*

『坂本龍一×東京新聞』目先の利益を優先しない工夫

公開日: : 最終更新日:2019/06/15 , 音楽

 

「二つの意見があったら、
人は信じたい方を選ぶ」

これは本書の中で坂本龍一さん
(以下教授)が言った言葉。

「これをやったら金持ちになれるかもよ」
そう言われると人はそちらを優先してしまう。
今のメディアを始め、日本の社会自体がそんな風潮。
ビジネス中心の報道。

でも今は高度成長期とは違う。
商品を揃えれば飛ぶように
売れるような時代ではない。

そしてこの「金持ちになれるかもよ」の言葉の裏には
「そのかわりどうなるかは知らないよ」という
無責任な意味合いも含んでいる。

教授は東京新聞に向かって
「左翼新聞と思われないように」と警告している。

自分もすっかり東京新聞は左翼系かと思っていた。
自民党を批判したり、リベラルな意見を発すると
いまはすぐ左翼となってしまうのかもしれない。

本編では反原発について多く語っているが、
急激におかしな方向へ向かっている
日本についても批判的に語っている。

目先の金儲けや、便利さに心を奪われるのは
先々の道を踏み間違えやすい。

「正しいことを言ってるんだから聞けよ」とか
「深刻な話をしかめっ面で話すと聞いてもらえない」と
正しく伝える工夫をしてほしいと、教授は東京新聞に伝えている。
とてもわかりやすい言葉。

先日夜の11時頃、帰りも遅くなり晩飯もまだだったので、
24時間営業のファーストフード店へ入った。

店の外から若い女性が、トイレを貸して欲しいと
店員に頼むと、即答で断られ、すぐ出て行ってしまった。

それを見た若い男性が、店員につかみかかり
「トイレぐらい貸してやれよ! ケチ臭い店だな!!」
と大声で延々怒鳴っていました。

店員は「防犯ベルならしますよ」と言ったので、
男はそそくさと外へ出て行きました。

その若い男の言っていることは間違ってはいない。
ただ店内で怒鳴ってしまっては本末転倒。

なぜその男はそんなに怒ったのか?
世知辛い世の中が見えてくる。

マニュアル通りに対応する店員に
冷たさを感じたのか?
彼もそうした冷たい環境で働いているのか?
なぜこんな夜遅くまで働かなければならないのか?

ふと夜中もあいている店に入ってしまったが、
別に店も24時間営業する必要もない。
店がやっていなければ他の方法を考える。

便利に慣れてしまうとそこに甘んじてしまうが、
働いている人、そこに集まっている人、
なんだかみんなハッピーじゃない。

もしかしたらちょっと不便なところにこそ、
ささやかな幸せがあるのかも知れない。

「お金持ちになれるかも?」より、
今そこにあるささやかな幸せを
見つめ直した方が手っ取り早くて良さそうである。

関連記事

『時をかける少女』 永遠に続く人生の忘れ物

細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』が公開されるにあたり、彼の出世作である『時をかける少女

記事を読む

『ウェンズデー』  モノトーンの10代

気になっていたNetflixのドラマシリーズ『ウェンズデー』をやっと観た。ずっと気になってい

記事を読む

『ホームレス ニューヨークと寝た男』華やかさのまやかし

ドキュメンタリー映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』。映画公開時もとても気になってい

記事を読む

no image

『ファイト・クラブ』とミニマリスト

最近はやりのミニマリスト。自分の持ちものはできる限り最小限にして、部屋も殺風景。でも数少ない持ちもの

記事を読む

no image

『NHKニッポン戦後サブカルチャー史』90年代以降から日本文化は鎖国ガラパゴス化しはじめた!!

  NHKで放送していた 『ニッポン戦後サブカルチャー史』の書籍版。 テレビ

記事を読む

『お嬢さん』 無国籍お耽美映画は解放へ向かう

韓国産の作風は、韓流ドラマのような甘ったるいものと、血みどろで殺伐とした映画と極端に分かれて

記事を読む

no image

『ドリーム』あれもこれも反知性主義?

  近年、洋画の日本公開での邦題の劣悪なセンスが話題になっている。このアメリカ映画『

記事を読む

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』 カワイイガンダムの積年の呪い

アニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が面白い。初期の『機動戦士ガンダム』は、自分は超どスト

記事を読む

『聲の形』頭の悪いフリをして生きるということ

自分は萌えアニメが苦手。萌えアニメはソフトポルノだという偏見はなかなか拭えない。最近の日本の

記事を読む

『沈黙 -サイレンス-』 閉じている世界にて

「♪ひとつ山越しゃホンダラホダラダホ〜イホイ」とは、クレイジー・キャッツの『ホンダラ行進曲』

記事を読む

『ならず者(1964年)』 無国籍ギリギリ浪漫

話題のアニメ『ダンダダン』で、俳優の高倉健さんについて語ってい

『進撃の巨人 完結編』 10年引きずる無限ループの悪夢

自分が『進撃の巨人』のアニメを観始めたのは、2023年になって

『ダンダダン』 古いサブカルネタで新感覚の萌えアニメ?

『ダンダダン』というタイトルのマンガがあると聞いて、昭和生まれ

『夢の涯てまでも』 だらり近未来世界旅

ヴィム・ヴェンダース監督の90年代始めの作品『夢の涯てまでも』

『リトル・ダンサー』 何かになりたかった大人たち

2000年公開のイギリス映画『リトル・ダンサー』が、ここのとこ

→もっと見る

PAGE TOP ↑