*

『スターウォーズ/フォースの覚醒』語らざるべき新女性冒険譚

公開日: : 最終更新日:2019/06/13 アニメ, 映画:サ行, 音楽

 

I have a goood feeling about this!!

やっとこさ『スターウォーズ』の新作『エピソードⅦ/フォースの覚醒』を観ることができた。この待ちに待ったシリーズ最新作。監督のJ・J・エイブラムスはじめ、多くの人がネット上でのネタバレを警戒していた。ネットでは『フォースブロック』なるネタバレ防止の拡張機能まで作られる次第。自分の周りでも公開3日間で観に行った方は多かったけれど、誰として内容に言及する人はいなかった。口のかたい、未見の人を思いやる心あるみんなに、フォースのご加護あれ! そう、この新作は未見の人に内容を語ってはいけない映画なのです。だから自分もネタバレはしないつもりですが、何も知りたくない方はここから先はご注意下さいませ。

『スターウォーズ/フォースの覚醒』は映画館によって上映方法が様々。3D上映だけではなく、IMAX、最新の4DXやら、『スターウォーズ』の生みの親・ルーカスが開発したイオンシネマ海老名のTHX、ドルビーアトモス、立川シネマシティでは独自の『極上爆音上映』なるものもあり、まったくもって目移りしてしまう。で、自分も『スターウォーズ』ならば特別興行で観たいと思い、ネット予約しようとした。確定ボタンを押す瞬間、請求額に愕然とした。先日親子三人で『妖怪ウォッチ』の映画を観た時の総額より、一人で観る『スターウォーズ』の方が高額なのだ!! 普段の映画の2〜3倍の入場料。さすがの特別興行の高騰ぶりに、確定ボタンのクリックの指が止まりました。ふとこの差額で、子ども達と楽しめることに使った方が意義深く思えてしまった。自分はプリクエール三部作(ep.Ⅰ〜Ⅲ)の時は徹夜して先行オールナイトを観た口。このシリーズに労力もカネも惜しまないくらい。でも当時は独身。今ではこの高額をポンと出すには勇気がいる。ということで2Dで鑑賞することにしました。それでも充分楽しめました。平日の昼間に行ったからか、2Dだったからか、空いててゆったり観れた。初日のお祭り騒ぎが嘘みたい。今まで特別興行で映画を観て、楽しめはしたけれど、やはり果たしてこの高額はどんなものかといつも疑問を感じていた。入場料、もう少し安くならんのかしら?

この最新作を観ると、クラシック三部作(ep.Ⅳ〜Ⅵ)をすぐ観直したくなる。けっしてプリクエール三部作じゃなくてね。プリクエール三部作は、当時不評だったけれど、自分はそれはそれで好き。プリクエールは悪が勝って終わる暗い話だし、群像劇で感情移入しずらいから不人気なのかも? 今回は主人公を絞って、個人の目線で物語が進んでいく、とても観やすい映画。

この『フォースの覚醒』は『スターウォーズ』の続編新作であるけれど、J・J・エイブラムス監督の新作でもある。JJ特有の、テンポのいいキャラクター紹介や、説明的な場面でもスルリと流れでみせてしまう演出テクニックは健在。前作のオマージュも交えながら新しい作品を作ろうとしてる「本気」を感じる。『スターウォーズ』の魅力は、敷居が低いこと。初めて観る人にも、手を広げて受け入れてくれる。この『フォースの覚醒』からはじめてシリーズに触れる観客にも優しくわかりやすいつくり。新しい観客は、興味がわけばその前のシリーズを観ていけばいい。JJは『スタートレック』のリブート作も監督しているが、これもオールドファンはもちろん納得できて、それでいて新参の観客も楽しめるような親切な工夫がホントに上手い。まったくもって手練の監督さんなのです。

