*

男は泣き、女は勇気をもらう『ジョゼと虎と魚たち』

公開日: : 最終更新日:2019/06/14 映画:サ行,

 

この映画『ジョゼと虎と魚たち』。
公開当時、ミニシアター渋谷シネクイントに
長蛇の列に並んで観た記憶がある。

当時単館作品で、しかも日本映画で
ここまで人気があるのは珍しい。

そもそも原作は田辺聖子さんの短編。
監督は女性的な描写がうまい犬童一心さん。

犬童監督の恋愛ものの特徴として、
とにかくキスシーンが長いんですね。
で、この作品も生々しいラブシーンが
大きな効果を出しているんです。

夢物語のラブラブだけではすまされない。
現実世界のドロドロも既視感として伝わってくる。

若者向けの恋愛もので、
きちんと男のズルさを描いているんですね。
主人公の足の不自由な若い女性は、
そんなズルさも受け止め、彼が去った後も
この思い出を抱えて、この後の人生を
独りで生きて行く覚悟の映画なんですね。

ラストシーンでの彼女の後ろ姿が力強い。
それを言葉でなく、映像で観せた演出は見事です。

若者向けの映画だけど、
大人になっても心を動かされるのです。

この作品で脚本を書かれたのは
本作でデビューの渡辺あやさん。

主婦の合間、自分も応募したことがある
岩井俊二監督の素人作家の発掘サイトから
頭角を現した方です。

彗星のごとく表れた渡辺さやさん。
どんな方なのかと興味津々でしたが、
インタビューをみると、
自分がシナリオライター養成所で
出会った方々と同じタイプでした。

とくにスペシャルな感じはしませんでした。
ちょっとがっかりしたくらい。

デビューする、しないの境目は、
それほど大きくはないのかも知れませんね。

重要なのは、デビュー後のパワーの継続かな?

 

関連記事

『デザイナー渋井直人の休日』カワイイおじさんという生き方

テレビドラマ『デザイナー渋井直人の休日』が面白い。自分と同業のグラフィックデザイナーの50代

記事を読む

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』 戦場のセンチメンタル

アメリカの独立系映画スタジオ・A24の作品で、同社ではかつてないほどの制作費がかかっていると

記事を読む

『チ。 ー地球の運動についてー』 夢に殉ずる夢をみる

マンガの『チ。』の存在を知ったのは、電車の吊り広告だった。『チ。』というへんなタイトルがキャ

記事を読む

『THE FIRST SLAM DUNK』 人と協調し合える自立

話題のアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』をやっと観た。久しぶりに映画館での

記事を読む

no image

デート映画に自分の趣味だけではダメよ!!『サンダーバード』

  なんでも『サンダーバード』が50周年記念で、新テレビシリーズが始まったとか。日本

記事を読む

『キングコング 髑髏島の巨神』 映画体験と実体験と

なんどもリブートされている『キングコング』。前回は『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジ

記事を読む

『火垂るの墓』 戦時中の市井の人々の生活とは

昨日、集団的自衛権の行使が容認されたとのこと。 これから日本がどうなっていくのか見当も

記事を読む

『透明なゆりかご』 優しい誤解を選んでいく

NHKで放送していたドラマ『透明なゆりかご』。産婦人科が舞台の医療もの。これは御涙頂戴の典型

記事を読む

『イニシェリン島の精霊』 人間関係の適切な距離感とは?

『イニシェリン島の精霊』という映画が、自分のSNSで話題になっていた。中年男性の友人同士、突

記事を読む

『AKIRA』 ジャパニメーション黎明期

日本のアニメが凄いと世界に知らしめた エポックメーキング的作品『AKIRA』。 今更

記事を読む

『侍タイムスリッパー』 日本映画の未来はいずこへ

昨年2024年の夏、自分のSNSは映画『侍タイムスリッパー』の

『ホットスポット』 特殊能力、だから何?

2025年1月、自分のSNSがテレビドラマ『ホットスポット』で

『チ。 ー地球の運動についてー』 夢に殉ずる夢をみる

マンガの『チ。』の存在を知ったのは、電車の吊り広告だった。『チ

『ブータン 山の教室』 世界一幸せな国から、ここではないどこかへ

世の中が殺伐としている。映画やアニメなどの創作作品も、エキセン

『関心領域』 怪物たちの宴、見ない聞かない絶対言わない

昨年のアカデミー賞の外国語映画部門で、国際長編映画優秀賞を獲っ

→もっと見る

PAGE TOP ↑