*

『坂の上の雲』呪われたドラマ化

公開日: : 最終更新日:2015/11/08 テレビ, ドラマ, 映画:サ行, 音楽

imgcb5be87ezik4zj

今なお根強い人気がある司馬遼太郎氏著の『坂の上の雲』。秋山好古と真之兄弟と正岡子規の三人を主人公にした日露戦争時代の史実を基にした物語。NHKで大河ドラマの枠で3年にわたって放送された。大河ドラマと言えば1月の新春から12月の年末まで丸々一年間、ひとつの作品を放送するものだったが、この三年間だけは例年より1ヶ月早い11月に終了して、後の1ヶ月は『坂の上の雲』を放送した。1シーズンを終える度、続きは一年後だけど覚えていられるかな~と思ったが、なんの問題もなく三年が過ぎていった。

このドラマ化は実は以前から何度もウワサされていて実現に至らなかった。司馬遼太郎氏には連載中からドラマ化の打診がされていたのだが、司馬氏が「戦争賛美と誤解されるから」と映像化を拒み続けていた。司馬氏が亡くなりNHKは再度映像化を求め、誠意を尽くすカタチにするという約束のもと野沢尚氏の脚本でドラマ化が進む。野沢尚氏といえば、自分が執筆のまねごとをしていた頃、素人脚本家のコンペティションのメイン審査員をされていた。ご自身もこのコンペティションでの受賞がきっかけでプロの道に入ったということもあってか、かなり新しい才能を伸ばそうと尽力してくれていました。その野沢尚氏の自殺によりこのドラマ化はしばらく頓挫することとなる。殆どが野沢尚氏が生前書き上げていたそうだが、それが共同執筆となりドラマ化、結果としては名作となった。音楽は久石譲氏、主題歌はサラ・ブライトマン、ナレーションは渡辺謙さん。出演は本木雅弘さんや阿部寛さん、香川照之さん、菅野美穂さんと華やかな青春群像劇としてとても面白い作品だった。

当時の歴史観を描くため、時としてこの主人公達が活躍しない場面も多々ある。203高地の場面などとくに印象に残る。ロシアとの戦いで、そもそも突破は不可能な無理難題の作戦。それを強行して日本が制覇するわけだが、そこには多くの兵の死があってのこと。ここではメインキャラクターが登場しないので、多くの死がなんとなく抽象的に描かれている。戦争の作戦では、いくら人が死のうとも作戦が遂行されればそれは美談となる。無茶な命令を出した指揮官は、のうのうと天寿を全うする。作中でサラリと描いているが故、戦争は美しいものではなく、醜くむごたらしいものということがぼかされてしまう。司馬遼太郎氏の懸念はここにあるのだろう。

人気作にも関わらず、なかなか映像化が実現しなかった『坂の上の雲』。安易に触れてはいけないテーマが作中に孕んでいて、あたかも呪いのようにドラマ化を阻止しようとする力が作用したのかも知れない。

関連記事

『パイレーツ・オブ・カリビアン』映画は誰と観るか?

2017年のこの夏『パイレーツ・オブ・カリビアン』の新作『最後の海賊』が公開された。映画シリーズ

記事を読む

『勇者ヨシヒコと魔王の城』究極の安っぽさの追求

このドラマの番宣ポスターをはじめてみたとき、 正直、期待してしまいました。 「おっ、とう

記事を読む

『プロジェクトA』ジャッキー映画でちょっと強くなった気になる

ジャッキー・チェンの映画を観たあとは、観るまえよりちょっとだけ気が大きくなる。なんだか自分も

記事を読む

『うつヌケ』ゴーストの囁きに耳を傾けて

春まっさかり。日々暖かくなってきて、気持ちがいい。でもこの春先の時季になると、ひんぱんに人身

記事を読む

『あの頃ペニー・レインと』実は女性の方がおっかけにハマりやすい

名匠キャメロン・クロウ監督の『あの頃ペニー・レインと』。この映画は監督自身が15歳で音楽ライ

記事を読む

『グラディエーター』Are You Not Entertained?

https://www.youtube.com/watch?v=QPk1NdvplCI[/capt

記事を読む

はやいことに三代目『いないいないばぁっ!!』『みいつけた!』

小さい子どもがいる家の 朝の定番番組はNHK Eテレ。 ホントは朝はニュースとかみた

記事を読む

『風と共に去りぬ』時代を凌駕した人生観

小学生の娘が突然、映画『風と共に去りぬ』が観たいと言い出した。なかなか渋い趣味。いいですよ観

記事を読む

ブライト・ノアにみる大人のあり方『機動戦士ガンダム』

『機動戦士ガンダム』は派生作品があまりに多過ぎて、 TSUTAYAでは1コーナー出来てしま

記事を読む

『母と暮せば』Requiem to NAGASAKI

残り少ない2015年は、戦後70年の節目の年。山田洋次監督はどうしても本年中にこの映画『母と

記事を読む

PAGE TOP ↑