今度の新三部作は、女の子が主人公。これって三十年以上前の第一作の時代では考えられなかったこと。こういったSFファンタジー冒険譚は、少年が主人公なのが鉄則だった。本来は男の子の世界。でも時代は変わり、いっけん華奢だけど強い女の子が、マスコット(ドロイドのBB8)と一緒に旅を進めていく。彼女がいく先々で、仲間がどんどん増えて、たくましくなっていく。RPGの楽しさ。これってジブリ作品の影響もあるだろうし、男ばかりのファンタジーは出尽くしたのかも。主人公のレイが登場した時の音楽が、ジョン・ウイリアムズなのに、心なし久石譲チックになったような気がした。男の世界で女の子が活躍するのは、男にとっては萌えポイントだし、女人禁制のSF映画に女性客を惹き入れる魅力にもなる。そうなると、ますます男の出番がなくなってくる。白人女性と黒人男性が主人公という、いままでのエンターテイメントではあまり使われない組み合わせ。『スターウォーズ』という、スタンダードアイコンを舞台にしながら、ジワジワ新しいことに踏み込んでいる制作者の意欲がニクい!! とにかく、はやく続きがみたくなる。さあ、次回作『エピソードⅧ』が公開されるまでに、自分は一体何回この『フォースの覚醒』を観直すのだろう……。

May the force be with US!!

関連記事

『時効警察はじめました』むかし切れ者という生き方

『時効警察』が12年ぶりの新シリーズが始まった。今期の日本の連続ドラマは、10年以上前の続編

記事を読む

no image

『くまのプーさん』ハチミツジャンキーとピンクの象

  8月3日はハチミツで、『ハチミツの日』。『くまのプーさん』がフィーチャーされるの

記事を読む

no image

『ドリーム』あれもこれも反知性主義?

  近年、洋画の日本公開での邦題の劣悪なセンスが話題になっている。このアメリカ映画『

記事を読む

no image

『ひつじのショーン』おっと、子供騙しじゃないゾ!!

  ひつじ年を迎え『ひつじのショーン』を 無視する訳にはいかない。 今年はも

記事を読む

no image

低予算か大作か?よくわからない映画『クロニクル』

  ダメダメ高校生三人組が、未知の物体と遭遇して 超能力を身につけるというSFもの

記事を読む

『未来のミライ』真の主役は建物の不思議アニメ

日本のアニメは内省的で重い。「このアニメに人生を救われた」と語る若者が多いのは、いかに世の中

記事を読む

no image

『トロールズ』これって文化的鎖国の始まり?

  配信チャンネルの目玉コーナーから、うちの子どもたちが『トロールズ』を選んできた。

記事を読む

no image

『葉加瀬太郎』と子どもの習い事

何でも今年は葉加瀬太郎さんのデビュー25周年らしいです。まだ『クライズラー&カンパニー』がそ

記事を読む

『進撃の巨人』 残酷な世界もユーモアで乗り越える

今更ながらアニメ『進撃の巨人』を観始めている。自分はホラー作品が苦手なので、『進撃の巨人』は

記事を読む

no image

『ダンケルク』規格から攻めてくる不思議な映画

クリストファー・ノーランは自分にとっては当たり外れの激しい作風の監督さん。 時系列が逆に進む長

記事を読む

『チェンソーマン レゼ編』 いつしかマトモに惹かされて

〈本ブログはネタバレを含みます〉 アニメ版の『チ

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』 普通に生きるという特殊能力

リチャード・カーティス監督の『アバウト・タイム』は、ときどき話

『ヒックとドラゴン(2025年)』 自分の居場所をつくる方法

アメリカのアニメスタジオ・ドリームワークス制作の『ヒックとドラ

『世にも怪奇な物語』 怪奇現象と幻覚

『世にも怪奇な物語』と聞くと、フジテレビで不定期に放送している

『大長編 タローマン 万博大爆発』 脳がバグる本気の厨二病悪夢

『タローマン』の映画を観に行ってしまった。そもそも『タローマン

→もっと見る

PAGE TOP ↑