりなと思いました。
とにかく後味の悪い映画です。映画を見終わった後、渋谷の映画館の前でマジックマッシュルームを路面で売ってるお兄ちゃんが警官に職務質問されてました。ドラッグは簡単に手に入るな~。怖いな~と実感した日でした。
「シェシェシェのシェー」の加害者もこの映画のような幻覚をみていたのかもしれませんね。
関連記事
-
『映像研には手を出すな!』好きなことだけしてたい夢
NHKの深夜アニメ『映像研には手を出すな!』をなぜか観始めてしまった。 実のところなん
-
『Love Letter』 ヨーロッパ映画風日本映画
岩井俊二監督の『Love Letter』。 この映画をリアルタイムで観たときに 「やられ
-
『名探偵ピカチュウ』日本サブカル、これからどうなる?
日本のメディアミックス作品『ポケットモンスター』を原作に、ハリウッドで製作された実写映画『名
-
『パシフィック・リム』 日本サブカル 世界進出への架け橋となるか!?
『ゴジラ』ハリウッドリメイク版や、 トム・クルーズ主演の 『オール・ユー・ニード・イズ・
-
『ヴァチカンのエクソシスト』 悪魔は陽キャがお嫌い
SNSで評判だった『ヴァチカンのエクソシスト』を観た。自分は怖がりなので、ホラー映画が大の苦
-
『SLAM DUNK』クリエイターもケンカに強くないと
うちの子どもたちがバスケットボールを始めた。自分はバスケ未経験なので、すっかり親のスキルを超
-
『未来少年コナン』 厄介な仕事の秘密
NHKのアニメ『未来少年コナン』は、自分がまだ小さい時リアルタイムで観ていた。なんでもNHK
-
『おさるのジョージ』嗚呼、黄色い帽子のおじさん……。
もうすぐ3歳になろうとするウチの息子は イヤイヤ期真っ最中。 なにをするにも
-
『リアリティのダンス』ホドロフスキーとトラウマ
アレハンドロ・ホドロフスキーの23年ぶりの新作『リアリティのダンス』。ホドロフスキーと言えば
-
『キングスマン』 威風堂々 大人のわるふざけ
作品選びに慎重なコリン・ファースがバイオレンス・アクションに主演。もうそのミスマッチ感だけで